社会

第1328回 出雲の国譲りとは何なのか?

出雲大社の隣に、摂社の命主社(いのちのぬしのやしろ)がある。巨岩の前に建てられており、古代の磐座が聖域だったと考えられる。社の前には、推定樹齢1000年といわれるムク(椋)の巨木がある。1665年、命主社の裏の大石を石材として切り出したところ、下…

第1324回 石垣づくりの奥義と、未来の可能性。

岐阜県中津川の苗木城あたりは、日本三大ペグマタイトの地、つまり宝石の産地。 ペグマタイトは、主に花崗岩地帯に生じるが、中津川は、花崗岩の奇岩がゴロゴロしている。 巨石とか大樹は、古くから信仰の対象だが、神籬(ひもろぎ)など神を迎えるための依…

第1322回  CHAT GPTの先の未来

CHAT GPTを子供に使わせるべきかどうか? とか、大学生が、これを使って論文を書くようになってしまうのではないか、とか、どうでもいいような議論がなされている。 仮に大学生が、CHAT GPTで論文を書いたとしても、問題になってくるのは、それを評価する側…

第1320回 社会的な馴れ合いに埋没しない深瀬昌久の私写真

東京都写真美術館で深瀬昌久展が開かれている。 深瀬昌久という写真家は、世間ではあまり知られていないが、「写真」という表現行為と、「視ること」の関係を深く考えるうえで、欠かせない写真家だと思う。 人は、視るという行為について、とくに深く考えて…

第1319回 今年の土門拳賞と、写真表現の行く末について

昨日は、船尾修さんの土門拳賞の授賞式で、協賛企業や来賓の人のスピーチの後に、他の人があまり認識していない彼のこれまでの活動の軌跡についてスピーチをするのが私の役割だと船尾さんから言われていて、自分もそのつもりだった。 しかし、選考委員の大石…

第1318回 写真表現の行く末

朝早くから、船尾修さんの「満州国の近代建築遺産」と、新田樹さんの「Sakhalin」の写真集を見ていて、心洗われるような気持ちになった。 船尾さんは土門拳賞、新田さんは木村伊兵衛賞と、長い歴史のある写真界の賞を今年度受賞したわけだが、この二つの賞の…

第1317回 苦海と浄土がつながるコード

今年に入ってから、現代と古代のコスモロジーというワークショップセミナーを行っており、次の5回目を4月22日(土)と23日(日)で計画している。 https://www.kazetabi.jp/%E9%A2%A8%E5%A4%A9%E5%A1%BE-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%…

第1316回 身体性が伴った写真について

前回、今年度の写真界において、新田樹さんが木村伊兵衛賞と林忠彦賞のダブル受賞をしたことを書いたが、土門拳賞は、船尾修さんが受賞した。 本人にも伝えたけれど、船尾さんの受賞は予想通りだった。そもそも私は、数年前の「フィリピン残留日本人」が土門…

第1315回 世間と渡り合う術を持つこと

このたび、写真家の新田樹さんが、「Sakhalin」という作品で、林忠彦賞と木村伊兵衛賞のダブル受賞をされた。 写真界の賞で、同じ年のダブル受賞は珍しい。(これまでは、できるだけ違う人を選ぶ、みたいなおかしな風習があった)。 林忠彦賞は予測できたが…

第1311回 頭を使って考えるということは?

AI(人工知能)を使った文章生成ソフトのChat Gtpは、思考しているように見えて、実は、何も考えていないそうだ。 このソフトのカラクリは、一つの言葉の次にどの言葉がくるべきなのか、確率的に高いものを選び取る機能にあるらしい。 この半年間、Chat Gtp…

第1310回 大江健三郎氏に対する複雑で捻れた心情

大江健三郎氏が亡くなった。 ノーベル文学賞作家の死なので、各界から、品のいい賞賛や哀悼のメッセージが色々と発せられるだろうが、私の人生のなかで、この人の存在は捻れていて、とても複雑である。 私は、20歳までは彼の熱心な読者だった。『飼育』と…

第1308回 自由からの逃走

エーリッヒフロムは、ナチズムに傾倒していったドイツのことを深く考察し、「自由からの逃走」という本を書き上げた。 ドイツ国民は何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのか? 一人ひとりは、真面目で、誠実で、決して…

第1306回 ”ことば”と写真家の関係

「写真集制作のためのポートフォリオレビュー」というのを始めたのだけれど、写真表現を行っている人で、「文学には興味がない」とか、「自分は言葉が苦手だから、言葉にならないことを写真で表現する」などと軽々しく言う人がいるけれど、果たしてそれでい…

第1305回 いのちを繋ぐ力とは

若い友人に返答するための文章を書いていたら、「コスモロジー」というテーマで、本作りやワークショップを行っている自分の潜在意識が浮かび上がってきた。 「Sacred world」の本作りにおいて、私は、古代史研究をやっているつもりはないし、写真においても…

第1304回 われらの時代の終焉(3)

現在、私が行っているワークショップセミナー「現代と古代のコスモロジー」でも、重要な鍵を握るテーマなのだが、私は、ブリコラージュ型の思考や仕事と、エンジニアリング型の思考や仕事について意識的に話をしている。去年の11月に行ったスタンフォードの…

第1303回 われらの時代の終焉(2)

私は、ここ数年、20年前の印刷技術革命よりさらに進化した新しい印刷方法によって本を作り続けていて、その方法も公開し、友人の写真家にも伝えているのだけれど、彼らの腰は重い。 写真業界に比べて新しいことに柔軟なのがアニメの人たちで、彼らはこの新し…

第1302回 われらの時代の終焉(1)

京都の私の家にはテレビアンテナがないのでテレビが見られないのだけれど、昨日、近くの温泉に行って、サウナに備え付けのテレビニュースを見ていたら、次の日銀総裁、植田和男氏のことが伝えられていて、植田氏の叔父さんがインタビューに出て、「ラジオ英…

第1301回 500年を区切りに起きる人類のコスモロジーの転換。

そもそも私は、古代のことについて、どの時代に何が起きたとか、誰がどうした、これこそが真実であるという類の、過ぎたことに対する一つの正しい答だけを求める原理的思考で、古代のフィールドワークを行なっているのではない。 蘇我馬子や藤原不比等の陰謀…

第1297回 古代海人のコスモロジー

前回の記事で、福島第二原発がある場所の天神原遺跡(2000年前における東日本最大の集団墓)が、遠隔地交易の拠点だったのではないかということを書いた。 そして、この天神原遺跡の位置が、北海道の余市からまっすぐ南に来たところにあり、この東経141度の…

第1292回 大学入試の変化がもたらす未来

2016年度から東京大学が『推薦入学』を導入し、2021年度の全国公私立大学の入学者のうち「推薦入学者」が50%を超えた。 resemom.jp 現在の日本の行き詰まりは、教育から変わらなければどうにもならないと思っていたが、近年、その教育に大きな変化が生まれる…

第1291回 現代を含めて全ての時代に、その時代特有のコスモロジーがある。

堂山3号墳(静岡県磐田市) 静岡県磐田市に堂山古墳群がある。 ここには5世紀に造られた県内最大規模を誇る全長約110mの前方後円墳と、その周辺に、6基の円墳や方墳が築かれていた。 磐田市の天竜川東岸には他にも御厨堂山古墳群があり、太平洋から天竜川…

第1290回 世界の三大リスクと、AI技術

国際情勢のリスク分析を手がける米コンサルタント会社が、今年の世界10大リスクとして、1位にロシア・ウクライナ戦争、2位に中国の習近平国家主席の権力独占をあげているのは、まあ多くの人が共有しそうなことだが、興味深いことに第3位として、人工知…

第1289回 古代のコスモロジーと、現代のコスモロジー

岩上神社(愛知県蒲郡市) 1月21(土)、1月22(日)、13:00- 東京都日野市の私のオフィス(京王線高幡不動駅から徒歩12分)で、「古代のコスモロジー」と題したワークショップセミナーを行います。 この6年間、私は日本国内の古くから人間が大切にしてきた場…

第1288回 時代ごとに変わる人間のコスモロジーと、歴史との向き合い方

今を生きる人にとって、「歴史」が、自分に関係ないもの、もしくは単なる知的好奇心の対象(趣味)、および大河ドラマ鑑賞などの娯楽になってしまったのは、歴史と向き合う時に、人間のコスモロジーのことが、あまり考えられていないからではないかと思う。 …

第1287回 古墳の形と、国譲り神話と、鬼退治の関係。

第1285回のブログで、前方後方墳と前方後円墳の違いを、弥生時代の「方形周溝墓」と「円形周溝墓」の違いの延長と捉えて説明した。一人の王が軍事や祭祀など全権を担う統治システムと、複数人物による分権統治システムの違いではないかという仮説を立てて。 …

第1286回 日本の近代化を促進させたもの

10年以上前、風の旅人編集部で働いていた中山慶が、現在、地域社会活性化と異文化交流を軸にした仕事を、京都の京北地方を拠点に行っている。 日本各地で様々な地域社会活性化の取り組みが行われているが、中山慶が行っているプロジェクトで私が興味深く感じ…

第1284回 日本語の柔軟性と、議論の深め方について

昨日、ワールドカップを見ようと思ってamebaテレビをつけたら、「議論」についての議論を行う討論番組があった。 この番組の中の議論は、それぞれが知っていることをアウトプットする状況説明と状況分析でしかないのだが、一般的に議論が合意形成を目指すも…

第1281回 伊勢神宮という聖なる舞台装置

伊勢神宮 宇治橋 伊勢神宮 五十鈴川 先ほどのタイムラインの続きだが、伊勢神宮を訪れると、”つくられた聖域”という気がしてならない。 伊勢神宮は、おそらく、律令制の始まりに、聖なる舞台装置として作られたのではないかと思うのだ。 もちろん、そうだと…

第1279回 たった一人の大学の名誉教授の問題ではなくて

「たった1人の「子供の声がうるさい」という意見で廃止になった長野市内の公園。市に対して意見を言っていたのは大学の名誉教授だったことが週刊ポストの取材で明らかになった。その1人の声で、子供の遊び場である公園を閉鎖した市の対応には疑問の声があが…

第1278回 In all chaos there is a cosmos,in all disorder a secret order.

4年前に私が撮ったピンホール写真。 (最近、井津建郎さんが撮った写真) 井津建郎さんにも許可をいただいて、井津さんが撮った写真と、私が撮ったピンホール写真を並べてアップしました。 ここにアップしている2枚の写真は、奈良の柳生の天石立神社ですが、…