おくりびと


 アカデミー賞で話題になった「おくりびと」をDVDで見る。
 納棺師を通して、“穢らわしいもの”のように扱われる“死”を、敬虔に厳粛に取り扱うという内容のものだ。どこをどのように切り取って見せれば、人を涙に誘えるか、美しいと感じさせることができるか、人を感動させることができるか、作り手の意図が透けて見えすぎて、天の邪鬼な私は、素直に感動できない。
 落としどころを心得ていて、それに添って筋書きをつくり、筋書きどおりに物事が展開していく。失踪し、恨んでいた父が死んで、突然その知らせがきて、主人公が葛藤しながらも納棺を行うという筋書きは、ずっと昔から行われているテレビドラマの常套手段だ。
 楽しかったり感動したりするのだからそれでいいじゃないか。あれこれ理屈をこねて批判する必要なんかどこにもない。と、反感を買うのは承知だが、いかにも“死”と向き合っているようなテーマ設定で、どのように見せれば人を感動させることができるか、みえみえの筋書きで表現を行うのは、“死”を、人の感情操作の道具にしかしていないように思えるのだ。
 映画も小説も、“まやかし”で、娯楽という割り切り方でいいという人もいるだろう。しかし、明らかにエンターテイメントという見せ方ならそれはそれでいいのだが、神妙に“死”と向き合っているかのような装いは、事実としての“死”の風景を歪ませるような気がしてしまう。
 まあ、多くの人は、そういう仕掛けに慣れきっているので、こういう映画でもエンターテイメントとして見て、翌日にはスッキリしているのだろう。
 見る側にしこりが残るほどの重いものは人には好まれない時代だから、“死”も、重くならない程度に扱うことが、うまくやるためのミソなのだろう。