2017-01-01から1年間の記事一覧

第1018回 核と鎮魂(2)

昨日、参加してきたイベントは、「核と鎮魂」であり、決して、「核の鎮魂ではない。 「と」と「の」の違いだけれど、この違いは目が眩むほど大きい。イベントの途中、この違いの大きさをわかっていない登壇者もいたが、この違いが行き渡るような場でなければ…

第1017回 核と鎮魂(1)

京都に移住してから何かとお世話になっている信頼資本財団の熊野理事長と、風の旅人において、連載を続けてくれた作家の田口ランディさんが協働して、「核と鎮魂」というイベントを開いた。原発問題、とりわけ高レベル放射性廃棄物の最終処理の問題を軸に、…

第1016回 いのちを呼びさますもの

レジリエンスフォーラム(人間力=地球協働力)というのを始めることにしました。 その第一回目を、​2017年12月10(日)18:30〜20:30 、稲葉俊郎さんをゲストに迎えて行います。 心臓の専門医でありながら、西洋医学のみならず伝統医療や代替医療など幅広く…

第1015回 進化とは?

12月1日(金)、京都の風伝館で、「進化とは?」という内容で、信頼資本財団の熊野理事長と、そもそも談義を行います。 環境を生き抜く遺伝子が後世に伝えられていくのか、もしくは、環境に応じて遺伝子は自らを変えていくのか。 これからの人類は、ダー…

*第1014回 時代や地域が変わっても変わらないもの

11月2日に、スタンフォード大学京都プログラムで来日している学生達に、編集と日本的な時空間の関係などを講義する機会をいただいた。もちろん、『風の旅人』をベースにしての話だ。 2003年4月から50冊の『風の旅人』を作ってきたが、対談や講演で…

第1013回  政治の問題だけでなく、国民の依存体質がどれほどなのか問われる選挙でもある。

10月22日の衆議院選挙。当初は、小池人気に頼るだけの何の実績もない希望の党が、安倍政権を悪者にする戦略で大躍進するのではと期待されたが、野党が一丸となって安倍政権と戦うのではなく、仲間に入れるとか入れないのゴタゴタで、状況が大きく変わること…

第1012回 どの政党が勝つか、よりも大事なこと

選挙の結果がどう転んでも、悲しいかな、ろくなことにならないような気がしてきた。希望の党から出馬の中山成彬元文部科学相が、 首相に望ましい人物として「安倍晋三首相がいい」と、堂々と発言しているようだ。 希望の党が「安倍政権打倒」を掲げているこ…

第1011回 リベラルとは何なのか。

解散総選挙で、日本中が、政治ゲームに染まっている。 これまで何の実績のない小池党首の希望の党に、つい最近まで政権政党だった民進党が、リベラルな政治家を排除するためだと安全保障と改憲の踏み絵を迫られ、選挙に出馬できるかどうかというキャスティン…

第1010回 昭和という時代の欺瞞と虚飾の延長線上の今

京都の河原町のLumen galleryで福島菊次郎の写真展と記録映画の上映があります。 http://www.lumen-gallery.com/ まだご覧になっていない人は、ぜひ一度見ていただきたいです。きっと感じるところがたくさんあるでしょう。 現在、安倍政権が、民進党の混乱や…

第1009回 古きを温めて〜日本の風土と魂の行方〜

(小野妹子の古墳 滋賀県 大津市) 現代のことが気にならないわけではないし、子供を持つ親として未来のことも心配だ。 そして、政治や経済が、未来のあり方に大きく関わってくることも理解している。 しかし、それ以上に、今改めて、私たちの足元文を見つめ…

第1008回 禍福と、かんながらの道(続) 〜小野氏や源氏物語と、古今東西変わらない”祓い”のこと〜

(京都市北区 小野岩戸) 平安京は、風水を配慮して都を守るように作られていることはよく知られている。しかし、守り方は、一つではない。平安の都の完成に至るまでに様々な陰謀や無数の死が積み重なっており、恨みを残して死んでいった人々の祟りからも、…

第1007回 禍福と、かんながらの道。

8月5日は、現在の日本で経験できるもっとも美しく静謐な祭りの一つ、今宮神社の織姫祭りだった。ありがたいことに、私もこの祭りの実行委員会の末席に座らせていただいている。 神事の後には、神前で、お供え物を参列者で味わう豊かなひととき。かけがえの…

第1006回 ありのままを伝えることの深み〜ジャン-ウジェーヌ・アッジェと鬼海弘雄の街の写真〜

撮影:ジャン-ウジェーヌ・アッジェ 一昨日、神戸まででかけた時、もう10年以上、連絡もしていない同郷の写真家のことを、ふと思い出した。 そして、驚いたことに、昨日、突然、その写真家からメールがきた。 「佐伯さん、お元気ですか。素晴らしい写真集…

第1005回 政治の単純化と、われわれの思考の単純化は相互関係にある。

安倍政権は、これまで、選挙に強いことが強みだったらしい。選挙に強かったから、自民党内でも、安倍一強だったようだ。 安倍政権が選挙に強かったのは、実績でも、実力でもなかった。他に受け皿がなかったこと。そして、他の政党よりも、「経済」に特化した…

第1004回 世界でいちばん美しい村

(撮影:石川梵) 石川梵監督の「世界でいちばん美しい村」というドキュメント映画がある。日本全国で上映され、人々の心を捉えているが、6月17日から、大阪の第七藝術劇場でも公開される。 http://www.nanagei.com/ 6月19日には、13時55分からの…

第1003回 過去と未来の橋渡しになる映像を

一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)が発表している数字を見ると、デジカメ販売の長期衰退は、著しい。 コンパクトカメラは、2010年が1億900万台で9,774億円だったが、2016年は、1,200万台で1,630億円。 レンズ交換式カメラは、2010年が1,300万台で3,9…

第1002回 天の恵みを授かる作法ー鈴鹿芳康の作品世界ー

鈴鹿芳康は、アーティストである前に旅人である。旅人というのは、実際にその環境を訪れて、土地と空気と水などの物質や様々な価値観をもった人々と身体感覚を通して交じり合う感覚をリアルなものと記憶しているから、その感覚を抜きに、物事を判断すること…

第1001回 「室礼展」に見る、緩く心地よいつながり。中央集権的な構造から分散処理的な構造へ。

京都ではKyoto Graphieという写真祭りで盛り上がっています。私も、この期間中、「The Terminal Kyoto」というところで、最近、ピンホールカメラで撮り続けている古樹の写真を、和紙に出力して展示させていただいています。 Kyoto Graphieが写真メインの展示…

第1000回 自分のモラルから言葉や表現物を発するということ

小栗康平監督のDVDブックのFOUJITA (小栗康平コレクション 別巻) <駒草出版>が発表された。 https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=25VR46+1RPEIA+249K+BWGDT&a8ejpredirect=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2Fdp%2F490544778X%2F%3Ftag%3Da8-affi-145793-22 装…

第999回 畏れという人間の良心

「アルビノの木:監督 金子雅和」 京都みなみ会館で、4月15日から21日まで上映される『アルビノの木』という映画がありますが、4月15日の14時15分からの上映後、監督の金子雅和さんと私のあいだで、30分ほどトークを行います。 8ヶ月ほど前、…

第998回 もののあはれと幽玄

第7回 風天塾開催 もののあはれと幽玄〜近代合理主義を超えて〜「源氏物語と日本文化の秘めた力」 お申し込みはこちら➡︎https://www.kazetabi.jp/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/ (和蝋燭の灯りに照らされた空間で) 日時 2017年4月28日(金…

第997回 格安旅行の旅行会社の倒産の裏側

東芝の1兆円近い負債のことで大騒ぎになったので、てるみくらぶという旅行会社の倒産で発生した150億円の負債は、一般の人にはとても小さくみえるだろう。 そして、このことについて、「資本主義経済をとる以上、企業の倒産は避けられない。自由競争、規…

第996回 脱中央集権的な社会という夢

PHOTOGRAPH BY ROBERTA RIDOLFI 出典『WIRED』 ルイス・アイヴァン・クエンデ|LUIS IVÁN CUENDE 1995年、スペイン・アストゥリアス州オヴィエド生まれのシリアルアントレプレナー、エンジニア、ハッカー、クリプトアナキスト。 この21歳の天才青年の考え…

第995回 人間の尊厳とは 

映画「この世界の片隅に」(監督:片渕須直、原作:こうの史代)がとてもよかった。 ごく普通のことを積み重ねていくことが、こんなに愛しく、そしてそれを失うことが、こんなにも哀しいのだと、胸にしみた。 http://konosekai.jp/ 嫁入り前のすずが暮らして…

第994回 写真に言葉は必要か否か

写真も、言葉も、それを作り出した人間も、それ単独では不完全なもの。それが存在するだけで、知らず知らず世界を損なっている。それは、大脳を発達させてしまった人間の宿業。生命の生存に直接に結びついた小脳と違い、大脳は、経験を応用的に処理し、より…

第993回 末法の世

2011年3月11日から6年経った。 このサイトには1000本を超える動画が、位置情報を特定して記録されている。 http://311movie.irides.tohoku.ac.jp/SearchPage?8 このうちの1本を見るだけでも、自分の中の何かが崩れていくような気持ちになる。この震災…

第992回 1000年前よりも遥か以前と現代の紐帯になる源氏物語

私は源氏物語の研究者でもなんでもないが、なぜかその私が、同志社大学で源氏物語関係のイベントを企画しているので、最近、これまでよりも源氏物語を身近に引きつけて考える癖がついている。 1,000年前に書かれた源氏物語は、欧米世界では近代小説の傑作と…

第991回 根源と全体を受容すること②

小栗さんと京都の清水あたりを歩いている時、小栗さんがデビュー映画「泥の河」を作ってまもなく、若狭と東大寺のお水送りとお水取りのリポーターをやった時の話をされた。 この時のことは、1987年に発行された「哀切と痛切」という本の中に書かれている…

第990回  根源と全体を受容すること①

20歳の頃、2年間の諸国放浪の前後、計り知れない影響を受けた人物が二人いた。一人は小説家、もう一人は映画監督。 世界に対する視点、世界への向き合い方、掘り下げ方は、この二人の作品世界に触れたことで、かなり方向付けられた。それまで試行錯誤しな…

第989回 主権の自己制限について

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、昨年3月末で7%超の東芝株を間接保有し、東芝の「隠れた大株主」だ。昨夏の段階で、年金マネーは、東芝の不正会計問題によって株価が下がったため、計130億円の含み損を抱えた。東芝は、その後、さらに…