2022-01-01から1年間の記事一覧

第1258回 足摺岬と室戸岬の違いと、死生観の違い。

室戸岬は、断崖絶壁の足摺岬と異なって、海と地面がひと続きになっている。 四国の室戸岬と足摺岬は、太平洋に飛び出した先端なので、同じような雰囲気のところかと思ったら、まったく違っていた。 足摺岬は、断崖絶壁の上で、海面ははるか下にあったが、室…

第1257回 四国に秘められた日本の古層と、中央構造線の関係。

神山の上一宮大粟神社から2kmほど山深くに分け入ったところに巨石を御神体とする立岩神社があるが、この巨石は、青石でできている。 魏志倭人伝に、倭人たちの風俗習慣として、体中に朱丹を塗っていたと記されている。 朱丹というのは、辰砂(硫化水銀)の…

第1256回 浦島太郎の物語と、海人の人生訓

香川県荘内半島。浦島神社が鎮座する丸山島 今回の四国の旅で、ぜひとも訪れたかった場所が、香川県の荘内半島であり、ここには浦島太郎の伝承が残っている。 浦島太郎の伝承は、日本のいくつかの場所に存在し、この物語が実際にあった場所はどこなのかとい…

第1255回 じっと見入ることと、目に見えない波動のこと。

先週、愛媛の今治でピンホール写真について講演を行なった時、会場で法螺貝を吹いた。 私が法螺貝を始めたのは、写真家のエバレット・ブラウンが、私のそばで法螺貝を吹いた時に、私の心身が強く共鳴したことがきっかけだが、エバレットもまた、私と同じく日…

第1254回 中央構造線上に古代の重要な聖域が並ぶ理由!?

中央構造線上の中郷流宮岩。 日本列島を南北に分断する中央構造線は、東の端の鹿島神宮(茨城県)から、秩父を経て長野県の諏訪、愛知県の豊川稲荷、三重県の伊勢神宮、吉野から高野山、四国山地、九州の高千穂まで、古代からの重要な聖域がズラリと並んでい…

第1253回 鬼伝説が今日に伝えているもの!?

鬼岩にある「蓮華岩」。上から見ると蓮の花に見える。また、縦7mの亀裂が、鬼が一刀両断で切ったように見えることから「鬼の一刀岩」の別名がある。 恐ろしや 次月の奥の 鬼すすき 次月というのは、古代の東山道、現在は国道21号線の岐阜県土岐市にある「次…

第1252回 野町和嘉さんの写真展「シベリア収容所1992」

野町和嘉さんの写真展が、東京のOM SYSTEM GALLERYで開催されます。(10月13日〜10月24日)。 そして、展覧会中の10月15日(土)14:00~15:00に、野町さんと私でトークを行います。 fotopus.com いつも思いますが、野町さんの写真力は、ずば抜けています。他…

第1251回 EntranceでありExitな、われわれの生

門前仲町まで、小池博史さん演出の新作舞台「ふたつのE」を観てきた。 kikh.org 小池さんという人は、止まるところを知らない。本質は変わらないのだけれど、同じことを繰り返さない。今回の舞台も、見事なまでに斬新で、美しく、ユーモアに満ちていた。 身…

第1250回 自然放射線と、古代の聖域

付知峡(岐阜県中津川市付知町) 環境省のホームページで、日本地質学会による大地の自然放射線量の地図が紹介されている。 原発事故で放射線のことが大きな問題になったが、われわれの身の回りには、もともと宇宙線や大地などに由来する放射線があり、その…

第1249回 浦嶋太郎の物語の背景について

寝覚めの床(長野県木曽郡上松町)。浦嶋太郎が玉手箱を開けた場所という伝承がある。 現在の古代研究においては考古学が柱になっているが、考古学は、新しい発見のたびに、それまで正しいとされていた答えが変更になるので、これ一つでは、心もとない。地域…

第1248回 この時代に、なぜピンホール写真なのか?

愛媛県今治市で、鈴鹿芳廉さんの展覧会が行われています。(2022年10月23日まで) www.city.imabari.ehime.jp この展覧会期間に合わせて、今治市で、鈴鹿さんと私でトークを行ない、私が撮ったピンホール写真のスライドトークも行います。 場所は、今治市の…

第1247回 諏訪に秘められた古代の謎

(諏訪湖の朝日) 諏訪のことは、まだよくわからない。諏訪のことがわかれば、日本古代の謎が、もう少し解けるかもしれない。 謎の一つは、国譲りの神話のなかで、タケミカヅチに敗れたタケミナカタが諏訪の地を出ないことを条件に許されるのだが、そのこと…

第1246回 「いのちの居場所」について

「未来も過去も、無限に小さくしていくと現在となり、無限に大きくしていくと時の流れそのものになります。ズームインとズームアウトの振り子のような視点は、時間という概念に束縛されずに「わたしたちは現在をどう生きるかと考えるには大事なことだと思い…

第1245回 事物を記録することと、時間や場を記憶化することの違い

私は、ピンホール写真は、中判フィルムを使っている。 ピンホールカメラは、ファインダーもシャッターもないので、構図とか露光時間は、経験によって、だいたいこのくらいだろうと、あたりをつけて行なっている。 最初は、どの場所が写っているのか、どのく…

第1244回 多くの人は、耳を傾けないだろう話

京都市太秦 蛇塚古墳 おそらく、多くの人は、耳を傾けないだろう話。 しかし、多くの人が、自分には関係ないと思っていても、最後には自分と深く関係してくることがある。 おとといから、長男が彼女と京都観光に来ており、いわゆる名所は既に行ったことがあ…

第1243回 フォッサマグナと縄文王国

ヒスイ峡にそびえる明星山。(新潟県糸魚川市) 日本列島を南北に分断するのは中央構造線で、東の端に位置する茨城の鹿島神宮から、秩父、諏訪を通り、愛知の豊川稲荷、伊勢、高野山、四国の剣山、九州の高千穂など、日本を代表する聖域が、この中央構造線上…

第1242回 源頼朝を支えた北条時政の背後の力!?

奈呉の浦の雨晴海岸(富山県高岡市)。万葉の歌人、大伴家持は、この雨晴の風景をこよなく愛し多くの歌を詠んだ。浜から眺める岩礁と、富山湾越しに3,000m級の立山連峰がそびえる。(この日は天気が悪くて立山連峰が見えなかった)。 富山県の奈呉の海岸は、…

第1241回 記憶のリアリティと、人間の良心

7月1日に発行したSacred world VOL.3について、写真界で最も尊敬する一人である野町和嘉さんが、言及してくれた。 —------------------------------ 「風の旅人」佐伯剛さんの写真集、SACRED WORLD Vol.3が届いた。 https://www.kazetabi.jp/ 神話と史実の間…

第1240回 退行していく社会の行く末。

ちょうど「愛国」ということを考えていた時に、安倍元首相が銃撃されたというニュースが飛び込んできた。 アメリカやインドではなく、現代の平和ボケと言われるこの日本で、選挙運動中にこういう事件が起きるなどと、いったい誰が想像できただろう。 15年以…

第1239回 瀬戸内海の海人と、歴史の真相

明日、印刷納品される Sacred world 日本の古層 Vol.3は、海人に焦点をあてている。 www.kazetabi.jp 日本は島国であり、古代、船がなくては、人も物資も動かせなかった。大陸から新しい知識や文化を日本に伝えたり、大陸の勢力と戦う時に、海人の力が欠かせ…

第1238回 日本にしか存在しない八角形の古墳の謎。

天武天皇の母で第37代斉明天皇の牽牛子塚古墳 東京で私が拠点にしている高幡不動と聖蹟桜ヶ丘のあいだに、珍しい八角形の古墳がある。 これは、世界中で日本だけ、しかも、7世紀後半から8世紀前半の律令制の開始時期という極めて限られた時に、畿内に9基…

第1237回 聖徳太子の時代と、龍の祟り。

このたび制作したSacred world 日本の古層Vol.3で、古代における幾つかの謎解きを行なっている。 https://www.kazetabi.jp/ 古代エジプト文明や古代インカ文明のように、古代日本にも多くの謎がある。 その一つに、現在でも全国に16万基も残る古墳があり、そ…

第1236回 将来の歴史の作用に耐える文化、社会、政治、国。

白川静さんが95歳で亡くなって早くも16年になるが、その実感がまったく湧かない。 白川さんは、数千年の時代を超えたところで生きておられた。その精神は、風の旅人を作り続けていた時も、 Sacred worldを作り続ける現在も、私にとって常に立ち返るべき重要…

第1235回 聖徳太子の時代との不思議なつながり。

昨年の春から四国、山陰、伊豆、畿内の大和川、石川、京都の桂川周辺などを個別に探索し続けていて、その都度、取材メモとしてブログなどで記事を書いてきた。 今回、Sacred world 日本の古層Vol.3 https://www.kazetabi.jp/ を制作するにあたり、それらの記…

第1234回 和を以て貴しとすること。

聖徳太子が制定したとされる「十七条憲法」の第一条の冒頭。 「和を以て貴しとし、忤(サカフル)ことは無いように。人には皆、党(タムラ)があり、悟っているものは少ない。よって君父(キミカゾ)に従わない。また、隣の里とも違うだろう。しかし、上と和…

第1233回 古代から人間は同じことを繰り返している。

ロシアとウクライナの戦争が、このまま続けば世界はどうなってしまうのか? 単純化してしまうことに慎重でなければならないと思うけれど、こうした戦争は、けっきょくのところ男性原理が突出した形で現れた結果ではないだろうか。 強い方が偉くて立派だと思…

第1232回 折鶴を非難する人の偏狭 

京都の家でテレビは見られないのだけれど、ネットニュースで流れてくる情報では、ウクライナの戦争に心を痛めている人が折鶴をウクライナ大使館に送ろうという活動に対して、現地の人が望んでいるものではないとか、自己満足だとか、だったらお金を送った方…

第1231回 一元化の思考を知の巨人と持ち上げる知の衰退

web.kawade.co.jp ユヴァル・ノア・ハラリ氏のことを、現代における「知の巨人」と持ち上げる論調が多いのだけれど、ベストセラーになっている彼の「サピエンス全史」にしても、とくに新しい視点はなくて、他の誰かが書いているようなことを(膨大なウィキペ…

第1230回 月読神と、古代海人との関係

京都の松尾大社の近く、桂川と西芳寺川が合流するところが月読神社の旧鎮座で、比叡山と愛宕山を同時に望む絶景の地だ。ここは今も吾田神という地名で、アタは、古代の南九州の海人のこと。 京都の月読神は、5世紀の末に壱岐島から勧請されて、その時に亀卜…

第1229回 思考停止の正義よりも大事な自らの眼差し

河瀬直美氏の東大入学式での祝辞に噛み付いている人々の意見って、テレビの芸能人コメンテーターの意見とさほど大きな違いがあるわけでなく、東大生にとって、とくに頭を使って考えさせられるような内容ではない。 河瀨直美監督の東大入学式での祝辞、国際政…