「もんじゅ」と、テレビ報道と、前原誠司

昨夜、「もんじゅ」の運転開始準備のことと島田紳助のことが、どんな塩梅で報道されるのかと思い、久しぶりにテレビをつけてNHKと報道ステーションを見た。

9時からのNHKニュースでは、紳助のことには触れても「もんじゅ」のことに全然触れなかった。報道ステーションは、紳助のことに触れて、「もんじゅ」のことに触れず、このまま終わるのかなと思ったら、最後に「原発、私はこう思う」という企画で、大阪大学名誉教授の宮崎慶次という人が出てきて、核燃料サイクルと「もんじゅ」を肯定する意見を堂々と述べた。

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 紳助報道の陰に隠れた「もんじゅ」の運転再開のニュース。その同じ日に、ニュースでは「もんじゅ」の運転再開を伝えず、経産省の原子炉安全小委員会の委員でもある大阪大学の宮崎慶次名誉教授を連れてきて、「もんじゅ」の必要性を視聴者に刷りこもうとしたテレビ朝日。よくもまあ、これだけ露骨なことができるものだと驚いた。

ウラン235の埋蔵量は少ない。インドや中国もどんどん使い始めているから、すぐになくなってしまう。だからウラン235を使わずプルトニウムを使って発電しながら、さらにプルトニウムを作り出していくという「もんじゅ」と、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す六ヶ所村の再処理工場は必要だと強く主張する宮崎慶次。これまで官僚や研究者やエネルギー企業が大義名分にしてきた主張を、改めてメディアを通じて吹聴し、その同じ日に、「もんじゅ」の運転再開の準備が始められた。これは偶然ではなく予め計画された筋書きだろう。

しかも、宮崎慶次は、現在の福島の状況を、2万人以上の人が亡くなった自然災害の現象の一部にすぎないとまで言った。

宮崎慶次の話の後、キャスターの古舘伊知郎は、硬い顔で「さあ、お天気に行きましょう」と言って終わった。何か言いたくても、メディアの住人であるかぎり、そのルールに従わざると得ない。島田紳助が引退することについても、有識者が、そのことの是非をあれこれ論じているが、メディアの住人のルールに社会の原理原則を当てはめてもしかたがない。メディアの中のルールが厭だったら、そこを去ればいいわけで、その中にいることでメリットのある者が残ろうとする。メリットがないと思えば潔く引退し、他の方法で社会と渡り合っていけばいいだけのこと。メディアの中は、世界の全てを反映しているわけではなく、スポンサーの意向を無視できない屈折した構造にすぎない。

だから昨夜の報道ステーションにしても、「もんじゅ」や「六ヶ所村」の事業を進める独立行政法人原子力開発機構や、その管理権を持って天下る官僚、そこに寄り添う東芝などのエネルギー関連企業、さらに、そこから莫大な広告費を受け取っているマスメディアが、菅内閣で「核燃料サイクル」分野の予算が縮減されていくことに焦り、抵抗している現象の表れなのだ。

7月19日に、内閣府原子力委員会が来年度の核燃料サイクル政策関連の予算を最低限にすると発表し、8月8日に菅首相が「もんじゅ」の廃炉を検討すると言い、8月11日に枝野官房長官が「もんじゅ」の予算はゼロベースでなされるべきだと発言し、8月24日、公明党は、党政策に「もんじゅ」の廃止を盛り込む方針を明らかにした。

この状況は、原子力開発機構を中心とする利害グループにとっては非常に風向きが悪い。

6000億円も出して原発企業のウエスティング・エレクトリック社を買収し、経営資源原発に集中している東芝は、2011年1月28日に「もんじゅ」の復旧作業を受注した。トラブル続きの「もんじゅ」の設計開発に関わってきた東芝が、トラブルの後の復旧作業を受注してお金を受け取るという矛盾した構造であるが、とにもかくにも、「もんじゅ」が続いている限り、東芝にお金は落ちる。

また原子力開発機構には4千人の社員がいるので、組織防衛の為にも世の中に核燃料サイクルの意義を認めてもらい、たっぷりと予算をもらわなければならない。また官僚にとって原子力開発機構は、大事な天下り先であり、相互関係が強い。

メディアは、政府に寄り添ってもお金はもらえない。だから政府は批判しやすい。先の戦争の時、メディアは政府を批判できなかったけれど、今は簡単にできる。現在、メディアが簡単に批判できないのは、スポンサーなのだ。

だから、菅首相や枝野官房長官が「もんじゅ」の廃止の動きを見せれば、それに抵抗する勢力が、自分達にとって都合のよい政治家に変えようとする。

メディア、官僚、原子力開発機構などが推す人物が、次の首相および内閣の主要人物になる可能性が高いということだ。

昨日の、紳助報道のタイミング、テレビ朝日の番組作り、前原誠司民主党代表選への出馬。TV、新聞各社は、世論調査の結果、次の総理にふさわしい人の名として前原氏がTOPであることを伝えているらしいが、それは一種の世論操作ではないのか。

「20年後の原発廃止に賛成だが、急激な脱原発ポピュリズム大衆迎合)」と前原氏は言う。脱原発では産業が立ち行かなくなるとの彼の主張が、メディア、官僚、原子力開発機構の後ろ盾を得る原因だと思う。