第1237回 聖徳太子の時代と、龍の祟り。

 このたび制作したSacred world 日本の古層Vol.3で、古代における幾つかの謎解きを行なっている。

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 古代エジプト文明や古代インカ文明のように、古代日本にも多くの謎がある。

 その一つに、現在でも全国に16万基も残る古墳があり、その規模の大きさ、数の大きさ、石室内の石積み技術の素晴らしさ、石棺作りのため、遠く離れた場所から巨石を運んでいることなど、技術面だけでなく、そのエネルギーや人員動員力に驚かされる。なにしろ、同じ時期に、かなりの数の大古墳が集中的に作られているのだ。

 Sacred world 日本の古層Vol.3では、聖徳太子の時代に焦点を当てているのだが、その時代の大王の古墳が集中しているのが、大阪府太子町だ。ここには、第30代敏達天皇聖徳太子、第31代用明天皇、第33代推古天皇、第36代孝徳天皇の御陵をはじめ、それ以外にも有力氏族と思われる無数の古墳がある。

 当時、王権の中心は奈良盆地にあったが、太子町は、奈良盆地からは葛城山金剛山二上山などを超えた西の地にあたる。

 敏達天皇の在位は572年で、推古天皇の在位が終わるのが628年、そのあいだの50年、蘇我馬子に暗殺された崇峻天皇を除いた王の墓が、聖徳太子も含めて、ここに集中している。この50年と、この場所とのあいだに何かしらの深い関係があると考えられる。

 それについての考察をSacred world Vol.3では展開しているのだが、その考察のヒントの一つが、この写真だ。

 この写真は、美具久留御魂神社(大阪府富田林市)の境内から二上山を見たものだが、この一直線上のラインで、二上山までの真ん中(3.5kmのところ)に、聖徳太子の御陵がある。春分秋分の日、この場所に立てば、聖徳太子陵の向こうの二上山から太陽が上る。そして、さらにこのラインを東に延長していくと、三輪山大神神社、宇陀の墨坂神社、室生龍穴神社、そして伊勢神宮斎宮跡までつながっている。

 

 逆の奈良盆地ヤマト王権のあった場所からは、二上山の向こう側に太陽が沈んでいくように見える。

 古代エジプトでは、太陽の沈む場所は、新王国(紀元前1570年頃 - 紀元前1070年頃)の首都テーベ(ルクソール)の対岸の王家の谷である。テーベは、古代エジプトで最も重要な太陽神アメンのための都でもあった。

 奈良盆地から見て古代エジプトの王家の谷に該当する場所が、大阪の太子町であり、この場所に集中的に大王の御陵が築かれたのは聖徳太子の時代だが、日本において太陽神の権威づけがなされたのも、この時代だった可能性がある。

 というのは、古代エジプトの太陽神アメンも、最初は重要な神でなかったが、新王国時代に急激に権威化された。古代日本においても、最初の太陽神の名前はオオヒルメであり、この太陽神は、イザナギイザナミが一緒にいた時に生まれた神で、その他多くの神の一員にすぎなかった。

 しかし、イザナミの死という象徴的な出来事があり、イザナギ一人が残り、黄泉の国から逃げ帰って禊をした時に生まれた太陽神が、アマテラス大神なのだ。

 日本の太陽神も、この神話で語られるように質的に転換しており、それはおそらく聖徳太子の時代のことだろう。

 果たして、この時代に何があったか?

 二上山の独特の山容は、奈良盆地のどこからでも目立つのだが、それだけでなく、この山の麓で採掘できるサヌカイトは、神津島八ヶ岳隠岐の黒曜石と同じく、石器時代から重要な交易品として、各地に流通していた。サヌカイトの原石が流通していたのではなく、二上山の西麓の地で石器に加工された上で、石川の水運で各地に運ばれていた証拠が残っている。さらに、二上山石灰岩は、大王の古墳の石棺に多く使われていた。

 そしてこの二上山の稜線は、龍の形に見えるのだが、二上山の東麓の葛城市の長尾神社、大和高田市の石園座多久虫玉神社、三輪山大神神社を、龍の尾、胴、頭とする伝承がある。とりわけ、石園座多久虫玉神社は竜王宮とされる。

 そして、三輪山の神は蛇であるという伝承が多く残り、さらに、墨坂神社、室生龍穴神社も龍神と関わりが深い。

 この写真の美具久留御魂神社もまた、大蛇の祟りがあったとされる場所であり、その時代は、第10代崇神天皇の時代であり、同じ時代に、この東西のライン上の三輪山、墨坂神社でも、祟りに関する神託があった。

 この東西のラインは、龍(大蛇)と、祟りが関係している。この龍(大蛇)の祟りとは何なのか? そして、そのことと、太陽神の復活が重なっている。それは、そんなに大昔のことではなく、西暦500年から600年頃の出来事ではないか。

 といったことを、 Sacred world 日本の古層 Vol.3では、いろいろな角度から事実を取り上げて洞察を行なった。

 

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Sacred world 日本の古層Vol.3は、6月29日に納品されますので、すでにお申し込みいただいている方から順に発送していきます。

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