ジョルジュ・ド・ラトゥール展

 昨日、国立西洋美術館の館長である樺山紘一さんに、我が社のイベントで講演をしていただいた。テーマは、ルネッサンスの芸術と都市。
 樺山さんには、『風の旅人』でも連載していただいている。今、上野の国立西洋美術館ではマチス展をやっているが、あれだけの点数が集まったマチス展は、しばらくはないだろう。保険金だけでも2億円とか。
 それで、私の今の関心事は、来年の3月8日から5月29日まで国立西洋美術館で開催される「ジョルジュ・ド・ラトゥール展」だ。国立西洋美術館の常設コーナーには、ラ・トゥールの作品が一点ある。ヤン・フリューゲルなどの絵画とともに、新しくコレクションにくわわったものだ。樺山さんのお話では、先日、皇后さまが美術館を訪れて、皇后さまもラ・トゥールをお好きのことということだが、紀宮さまは、もっと好きなんだそうな。

 ラ・トゥール真作は、世界に40点ほどしか残されていないが、そのうち30数点が、国立西洋美術館に来る。現在、日本には、国立西洋美術館の他に、八王子の富士美術館に一点あるということを樺山さんがおっしゃった。この美術館は、創価学会が創立した美術館で、私は今まで知らなかった。でも、ホームページを見ると、しっかりとしたコレクションがあるみたいで驚いた。でも、ラ・トゥールのことを、あまりメインと考えていないようだ。
 
 国立西洋美術館にあるラ・トゥールの<聖トマス>の絵の前に立つだけで、背中あたりがぞくぞくする。こんなのが30点も集まった空間を想像するだけでも、ドキドキする。
 ラ・トゥールは、レンブラント(オランダ)やベラスケス(スペイン)と同じ時代に、フランスに生きた。17世紀前半だから、スペインが凋落の道を歩み始め、オランダが世界の海に飛躍しはじめた時だ。この頃のフランスは、宗教戦争などで混乱している。レンブラントやベラスケスがあまりにも有名なのに比べ、ラ・トゥールは、ほとんど知られていない。ヨーロッパでも、評価が高まったのは、この30年ほどだという。ラ・トゥールの少し後にオランダで活動したフェルメールも、長い間、評価されなかったが、それでも20世紀の前半には、芸術家を中心に、その価値を充分に見直されていた。
 ラ・トゥールの名は、今日では世界的なものになったが、多くの日本人は、せっかくルーブル美術館に行っても、ラ・トゥールの絵の前を通り過ぎてしまうだろう。