社会

第1537回 未知との向き合い方

今年最後のワークショップセミナーが終わった。これまで24回、東京と京都で交互に規則正しく行なってきた。 この規則性が、自分にとって、とても良いリズムになった。 この期に及んで、あれこれやりたいことは、あまりない。 あちこち行きたいところは、この…

第1536回 日本に秘められた可能性

"> この8年間、日本の古層を探究してきたけれど、今、なぜ東京を撮るのか。 私は、風の旅人を作っていた時も、日本の古層をめぐる旅をしている時も、自分の関心は同じで、それは、世界、人間、そして日本人というものを、もっと深く知りたいということ。 だ…

第1534回 掻き消えてしまいそうな自我のゆくえ

小野啓という写真家がいる。 ホームページで全国の高校生に呼びかけて、写真を撮ってもらいたいという声に応えて、彼らの土地まで足を運んで対話を行って撮影している。 今から17年も前だが、撮影における、そうした丁寧なプロセスがとてもよく写真に反映さ…

第1519回 羽衣伝説の謎について

竹野川河口にそびえる立岩 羽衣伝説についてのあれこれ。 昨日、丹後半島を休暇気分で訪れて、その最後にジオサイトで出会った翁が語ったこと。「古代最大の製鉄遺跡である遠所遺跡で用いられた砂鉄が、丹後のものではない」という話が心に引っかかって、家…

第1518回 京都の三本鳥居の謎について

宇多天皇が創建した仁和寺で平寿夫さんの「熊野」に関する写真展を見た後、帰り道にある太秦の蚕の社へ。 宇多天皇は、日本で最初の法皇だが、熊野は、出家した宇多天皇が、たびたび修行のために訪問した場所である。 宇多天皇が、なぜ出家したのか? 様々な…

第1517回 トランプ氏に象徴されるアメリカの今

アメリカ大統領にトランプ氏が当確という結果に、トランプ嫌いの人は失望しているだろうが、私は、個人的に、バイデン氏やハリス氏より、この方が良いのではないかと思っている。 私だってトランプ氏が好きなわけではないが、トランプ氏は、表の顔も裏の顔も…

第1516回 写真における、独自の視点と、その人ならではの姿勢。

">(新刊の「かんながらの道」より "> 東京の写真を撮っている人は、とても多い。 そして、それらの写真を持ち上げる際に、「独自の視点で東京と切り取った!」という言葉が使われることが、とても多い。 気鋭の写真家とか、重鎮の写真家とか、なんでもいい…

第1515回 「狂」という特別な霊力。

10,000人の感想よりも、その人の一言が、自分の方向性を決めることがある。 私が、ずっと長い間、自分がアウトプットするものが果たしてうまくいっているかどうか、確認するための指針としている方から、このたびの「かんながらの道」に対するお言葉をいただ…

第1514回 思念の宙返りと、新しい世界の円環

"> 恋愛において、どんなに異性にもてる人でも、自分の意中の人に振り向いてもらえないと、心の中は辛く悲しいはずで、それは、物づくりでも同じ。 100人の感想よりも、あの人の心に届くかどうかが気になるという存在がいる。 なので、新しく本ができれば、…

第1510回 空海の思想の奥義と、かんながらの道

">このたび発行する「かんながらの道」〜日本人の心の成り立ち〜の制作において、空海の思想を、頭の片隅に置いていました。 今日の思想世界の混迷のなかで、日本から生まれた空海の叡智を、再発見する必要があると私は思っているからです。 空海の思想の核…

第1509回 すべてをこの地上の生のうちに見ること。

「 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜」の納品日が、10月26日と決まりました。 ワークショップ の日と重なってしまうので、受け取りのタイミングが問題。 それはともかく、オンラインでの販売サイトを立ち上げました。 詳しくは、次のアドレスからホー…

第1508回 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜

"> 今年中に出版するつもりで取り組んできた日本の古層Vol.5「かんながらの道」の入稿が終わった。 完成は、来週末(10月25日、26日)に行うワークショップに、ぎりぎり間に合うタイミングか。 今回は、日本人の心の成り立ちに焦点をあてて、仮名文字が日本…

第1507回 不易流行と、現代都市文明。

風の旅人 第43号より 写真/石元泰博 「シカゴ シカゴ」や「桂離宮」などの写真で知られ、戦後日本写真界でもっとも重要な写真家である石元泰博さんは、長いあいだ五反田に住んでおられ、90歳に近い年齢の頃、カメラを首からぶらさげて山手線に乗って、渋谷…

第1506回 約束の地をめぐる煩悩の醜い争い。

これまで何度も惨たらしい争いが繰り広げられてきた中近東で、もっとも深刻かもしれない事態がはじまって1年が経つ。 ポケベル爆弾といった最新テクノロジーを使いながら、3000年前のユダ王国を引き合いに出して自らを正当化するという傲慢。 その傲慢さは、…

第1505回 おのずから、しからしむ道

伏見稲荷大社は、外国人旅行客の人気ナンバーワンの場所だそうで、連日、ものすごい人だかり。 境内には、「伏見稲荷は祈りの場です」という言葉が掲示されているが、果たして、どれだけの人が、祈るために、この場所に来ているのか? しかし、聖所というの…

第1503回 細江英公さんが、超新星爆発のように生涯を終えられた。

写真/細江英公 風の旅人39号より 「薔薇刑」、「鎌鼬」、「胡蝶の夢」、「抱擁」、「男と女」、自分の書棚にこれらの写真集が置かれている幸運な人は、今、改めて見つめ直しているかもしれない。 戦後日本の写真表現界が生んだ大きな大きな星、細江英公さん…

第1502回 京都がなぜ千年の都になったのか。

">前回の記事で、平安京が、四神相応ではなく、京田辺の甘南備山を軸にして、その真北に朱雀通りや大極殿が来るように設計されたということを書いた。 このことで明らかにしなければいけないのは、なぜ京田辺の甘南備山が軸になったかということだ。 桓武天…

第1501回 京都の歴史と、京都の現実。

猛暑の東京を歩き回ってピンホール写真を撮り続けていた余韻を引きずったまま、京都に移動してすぐに歩き回った祇園界隈は、2014年から2019年くらい前までの5年間、住んでいたところだった。 その当時、airbnbをやりながら、毎日のように海外からやってくる…

第1500回 かんながらの道

"> 今年発行するつもりの「日本の古層Vol.5 かんながら」は、7月くらいには、ほぼ完成していたのだけれど、今年の猛暑で本なんか読む人はいないんではないかと思い、少し寝かせて、もう少し涼しくなってから印刷すればいいと思っていた。 しかし、8月に入っ…

第1499回 荘子の説く道と、東京での暮らし。

私が東京に暮らし始めたのは、海外放浪から戻ってきた22歳の時で、成田空港に到着してすぐ戸越銀座に向かい、駅のそばの不動産屋で、家賃1万6000円の北向きの4畳半、風呂無し、トイレ共同のアパートを見つけて、その日から入居した。(戸越銀座が都心に近い…

第1497回 東京の中に潜む古代性

今思えば、東京の中に潜む古代性や懐かしさに対して、小説作品にまで昇華させていたのは日野啓三さんだった。 1970年代から80年代にかけて、日野さんは半蔵門近くに住み、深夜、皇居周辺を歩き回りながらコンクリートの冷え冷えとした感覚の向こうに、何かし…

第1496回 未来につながる記憶に潜り込む写真

先日、中藤毅彦の新作写真集「「DOWN ON THE STREET」について文章を書いたが、彼は、2018年に「White Noise」という自らの思い入れの強さが特に反映された写真集を作っている。 この本は、彼が尊敬する写真家の川田 喜久治さんの歴史的傑作である『地図』と…

第1495回 古事記の冒頭の神々が意味するのは、宇宙の根本原理(続き)。

クラゲの話から広がって、さらなる続きを。 地域ごとに異なる神々を信仰していた古代日本において、一つの国としてまとまる時代的必然性が生じた時、普遍的宗教の仏教の理念が取り入れられた。 古事記の冒頭、アメツチはじめの時に登場するアメノミナカヌシ…

第1494回 古事記の冒頭の神々が意味するのは、宇宙の根本原理。

八景島シーパラダイスに行った。意外と強く心を惹かれたのは、クラゲたち。 海でクラゲを見つけると、気持ち悪くて逃げてしまい、じっくりと観察することはないけれど、水族館では、色々な種類のクラゲをじっくりと見ることができる。この原始の生物は、5億…

第1493回 世界共通の「現代」を前向きに生き抜く力

私は40歳になるまで写真界とは無関係だったのに、2003年、突然、風の旅人というグラフィック雑誌の制作を始め、2015年10月まで50冊を制作した。 創刊当時の執筆者は、白川静さん、川田順造さん、河合雅雄さん、日高敏隆さん、養老孟司、松井孝典さんといった…

第1492回 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。

「彼岸に目を向けることなく、すべてを、神に関することも、死も、すべてこの地上のこととして考え、すべてをこの地上の生のうちに見ること。 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。 すべてのものを価値に上下のないものとして…

第1491回 日本という国の宿命

ペルセウス座流星群が極大を迎えた8月12日深夜、北海道では低緯度オーロラが観測され、流星群とオーロラの共演が見られたと話題になった。 確かに美しいのだが、なんだか不吉な気配もある。 測量工学の世界的権威としても知られる村井俊治(東京大学名誉教授…

第1490回 狭い舞台空間を広大な時空に変成する小池博史のブリコラージュ力。

photo by 許方于 感想を書いているうちに長くなる。複合的で多面的で多層的に大事なことなので手短に書くことは不可能。だから仕方がない。 一昨日、小池博史の脚本・構成・演出による舞台、「Breath Triple」を体験するために、猛暑のなか、木場まで行った…

第1489回 日本人の精神的ルーツと、丹生都比売と空海の聖域

丹生都比売神社 高野山の麓の丹生都比売神社と、丹生都比売が降臨した場所とも伝えられる紀ノ川ほとりの丹生酒殿神社へ。 丹生都比売神社は、丹生酒殿神社の真南の山中に位置しているので、丹生酒殿神社は里宮で、丹生都比売神社が山宮という説もある。 丹生…

第1487回 人類史上稀にみる世界的規模の画一化、標準化、規格化の時代を生き抜く力(2)。

昨日書いたことに通じる問題だけれど、現在は、映像の加工ソフトの技術進化が著しくて、富士山の写真に無数の星々が煌く天体写真を合成したり、日頃は敵対する動物同士を仲良くさせたり、フェイク画像を簡単に作り出すことができる。 いわゆる社会問題や政治…