巨大な金額の端数を甘い汁にする輩

廃止・売却の年金施設、1兆円が回収不能

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070724it01.htm


厚生年金と国民年金の保険料計約1兆4000億円を投じて建設されながら、廃止・売却が決まった年金福祉施設計412物件の資産価値が約2000億円に過ぎないことが、厚生労働省所管の独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構」(RFO)の鑑定結果でわかった。

 このうち、4分の1の102物件が今月中旬までに売却されたものの、総額は約400億円にとどまっている。売却期限まであと3年余。売却益は、年金特別会計に繰り入れられるが、すべてを売却できたとしても、1兆円以上が回収できない見通しだ。

 厚労省の内部資料によると、1945〜2005年度に国民が支払った年金保険料のうち、約6兆4000億円が年金給付以外に使われた。このうち、厚生年金分の約1兆1700億円、国民年金分の約2300億円の計約1兆4000億円が年金福祉施設の建設・整備に充てられた。

 これとは別に、総額約3000億円をかけて建設された、より大型の保養施設「グリーンピア」については、全13施設が05年12月までに売却されている。

 年金福祉施設の大半は、60年〜01年にかけて全国で建設され、厚生年金会館や保養所、カルチャーセンターなど412物件(302施設)に上る。国有財産のため固定資産税がかからず、民間施設に比べ利用料を低く抑えられるとされたが、同様の民間施設の登場で特色が薄れ、全施設の売却・廃止が決まった。

 このため、RFOが05年10月に5年間の期限付きで設立され、10年9月末までに、一般競争入札で売却を終えることになっているが、不動産鑑定の結果、資産価値は2016億円となった。

 すでに売却された102物件(76施設)の総額は398億円。このうち、約54億円を投じた健康福祉センター「サンピア小松」(石川県)は今年1月の入札で、民間企業が8億円余で落札。約14億円を要した健康保養センター「くにさき望海苑」(大分県)は3月、別の企業が1億6100万円で落札した。

 いずれも宿泊施設で、落札額は建設費用を大幅に下回っている。他の多くの施設でも、同様に、投じた保険料を回収できていない。

(2007年7月24日3時0分 読売新聞)

 1兆円という数字になってしまうと、そのうちの数百万円とか数千万円などは端数になってしまう。端数になることで、軽い気持ちで使われてしまった金額がどれだけあることか。

 接待交際と称する遊行娯楽費やバックマージンなど、法的に明らかに問題のあるお金の使い方があるが、多くのお金は、そうした露骨な形ではなく、客観的にわかりにくい方法で失われているのだと思う。

 今はどうだか知らないが、以前は、総会屋は、広告・PR会社を運営し、自社発行のつまらないPR誌を企業に購入させたり、企業のパンフレット制作の窓口になって、仕事を丸ごと他のプロダクションに制作させて、自分たちは異常に高い管理手数料を取るという合法的に見える方法でお金を得ていた。

 総会屋ではないけれど、公的機関のカタログなどを長い間制作している会社の見積もりを聞いて、空いた口が塞がらないケースが何回かあった。 

 A4サイズの130頁くらいのもので、5000万円など。巻頭に有名科学者のインタビューを入れ、その写真を有名写真家に撮ってもらうと箔が付いて、高そうに見せることができる。でも、そこに書かれている内容は、大したことがない。そんなものでも5000万円で通ってしまう。カタログなどのソフト制作は、素人には妥当な金額というものがわかりにくいので、水増ししやすいのだと思う。

 ●●企画とか、●●PRなどの名前の会社をつくり、こうした手法で、楽にお金を得る方法をつくっている人は、けっこういる。そうしたものが無数に積み重なって、回収不能な1兆円が生まれてしまうのだと思う。

 「風の旅人」は、1千万円の制作費をかけて、本を一冊売るたびに720円の収入を得て、それを積みあげることで収支のバランスを整えなければならない。だから、千円とか万円という単位の数字に敏感になる。

 それに比べて、右から左に仕事を流し、管理料として、5000万円の15%の750万円を計上するところもある。彼らは、「だいたいこれくらいになりますから」というが、その”だいたい”は、平気で100万円単位だったりする。

 1兆円とかになると、100万円は、0.0001%だ。

 参院選を前に、各党が、年金に関する政策を発表しているが、その際、どの党も、年金支払いのために必要な金額を●●兆円とみなし、そのために消費税から●●兆円、保険から●●兆円でまかなうという感じで、兆を単位とするアバウトな試算を出している。

 兆という巨大な金額の端数のブレは誰も気にしない。その誰も気にしない端数の領域に、甘い汁がいっぱいあるのだろうと私は思う。 


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