第972回 競争から共創へ、利己から利他へ② 自然と伝統文化から日本を見つめ直す

 

 都会を離れ、慌ただしい日常の時間からしばし離れ、能登半島にこもり、大自然の中で、日本のことをじっくりと振り返りませんか。大きな時間の中で、過去から今、そして未来のことに思いを馳せませんか。
 12月19日(月)、能登半島にある「能登の家じんのびーと」というところで、友人の写真家、マスノマサヒロさんと、以下のようなイベントを企画しました。どうせここまで来ていただくのならばと、時間を気にしなくてすむ宿泊付きの企画です。
 宿泊場所となる「能登の家じんのびーと」は、マスノさんが、原発事故で被災した福島の子供達が思い切り心身を広げられる場として開いている大自然に囲まれた大きな一軒家です。
 と き  12月19日午後2時開演(開場正午)
 
 第一部  京ことば源氏物語 女房語り・山下智子
 第二部  座談会「自然と伝統文化から日本を見つめ直す」 
      コーディネーター・佐伯剛
      能登の伝統文化、自然文化、継承者たちとともに
      高市範幸さん 川原伸章さん 遠見和之さん 妹石武吉さん
 
 第三部  自由自在な交流会
 参加費  3,300円 *宿泊希望の場合は、宿泊費無料、食費は別途2,000円(夕食+朝食)
 場所:能登の家じんのびーと(鳳珠郡能登町柿生天5-14)
    http://www.kazesan.net/pg364.html
     *のと鉄道穴水駅からの送迎あり。
     送迎は正午の穴水駅出発に間に合う方となります。 
 
▶お申し込み・お問い合わせ  マスノマサヒロ写真事務所
   電話 080・2341・3365
   Fax 076−287−6824
   Email : mm@kazesan.net
   (なるべくメールでお願いします)
<趣旨>
 源氏物語は、日本人なら誰でも知っている物語ですが、実際に読み通したことがある人はほとんどいないという不思議な読み物でもあります。現代人がこの物語のことを意識することはほとんどありません。しかし、私たちの無意識の深いところに、この物語のエッセンスは脈々と流れているのです。なぜなら一千年も前の平安時代に書かれた物語は、その後の鎌倉、室町、江戸時代に、無数の写本や絵巻が描かれ、無数の人々に影響を与え、そこから中世日本文化が生まれ、その中世日本文化の影響を受けて、日本人の思考や感性がつくられてきたからです。もののあわれ、侘びや寂び、粋などという日本が洗練させてきた深い精神的態度は、すべてここに遡ると言って過言ではないでしょう。この源氏物語を核に、伝統文化や自然から日本を見つめ直す場を、能登という聖なる時空の中に設けました。
 能登半島は日本列島のほぼ真ん中に位置し、日本海に突き出ています。半島や岬は、彼岸と此岸の境であり、古くから神々の世界と人間界をつなぐ場所でした。能登もまた、神々と人々が自然を介して共存する土地で、しばしば「民俗の宝庫」あるいは「祭りの宝庫」と称されます。古くから、山や海、木や岩など自分を取り囲む自然の中に魂を感じとり、畏敬の念と感謝の気持ちを育ててきた日本人は、世界が急速に均質化して行くグローバル化の大河の中で、自分のアイデンティティを問わざるを得ない状況にもなっています。頭でっかちに考えるのではなく、身体の感覚を敏感にして、記憶の深いところに耳を傾ける。日本人の優れた知恵や技は、そのようにして生み出され、受け継がれてきました。
 都会の中にいると、見えないもの、聞こえない音があります。それは、都会の雑多な情報が、我々の分別や打算という目先の現実に適合するために活性化する大脳の働きを刺激しすぎるからです。記憶の深いところに意識を集中するためには、少し大脳を鎮めて、小脳の記憶にアクセスする必要があります。能登の自然の中で、身も心もリラックスさせて、深いところで日本を見つめ直す一期一会になればと思います。

源氏物語もののあはれ源流への旅〜 女房語り 山下智子>
 言霊の国日本。京ことば源氏物語は、京都の国文学者・故中井和子先生が十五年の歳月をかけ源氏物語全五十四帖を今から百年ほど前の京ことばに訳されたものです。(大修館書店より出版-全五巻)
 現代からみると雲の上のような格調高い王朝絵巻ですが、京ことば源氏物語では一人の女房(高の女官)の視点で宮中の出来事のあれこれがあたかもここで話しているように語られ、生き生きとした平安の世の人間模様が浮かび上がります。
 「ことば」はその土地の独特の気候風土が育んだ感性によって紡がれたものです。複雑で微妙に移ろいゆく京都の自然は、そこに住む人々の心にことばにかさねられてゆきました。女房という立場から、配慮を見せつつおぼろげにことばをかさねてゆくことでだんだんと立体化する物語世界は直接的ではありませんが、気候風土のもたらす発想の息吹そのものが「音」となって響いては消えるその中に、源氏物語の底に流れるもののあはれをくみ取っていただけることを願います。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


鬼海弘雄さんの新作写真集「Tokyo View」を発売中です。
詳しくはこちらまで→