歴史
ここ数日で、「日置」と「額田部」を軸にした長大な文章を書いた。 なぜ、今、あえてこんなことを書いているのかというと、私たちの足下の歴史の捉え方が大きく歪められてしまっていれば、現在を生きる私たちの世界観や人生観も歪んでしまって当然だと思うか…
古代日本は、100年単位で、大きな変革を遂げている。 西暦400年頃、後の東漢氏や秦氏につながる渡来人が大挙してやってきて、この頃から古墳が超巨大になり、副葬品として、武器や馬具などが多く含まれるようになった。 西暦500年は、今来という新しい渡来人…
日本には無数の聖域があり、それらの聖域のあいだを線で結び、なんでもかんでもレイラインだと主張するのは、あまり意味がないことだと私も思っている。 しかし、日本の各地を旅すればよくわかることだが、古代において、冬至や夏至、春分や秋分の太陽の位置…
日本は、海に囲まれた島国。大陸から遠すぎることもなく近すぎることもない微妙な距離感が、日本文化の固有性を育んできた。 日本人にとっては、海そのものが境界線だったから、高い城壁を築いて異民族の侵入を防ぐという発想にはならなかった。 日本人にと…
現代社会は、「神話なんか生きていくうえで役に立たない」と思っている人が大半だが、白川静さんが、岩波新書の『漢字』の中で、人間と神話の関係において実に深い内容のことを、簡潔に書いている。 「神話の時代には、神話が現実の根拠であり、現実の秩序を…
日本は、海に囲まれた島国であり、大陸から近くもなく遠くもない絶妙な距離感が、日本という国の個性を作り上げてきました。 また、海に囲まれていながら国土の70%が山岳地帯であり、それらの山々を源泉とする河川が、日本を網の目状につないでおり、この…
ユーチューブで、「陰謀論」や「捏造」をテーマにすると、閲覧者が増えるらしく、そういう情報に染まってしまうと頑迷にそれを信じ込んでしまい、他の人の意見に耳を傾けなくなるという話を聞いた。 いつの時代でも、「人に流されやすい人」はいる。 ネット…
八雲山の須佐男の磐座=須賀神社の奥宮(島根県雲南市) 神話の中のスサノオは、人間に恩恵を与える神であると同時に、野蛮な振る舞いで周りに迷惑をかける神として描かれているが、これは、たとえば技術の発展が善と悪、禍と福という両極な状況を作り出す二…
酷暑の時は、何もせずにじっとしているのも選択肢だけれど、暑い中、ジョギングするくらいの体力と気力があれば、敢えてそうすることで汗びっしょりかくことで新陳代謝が促進されて、かえって元気になるということがある。 そう思い、一年で一番暑い時期の京…
神話上、ニニギは、天孫降臨つまり外部からやってきた存在だが、神武天皇は、そうではない。 神武天皇の母親は、豊玉彦の娘の玉依姫であり、祖母は、豊玉彦の娘の豊玉姫、曾祖母は、コノハナサクヤヒメと、女系を通じて海人が三代に渡って続いているし、神武…
神武天皇の神話を、第26代継体天皇と重ねて考えるためには、(1)と(2)で述べたことの続きになるが、神武天皇の東征に登場する神々について、それが継体天皇とどう関わっていくのか、さらに検証する必要がある。 (2)では、亀の甲羅に乗って海路の案内…
神武天皇とは何か(2) 神武天皇の神話を、第26代継体天皇と重ねて考えるためには、(1)で述べたこと以外に、神武天皇の東征に登場する神々が、継体天皇の時代において何に該当するのかを検討する必要がある。 まず第一に、神武天皇の東征において、最初…
神武天皇が、いつの時代のことなのかについて、これまで色々と複雑な読み解きがなされてきた。 しかし、そもそも日本に文字が流通するようになったのは西暦500年頃からで、それまでは口承で物事が伝えられていたわけであり、弥生時代の始まりとされる紀元前5…
なぜ歴史を探究し、歴史を学ぶのか? 私は、20歳の時に海外放浪に出て、地中海世界やオリエント世界を旅している時から、「人間への信頼を取り戻すため」と思っていた。そして、それは同時に、「現代世界の問題の本質はどこにあるのか?」を考えることだった…
約1500万年前、ユーラシア大陸の端っこの部分が南北に引き裂かれ、大陸とのあいだに内海ができて日本列島の原初の形となった。 引き裂かれた南の大地の端っこが岐阜県で、この東側に、太平洋から押しつけられた新たな大地が次々と火山活動を活発化させ、八ヶ…
夏至を境に、今日から1日ずつ日が短くなっていく。 私は、ピンホールカメラで写真を撮っているので、日没時間はとても気になる。 日が短くなると、取材中もゆっくりと昼食をとっていられない。だから、夏至になると、少し切ないものを感じ、冬至になると、翌…
人間の精神活動は、少しずつ時間をかけて右肩上がりで成長変化を遂げてきたわけではない。 人間は、文字を使っていない時と、文字を使うようになってからでは、精神活動に大きな変化が起きる。そして、文字を使い始めた人間の精神活動には、地域差に関係なく…
山梨県北杜市小淵沢町に大滝神社があり、この場所は八ヶ岳南麓高原湧水群の一つ。「日本名水百選」に選ばれているが、日量22000立方メートルと豊富な水量を誇り、一年を通して水温は12度。 東京の武蔵野台地でもそうだが、井の頭公園や石神井公園、等々力渓…
「見えないものを見るためにカミオカンデを作った。」 これは、自らが設計を指導・監督したカミオカンデによって史上初めて太陽系外で発生したニュートリノの観測に成功し、ノーベル物理学賞を受賞した小柴 昌俊さんの言葉。 スーパーカミオカンデは、カミオ…
出雲大社の隣に鎮座する命主社(いのちのぬしのやしろ)。出雲大社が築かれる前の聖域だったと考えられる。古代の磐座だと思われる巨岩の前に建てられているが、この巨岩を石材として切り出した時、下から銅戈(どうか)と硬玉製勾玉が発見された。ともに古…
八岐大蛇について(1) 古事記や日本書紀に描かれている「スサノオの八岐大蛇退治」の物語は、誰でも知っているが、いったい何を意味するのか、江戸時代の国学者も含めて様々な解釈を試みているが、これが正解だと明確に言いきれる解答は見当たらない。 こ…
八雲山のスサノオの磐座。八雲山の西麓に鎮座する須賀神社の奥宮。 島根の出雲地方は、大きく分けて三つの領域に分かれる。 一つは、出雲の西側、斐伊川の流域で、もう一つの地域が、鳥取との県境の大山の周辺、日野川の流域。 これらの地域のことは、(1)…
因幡の白兎伝承のある白兎海岸の淤岐ノ島。 神話の中で描かれる「出雲」を、縄文に遡る日本の先住系の人々の文化と捉え、天孫降臨という新参者に「国譲り」という形で実権が奪われたと考えている人がいるが、それは違っている。 長野の諏訪大社は、今日まで…
荒神谷遺跡 「出雲」は、3つのエリアに分かれる。中海の東の米子市から大山周辺と、中海と穴道湖のあいだの松江周辺、そして穴道湖の西で、出雲大社が鎮座する地域。 出雲大社は、近畿で律令体制を築きつつある人たちによって、何かしらのシンボル的な意味…
出雲大社の隣に、摂社の命主社(いのちのぬしのやしろ)がある。巨岩の前に建てられており、古代の磐座が聖域だったと考えられる。社の前には、推定樹齢1000年といわれるムク(椋)の巨木がある。1665年、命主社の裏の大石を石材として切り出したところ、下…
牽牛子塚古墳(斉明天皇陵) 歴史好きの人のなかで、藤原氏の陰謀ということが、よく言われる。古事記や日本書紀なども、藤原不比等の陰謀で藤原氏に都合が良く書き換えられ、都合の悪いことは隠されたと。 梅原猛氏などは、古事記編纂において口承を伝える…
京都は日本の歴史文化の宝庫とされていますが、観光地の大半は豊臣秀吉以降の時代に作られたものが多く、多くの人が古都の街並みだと勘違いしている祇園は明治維新以降のものです。 京都のなかで平安京遷都の1200年前より古い聖域は、京都の西側の桂川沿いに…
岐阜県瑞浪市の鬼岩。ここは木曽川支流の可児川の源流に近く、巨岩群の中を、清冽な水が勢いよく流れている。 この地は日本有数のラジウム温泉の場所で、すぐ近くに、日本最大のウラン鉱脈がある。 鬼岩から5kmのところには、高レベル放射性廃棄物の処分の…
岐阜県中津川の苗木城あたりは、日本三大ペグマタイトの地、つまり宝石の産地。 ペグマタイトは、主に花崗岩地帯に生じるが、中津川は、花崗岩の奇岩がゴロゴロしている。 巨石とか大樹は、古くから信仰の対象だが、神籬(ひもろぎ)など神を迎えるための依…
CHAT GPTを子供に使わせるべきかどうか? とか、大学生が、これを使って論文を書くようになってしまうのではないか、とか、どうでもいいような議論がなされている。 仮に大学生が、CHAT GPTで論文を書いたとしても、問題になってくるのは、それを評価する側…