自然

第1579回 ヤマトタケル神話と、八角墳の背後の真相。

ヤマトタケルの蝦夷鎮圧の拠点、朝日山に鎮座する吉田神社(茨城県水戸市) 今年の5月に東北の古代巡礼の旅をした時、最後の訪問地としたのは茨城県水戸市の吉田神社と吉田古墳でした。 なぜこの場所なのかというと、ここが、神話のなかでヤマトタケルの蝦夷…

第1578回 ほんとうの幸い

恐山 2016年10月から始めた「日本の古層」のプロジェクト。 2020年から毎年一冊ずつ本という形にすると決め、2024年10月、5冊目となる「かんながらの道」を作り、今年の2月には、これまでの総まとめとして「かんながらの道」の写真展を開催しました。 その後…

第1576回 微分的ではなく積分的な視点での歴史認識

"> "> 東京と京都で交互に行なってきた31回目のワークショップセミナーを終えました。毎回土と日の二日間行うので、延べ日数では62日。フィールドワークを雨の中でやったことがない。 さすがに今回は梅雨本番の時期に設定しているから雨は覚悟していたし、…

第1569回 超然たるサルガドの眼差し

SNSを開くと、実に多くの人が、セバスチャン・サルガドの死について言及している。 写真というジャンルを超えて、いろいろな分野の人が強く関心を持つ写真家というのは、今ではほとんど存在しなくなった。 また、何の説明もなく、ただ写真だけを見て、強烈な…

第1566回 にほんの”はし”への旅(3)

津軽半島の北端の竜飛岬 今回の旅では、下北半島をめぐった後に、津軽半島をめぐりました。 どちらも北海道に向けて突き出している半島ですが、その世界は、まったく異なります。 下北側は、荒涼として寂しい風景が続きますが、津軽側は、水田やりんご園が広…

第1556回 日本の天変地異と遊離魂

宮城県名取市閖上 2011年3月11日の大震災の後、そこはまるで異なる惑星のようで、自分が生きている現実の向こう側への扉が開いているように感じられました。 私たちは、毎日、規則正しく繰り返されている日常が世界の全てのように思い込んでおり、その認識の…

第1544回 海に囲まれた島国ならではの歴史

(丹後の立岩。蘇我と物部の戦いの時、聖徳太子の弟の麻呂子親王に鬼が追い詰められた場所。) 日本は海に囲まれた島国。この国の歴史を考える時、海人勢力のことを無視することはできない。 そもそも縄文時代、糸魚川の翡翠が北海道から沖縄に流通していた…

第1539回 言の葉によって、真の知を取り結ぶ祈り

掛川の事任八幡宮 京都から東京への移動途中、掛川の事任八幡宮と、その奥宮にあたる、粟ヶ岳山頂の磐座群の中の阿波々神社を参拝。今回で三度目となる。 事任八幡宮は、「事のままに願いが叶う」などとされ、参拝者が非常に多い神社だ。阿波々神社の祭神は…

第1536回 日本に秘められた可能性

"> この8年間、日本の古層を探究してきたけれど、今、なぜ東京を撮るのか。 私は、風の旅人を作っていた時も、日本の古層をめぐる旅をしている時も、自分の関心は同じで、それは、世界、人間、そして日本人というものを、もっと深く知りたいということ。 だ…

第1521回 アンドリューワイエスの魂が呼び起こすもの

大山崎山荘美術館で開催中のアンドリューワイエス展に行った。 久しぶりにワイエスの絵画世界に触れて、若い頃のことを思いだした。 写真家のことをよく知らなかった20代の頃、その精神世界に憧れていた表現者は、作家の日野啓三さん、画家のアンドリューワ…

第1519回 羽衣伝説の謎について

竹野川河口にそびえる立岩 羽衣伝説についてのあれこれ。 昨日、丹後半島を休暇気分で訪れて、その最後にジオサイトで出会った翁が語ったこと。「古代最大の製鉄遺跡である遠所遺跡で用いられた砂鉄が、丹後のものではない」という話が心に引っかかって、家…

第1515回 「狂」という特別な霊力。

10,000人の感想よりも、その人の一言が、自分の方向性を決めることがある。 私が、ずっと長い間、自分がアウトプットするものが果たしてうまくいっているかどうか、確認するための指針としている方から、このたびの「かんながらの道」に対するお言葉をいただ…

第1514回 思念の宙返りと、新しい世界の円環

"> 恋愛において、どんなに異性にもてる人でも、自分の意中の人に振り向いてもらえないと、心の中は辛く悲しいはずで、それは、物づくりでも同じ。 100人の感想よりも、あの人の心に届くかどうかが気になるという存在がいる。 なので、新しく本ができれば、…

第1513回 日本人とは何か? 日本文化とな何か?

"> ここ数年、遺伝子解析の技術が進んでいるようで、数限られた古代人の人骨のDNAと、現在の日本人のDNAの比較が行われている。その結果、これまで考えられていたような、日本人の起源を縄文人と弥生人のどちらかとする説ではなく、古墳時代に大挙してやって…

第1508回 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜

"> 今年中に出版するつもりで取り組んできた日本の古層Vol.5「かんながらの道」の入稿が終わった。 完成は、来週末(10月25日、26日)に行うワークショップに、ぎりぎり間に合うタイミングか。 今回は、日本人の心の成り立ちに焦点をあてて、仮名文字が日本…

第1505回 おのずから、しからしむ道

伏見稲荷大社は、外国人旅行客の人気ナンバーワンの場所だそうで、連日、ものすごい人だかり。 境内には、「伏見稲荷は祈りの場です」という言葉が掲示されているが、果たして、どれだけの人が、祈るために、この場所に来ているのか? しかし、聖所というの…

第1492回 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。

「彼岸に目を向けることなく、すべてを、神に関することも、死も、すべてこの地上のこととして考え、すべてをこの地上の生のうちに見ること。 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。 すべてのものを価値に上下のないものとして…

第1491回 日本という国の宿命

ペルセウス座流星群が極大を迎えた8月12日深夜、北海道では低緯度オーロラが観測され、流星群とオーロラの共演が見られたと話題になった。 確かに美しいのだが、なんだか不吉な気配もある。 測量工学の世界的権威としても知られる村井俊治(東京大学名誉教授…

第1484回 火山と日本人の精神世界(2)

火山の多い日本のなかでも、特に人々に知られた山としては、九州の桜島、阿蘇山、雲仙岳、そして日本の東西の境目のフォッサマグナに聳える富士山、浅間山、八ヶ岳といったところだろうか。 興味深いことに、この西に三つ、東に三つの六つの山は、対になるよ…

第1483回 火山と日本人の精神世界(1)

39口の銅鐸が発見された加茂岩倉遺跡(島根県雲南市) 日本が世界有数の火山国であることは日本人なら誰でも知っている。実際に世界の活火山の7%が日本にあると言われるが、そのことが日本人の精神に与えてきた影響を、東京など平野部に住んでいる現代人は…

第1477回 迦微(かみ)に出会うところ。

奥山の岩に苔むし 畏(かしこ)けど思ふ心を いかにかもせむ」 よみ人知らず(万葉集 日本の国歌の「君が代」においても、「苔のむすまで」という言葉があるが、むす」は、「産す」であり、万物を生み出す「かみ」の存在が、そこに意識されている。 なので、こ…

第1476回 君が代の歌の本来の意味。 日本人の心がどう作られてきたか(4) 

いわがみ神社(京都府舞鶴市) 三回連続で「日本人の心がどう作られてきたのか」を一挙に書いた。 これが、その最後のまとめになるが、「君が代」という国家のことだ。 日本人以外の海外の人たちは、堂々と国家を歌っているのに、日本人は、国家に対して、ど…

第1471回 人間の心の変化と、時代の変化。

武信稲荷神武信稲荷神社(京都)。 一昨日、奈良に行った時、興福寺の近くの商店街にカメラ屋があり、店頭に、レトロな中古フィルムカメラと、オシャレな新品のフィルムカメラがずらりと並べられていた。 おしゃれなフィルムカメラの価格は2万円以下。レンズ…

第1470回 千年の時を超えて、今に伝わってくる叡智。

春日大社と空海展へ。 空海が関わって制作されたとされる神護寺の曼陀羅が、修復作業を経て公開。 西洋絵画だと、ヒエロニムス・ボスが、超精密な描写を行なっているが、それよりも700年も前に日本でつくられた超巨大な曼陀羅の中の超精密な描写には、驚くば…

第1469回 偶然性の仕打ちを受容する生存の美学。

明治時代になって、浮世絵などの日本文化が、二束三文の値段で海外に持ち去られたように、日本人は、日本にあるものの価値を知らず、欧米のものに価値があると思い込んで、高い値段を払ってまで手にいれてきた。そして、欧米から褒めてもらって初めて、自分…

第1466回 闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

嵐山から嵯峨野は、観光客で溢れかえっているけれど、清涼寺あたりまで来ると、それほどでもない。 私が、京都に移住することになったきっかけの一つが、11年前、風の旅人の第47号で、染色家の志村ふくみさんのロングインタビューのために、この清涼寺のすぐ…

第1463回 人間の目には見えない宇宙の真理。

太陽フレアの大爆発によって、低緯度でもオーロラが見られたというニュースが、各地から届いている。 その場にいた人たちがスマホで撮影したオーロラを、世界中のどこでも見られるわけで、地球上に起きていることを人類全員が共有化できる時代になっているこ…

第1462回 情報として表に出てこない日本のリアリティ

日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。 こうした自然風土の国でありながら、山も海も見えない大都市のなかだけで日々暮らしていると、…

第1460回 日本人の潜在的な心の在り方と、海人とのつながり。

古代に対する関心の持ち方は人それぞれだが、私は、卑弥呼のクニがどこにあったかということよりも、日本人の潜在的な心の在り方に関心がある。 日本の縄文時代は10000年も続いており、明らかに大陸の影響を受けたと思われる弥生時代以降の歴史は、その4分の…

第1457回 地震のサイクルと、日本社会のサイクル。

昨夜遅く、愛媛、高知で震度6弱の地震が発生した。これは本当に怖い。南海トラフの前の、不気味な足音のような気がしてならない。 台湾から宮崎、そして四国と、最近、立て続けに、中央構造線の南側の地震が続いている。 1995年の神戸での大地震以来、北海…