コドモノクニ〜来し方 行く末〜

 風の旅人 復刊第2号(6月1日発行)の内容の発表と、販売をホームページで始めました。

 テーマは、コドモノクニ〜来し方、行く末〜

  現在の社会では、子供に対して、大人の価値観をすりこんでいくことが教育だと考える傾向があります。もちろん、大人は子供の将来が幸福なものになることを願って、様々なことを子供に伝えようとしています。でもそれは、この短い期間に、現代人が作りあげた世界の基準に従っているだけです。

 人類は、歴史を通して、先祖代々が少しずつ築いてきた世界を、できるだけ損なわないように子供に伝える使命を持っていました。先祖代々が修正しながら積み重ねてきた知恵に、自分の経験が簡単に太刀打ちできないことを自覚していたからです。

 しかし、今はどうでしょう。現代社会に生きる私たちは、いつの間にか、現代は人類の歴史の最高峰に位置していると錯覚しています。新しいものほど良くなっているのだと。

 現代社会で性急に作り上げられた価値観は、非情に脆弱です。10年も経たないうちに廃れてしまい、また新たなものに取って代わられますが、その繰り返しを延々と続けるばかりです。にもかかわらず、大人は、今、自分が信じ込んでいるものを、子供達に押し付けようとしている。

 現代人は、今この瞬間だけに意識をとらわれすぎています。もっと長い目で世界を眺め渡し、時代を超えて変わらないものを見いだし、それを子供達に伝えていく必要があるでしょう。もしかしたら、その必要すらなく、子供達は子供達で、世界の普遍性に基づいて生きているのに、大人が邪魔をしているだけかもしれません。

 復刊第1号のテーマは修羅、そして、復刊第3号に予定しているのは、妣の国〜来し方、行く末〜です。つまり、第2号と第3号は、「コドモ」と「妣」(なきはは)で、対になっています。

 復刊第一号のテーマ、「修羅」からずっと、震災後の日本の在り方を考えるのが、根底を流れるテーマです。一筋縄ではいかないし、単純な言葉で語りきれるものでもない。しかし、ベクトルとして、明確にしておきたいことはあります。あらゆることの判断の基準をどこに置くべきなのか。幸福ってなんなのか。生きるというのはどういうことなのか。価値観の多様性という言い方が流行っていますが、多用なのは形であり、生命の本質は、普遍です。どんな生き物もいつか必ず死ぬし、引き際がとても大事。そして、生命は個体で完結するのではなく、必ずリレーしていくものであり、過酷な条件の中でも生き延びていく知恵は必ず生み出される。

 たった数十年で即席に作り出されたものに焦点をあてる媒体は無数にあるだろうけれど、風の旅人は、そんなものはどうでもよく、本質的で根元的なものの形を浮かび上がらせることにエネルギーを注ぎたい。

 今のように、情報が氾濫している時代において、人が発信している情報に追随するようなことは、他の誰かに任せておけばいいと思う。

 風の旅人の創刊号が世に出たのは、2003年4月1日ですから、ちょうど10年の歳月が経ちました。

 次の10年間も、創刊時とスタンスは、そんなに変わらないと思います。