2021-01-01から1年間の記事一覧

第1171回 『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 を読み終えて 

『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 河出書房新社発行 https://www.amazon.co.jp/%E6%B0%B4%E4%BF%A3-%E5%A4%A9%E5%9C%B0%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A-%E7%94%B0%E5%8F%A3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3/dp/4309029922 久しぶりに、深い…

第1170回 東京周辺の古代を考えるうえで(2) 平将門の乱の背景

八王子市 多賀神社 東京の国立市にある谷保天満宮が、なぜ菅原道眞の死を弔うための聖域として日本最古なのか、前から気になっていたのだけれど、少し線がつながってきた。そして、平将門の乱も、そこにつながっていた。 私が住んでいる高幡不動の近くに多摩…

第1169回 東京周辺の古代史を考えるうえで。(1) 日本の歴史を変えた騎馬技術と高句麗人。

高麗神社(埼玉県日高市) 埼玉県日高市の高麗神社と、神奈川県大磯の高来神社(高麗神社)は、東経139.32という南北ライン上に鎮座している。どちらも、かつて高麗人(高句麗人)が拠点としていたところだ。 埼玉の高麗神社は、若槻礼次郎、浜口雄幸、斎藤…

第1168回 目の焦点と、心の焦点。

富士ヶ嶺から望む富士山 富士山と、富士山周辺の聖域をピンホールカメラで撮ると、確かに、その霊気が針穴の中に忍び込んでくるような気がしないでもない。 最近、私のピンホール写真を見た写真家の水越武さんから写真の焦点について問いを投げかけられたが…

第1167回 東京オリンピックが浮かび上がらせたもの

女子バスケットボールの試合が始まってすぐ、日本の選手たちと、2mを超える選手のいるアメリカチームとの体格差が大人と子供のように違いすぎていたので、50対100くらいの点差で負けても仕方がないと思ったが、75対90と、そんなに差が開かなかった…

第1166回 見えるものと見えないものの間

足摺岬 竜宮神社 日本は、アメリカや中国などに比べると小さな島国ですが、北から南まで長い国で、その自然や文化の多様性は、無限とも言えるほどの豊かさがあります。 現在、私が取り組んでいる「 Sacred world 日本の古層」のプロジェクトで、ピンホール写…

第1165回 偶然と必然は糾える縄のごとし

事任八幡宮 (静岡県掛川市) 偶然と必然は、糾える縄のごとしであり、偶然だったことも、後から思えば必然だったのかと思わされることが多い。 昨年の冬、京都から東京に移動する時、出発の前日までは長野経由を考えていたが、大雪で道路の状況に不安があっ…

第1164回 現場を訪れることで立ち上がってくる新たな問い

三角形の北の頂点が、京丹後市網野町の網野神社、西の頂点が兵庫県宍粟市の伊和神社、東の頂点が、亀岡市の魔気神社である。それぞれのあいだは、76kmで正三角形である。魔気神社と、伊和神社は、珍しく本殿が北向きの神社であり、京丹後の網野神社は、浦島…

第1163回 古代から現在、そして未来への連続性

昨年の夏、自分の故郷の明石に長く滞在したこともあり、明石から播磨にかけての地域をじっくりと取材していた。 私は、18歳まで明石で育った。明石原人や明石象の発見地ということもあり、その現場で考古学のママゴトをしていたが、明石周辺が歴史的に重要…

第1162回 ピンホール写真と、祈り。

高性能のデジタルカメラは、撮影者が狙うような絵を作り出すために非常に有用なツールとなっている。 それは、撮影者の満足度を高めるために適しているかもしれないが、そのアウトプットが、自分と世界のあいだの作法として相応しいものかどうかは別問題だ。…

第1161回 有為転変の出来事そのものではなく、この世を司る理。

Sacred world 日本の古層 vo.2の最後の14ページは、ピンホール写真と、上嶋鬼貫の俳句のコラボレーションになっている。 上嶋鬼貫は、芭蕉と同じ時代の俳人で、東の芭蕉、西の鬼貫と高く評価されていたものの、芭蕉ほど知名度が高くない。しかし、リルケなど…

第1160回 風の旅人と、Sacred worldのつながり。

日本の古層を探りはじめると、とめどなく謎が続いていく。 何か一つのことがわかっても、それが新たな疑問のきっかけとなる。しかし、その謎解きに精力を傾けて集中していると、いろいろな関連事項が自分の中に蓄積していき、つながりができてくる。 残念な…

第1159回 ピンホールの眼と、日本の古層

Sacred world 日本の古層」に掲載されている写真は、全てピンホールカメラで映したもの。 一般的な写真撮影は、被写体を探して狙い撃つ性質があり、「撮影する」を英語にすると、shootとなる。カメラのシャッターは拳銃の引き金に等しい。 しかし、私たちは…

第1158回 熱海の土石流と、地球環境問題と、エネルギー問題の関係。

このたびの大雨によって起きた熱海伊豆山の土石流災害。 テレビニュースなどでは、数十年前に行われた盛土が原因であるかのような報道が続く。 もともと、熱海地方は、火山性の硬い黒土に覆われているが、高度経済成長時の人口増に対応するため、山間部の土…

第1157回 Sacred world 日本の古層Vol.2の完成

新型コロナウィルスによって、この1年以上ものあいだ、世界中の人々が、これまで経験したことのない時間の中を生きています。 天災や疫病は、人間の「理」を超えたものであり、古代から人間は、こうした人間の「理」を超えた試練に直面するたびに、世界観や…

第1156回 大坂なおみ選手の矜持と勇気について

大坂なおみ選手の会見拒否のことが話題になっている。 私は、風の旅人の中でも、色々な人のインタビュー記事を何度も掲載した。 インタビューで話を聞いても、相手の真意をきちんと捉えきれているとは限らないので、原稿にした後、必ず、相手に読んでもらい…

第1155回 オオヤマツミの嘆き

四国巡礼の際、友人でありピンホール写真の師匠でもある鈴鹿芳廉さんを訪ね、数日間、毎日温泉に入ったりしながら、しばらく一緒に時間を過ごした。 今回の四国巡礼の目的は、徳島と高知がメインで、愛媛は息抜きのつもりだったけれど、予想以上に濃厚な体験…

第1154回 古代、巫女の役割と、その罪について?

日本を代表する名水の里、瓜割の滝。(福井県若狭町) 平安京の中心軸となった朱雀通り(現在の千本通り)は、東経135.74度で、このラインにそって羅生門や大極殿、船岡山などが位置するが、このラインは、近畿のど真ん中を南北に貫いており、その南端が、本…

第1153回 これからの紙の本や雑誌作りについて。

昨日、出版業の先行きの厳しさという、かなり以前から言われてきたことについて、私なりの考えを書いたけれど、今日、「日本カメラ」を発行している日本カメラ社が会社清算するということを知った。 その理由として、コロナ禍による広告収入の減少云々と、あ…

第1152回 日本企業の因習と先行き

自社発行ではなく、他社発行の出版物でお手伝いしたのだけれど、出版業の先行きは厳しいなあと痛感。二重にも三重の意味でも。 一般的に出版社って、編集制作サイドと営業サイドが分かれていて、編集制作サイドの企画を営業サイドが確認して、発行すべきかど…

第1151回 メディアの役割

オリンピック組織委員会は、文春が報じている280頁に及ぶ内部資料(昨年4月6日付)の内容は、秘密資料であり、それを公開することは、東京2020組織委員会の業務を妨害するものであるとして、抗議している。 https://tokyo2020.org/ja/news/news-20210401-03-…

第1150回 ジェンダー平等って? 

帰宅した若い女性が「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」と笑う。 さらに、「化粧水買っちゃったの。…

第1149回 村上春樹氏の SNSに対する言葉について

村上春樹氏が、 SNSについて言及した言葉が、話題になっているようだ。 「大体において文章があまり上等じゃないですよね。いい文章を読んでいい音楽を聴くってことは、人生にとってものすごく大事なことなんです。だから、逆の言い方をすれば、まずい音楽、…

第1148回 民族が積み重ねてきた歴史文化風土

【かんでんコラボアート】 2月26日(金)〜3月3日(水) 平日10:00〜19:00 土日10:00〜17:00 最終日は15:00まで 堂島リバーフォーラム 1階ホール 大阪市福島区福島1-1-17 10年以上前だけれど、風の旅人の第39号で、日本のアール・ブリュットを欧米で紹…

第1147回 アメリカの横暴と、大統領との関係について思うこと。

バイデン氏が、第46代アメリカ合衆国大統領に就任した。78歳というのが過去最高齢ということは知っていたが、就任式で歩く姿を見て、お年寄りの雰囲気が漂いすぎていて、少し不安になった。年齢に関係なく元気で、頭も冴えて、適切な判断ができる人もいるだ…

第1146回 新年の誓い

去年の1月3日、年のはじめに、年内にこれだけはやり遂げることを決めようと考えていて、年末に鬼海弘雄さんを見舞いに広尾の赤十字病院に行った時のことを、ふと思い出した。 その時、ピンホールカメラで撮っている写真を鬼海さんに見せたところ、「本にしろ…

第1145回 この国の祈り

以前から気になっていることがあります。『古事記』や『日本書紀』の国譲りの物語の解釈についてです。 国譲りの物語は、苦労して国をまとめあげたオオクニヌシに対して、天孫といわれる神様たちが国譲りを迫るものです。 大陸から渡ってきた勢力(後のヤマ…