写真

第1168回 目の焦点と、心の焦点。

富士ヶ嶺から望む富士山 富士山と、富士山周辺の聖域をピンホールカメラで撮ると、確かに、その霊気が針穴の中に忍び込んでくるような気がしないでもない。 最近、私のピンホール写真を見た写真家の水越武さんから写真の焦点について問いを投げかけられたが…

第1166回 見えるものと見えないものの間

足摺岬 竜宮神社 日本は、アメリカや中国などに比べると小さな島国ですが、北から南まで長い国で、その自然や文化の多様性は、無限とも言えるほどの豊かさがあります。 現在、私が取り組んでいる「 Sacred world 日本の古層」のプロジェクトで、ピンホール写…

第1165回 偶然と必然は糾える縄のごとし

事任八幡宮 (静岡県掛川市) 偶然と必然は、糾える縄のごとしであり、偶然だったことも、後から思えば必然だったのかと思わされることが多い。 昨年の冬、京都から東京に移動する時、出発の前日までは長野経由を考えていたが、大雪で道路の状況に不安があっ…

第1164回 現場を訪れることで立ち上がってくる新たな問い

三角形の北の頂点が、京丹後市網野町の網野神社、西の頂点が兵庫県宍粟市の伊和神社、東の頂点が、亀岡市の魔気神社である。それぞれのあいだは、76kmで正三角形である。魔気神社と、伊和神社は、珍しく本殿が北向きの神社であり、京丹後の網野神社は、浦島…

第1163回 古代から現在、そして未来への連続性

昨年の夏、自分の故郷の明石に長く滞在したこともあり、明石から播磨にかけての地域をじっくりと取材していた。 私は、18歳まで明石で育った。明石原人や明石象の発見地ということもあり、その現場で考古学のママゴトをしていたが、明石周辺が歴史的に重要…

第1162回 ピンホール写真と、祈り。

高性能のデジタルカメラは、撮影者が狙うような絵を作り出すために非常に有用なツールとなっている。 それは、撮影者の満足度を高めるために適しているかもしれないが、そのアウトプットが、自分と世界のあいだの作法として相応しいものかどうかは別問題だ。…

第1161回 有為転変の出来事そのものではなく、この世を司る理。

Sacred world 日本の古層 vo.2の最後の14ページは、ピンホール写真と、上嶋鬼貫の俳句のコラボレーションになっている。 上嶋鬼貫は、芭蕉と同じ時代の俳人で、東の芭蕉、西の鬼貫と高く評価されていたものの、芭蕉ほど知名度が高くない。しかし、リルケなど…

第1160回 風の旅人と、Sacred worldのつながり。

日本の古層を探りはじめると、とめどなく謎が続いていく。 何か一つのことがわかっても、それが新たな疑問のきっかけとなる。しかし、その謎解きに精力を傾けて集中していると、いろいろな関連事項が自分の中に蓄積していき、つながりができてくる。 残念な…

第1159回 ピンホールの眼と、日本の古層

Sacred world 日本の古層」に掲載されている写真は、全てピンホールカメラで映したもの。 一般的な写真撮影は、被写体を探して狙い撃つ性質があり、「撮影する」を英語にすると、shootとなる。カメラのシャッターは拳銃の引き金に等しい。 しかし、私たちは…

第1157回 Sacred world 日本の古層Vol.2の完成

新型コロナウィルスによって、この1年以上ものあいだ、世界中の人々が、これまで経験したことのない時間の中を生きています。 天災や疫病は、人間の「理」を超えたものであり、古代から人間は、こうした人間の「理」を超えた試練に直面するたびに、世界観や…

第1131回 無念を承知の人生。

池袋で、鬼海弘雄さんの供養のための飲み会が終わった。鬼海さんの本当の供養は、という話となった。鬼海さんが、あちらの世界で、もっとも喜ぶであろうことは? 人は、この世を去ることで、良い意味で悪い意味でも。その存在が、永遠となる。人は亡くなって…

第1130回 魂の交流と、天命

お使い帰りの兄妹 撮影:鬼海弘雄 生前、私を同志と言ってくれた鬼海さんは、2020年10月19日、75歳で逝ってしまった。 そして、若造の私にとって恩師だった日野啓三さんは、2002年10月14日、73歳で他界された。鬼海さんも日野さんも、ほ…

第1129回 撮ることの秘儀  鬼海弘雄さんの写真について

鬼海弘雄さんの写真で素晴らしいものはたくさんある。 その中で、例えば、この一枚の写真には、鬼海さんの人柄や、哲学、そして写真の凄さ、写真表現だからこそ可能なことが、ぎゅっと詰まっている。 これは、鬼海さんが、トルコのアナトリア地方を旅してい…

第1128回 追悼 鬼海弘雄さん(2)

Impact hub Kyoto で行った鼎談「黙示の時代の表現〜見ることと、伝えること〜」(右から、鬼海弘雄さん、小栗康平さん、佐伯剛) 撮影:市川 信也さん 2018年11月11日。とっても楽しかった。この後、小栗さんと鬼海さんで、何日、我が家に泊まって…

第1127回 追悼 鬼海弘雄さん(1)

10月19日、鬼海弘雄さんが、2年あまりのリンパ腫との闘病の末、亡くなった。 春頃までは、電話がかかってくれば、次の本作りのことや、良くなったらあと一回、トルコに取材に行きたいなあとか、そういう前向きな話ばかりだった。きっと、自分を鼓舞して…

第1111回 わかりやすい自分事と、わかりにくい他人事で切り分けるのではなく。

近年、テレビメディアやSNSの影響からなのか、人々は、わかるかわからないか、共感できるかできないか、という単純な線を引きたがる傾向が強い。 しかし、わかることや簡単に共感できることというのは、自分の経験の中で処理できることにすぎず、重要なこと…

第1093回 森羅万象の摂理と、ピンホール写真。

原初というのは、終わってしまった過去ではない。森羅万象の摂理においては、そこから生まれたものは、そこに還っていく宿命にある。 このたび制作した「Sacred World 日本の古層 Vol.1」に掲載されている写真は、この数年間、日本の様々な聖域を訪れ、すべ…

第1091回 デジタル社会における写真集の可能性!?

「Sacred world 日本の古層 Vol.1」を発表してから1ヶ月となり、いくつかのご意見をいただいている。 https://www.kaz www.kazetabi.jp このデジタル全盛の時代に、なんでまたピンホール写真なのと違和感を抱く人もいるかもしれないが(今のところそういう…

第1083回 もののあはれという、日本人の運命の受け止め方

コロナウィルスで、かつて経験したことのない重い空気が世界を覆っている。 私は、2015年10月に発行した風の旅人の第50号で、次号の告知として、「もののあはれ」を発表したものの、その底深いテーマの前に途方にくれ、そのままになってしまっていた。 日本…

第1082回 神の使者、ライチョウと、水越武さんの写真。

写真家の水越武さんの新著、「日本アルプスのライチョウ」が、手元に届いた。 https://www.shinchosha.co.jp/book/315233/ 本当に素晴らしい! ここ最近見た新著の写真集のなかで、もっとも素晴らしい。 写真集としては小さなサイズだけれど、この小ささで、…

第1072回  風土と人間

大阪のphoto gallery Saiで、写真家の小池英文さんが、「瀬戸内家族」というテーマで撮り続けたきた写真の展覧会を行っています。 小池さんの写真は、風の旅人でも何度か紹介させていただきましたが、この写真展を機会に、私と、小池さんに、ギャラリーの主…

第1071回 鬼海弘雄 最新写真集 SHANTI persona in india

https://www.chikumashobo.co.jp/special/persona/shanti/ スマホで、色調その他色々と調整ができて、手軽に撮影ができる時代、プロとアマチュアの差がほとんどわからなくなった時代。もはや、「いい写真だね」という言葉は、褒め言葉でもなんでもなくて、た…

第1066回 過去と未来の橋渡しになる映像を

亀岡 御霊神社 ピンホールカメラで撮影した日本の古代の聖域の写真を紹介するホームページを一新しました。 ​​ https://kazesaeki.wixsite.com/sacred-world 日本というのは、たぶん世界の中でも実に特殊な国で、一千年以上も前の歴史を探るために、文献の量…

第1046回 広河隆一氏の性的暴行事件について(4)

広河隆一氏が、月刊雑誌に、今回のセクハラ事件に対して「手記」を書いて掲載している。 このタイミングで、手記を書く方も書く方だが、掲載する方の神経も理解できない。 手記を書くのは構わない。しかし、ふつう、手記というのは、事件がなんらかの結論に…

第1026回 リアリティと幻想の交錯

4月5日、写真家の森永純さんが亡くなった。80歳だった。森永純さんのことを、知っている人は少ないと思う。森永純さんは、日本の写真界で、写真展という形で最初に展覧会を行った人だ。それまで日本における写真家というのは、雑誌や新聞などに素材を提供す…

第1019回 時代を超える普遍性について思う

今、銀座のニコンサロンで奥山淳志さんの写真展「庭とエスキース」が開催されている。東京では1月30日まで。大阪では、2月22日から28日まで開催される。 奥山さんは、今回の写真展のために出版社を通さず自力で作り上げた写真集の販売のため、毎日、…

第1010回 昭和という時代の欺瞞と虚飾の延長線上の今

京都の河原町のLumen galleryで福島菊次郎の写真展と記録映画の上映があります。 http://www.lumen-gallery.com/ まだご覧になっていない人は、ぜひ一度見ていただきたいです。きっと感じるところがたくさんあるでしょう。 現在、安倍政権が、民進党の混乱や…

第1006回 ありのままを伝えることの深み〜ジャン-ウジェーヌ・アッジェと鬼海弘雄の街の写真〜

撮影:ジャン-ウジェーヌ・アッジェ 一昨日、神戸まででかけた時、もう10年以上、連絡もしていない同郷の写真家のことを、ふと思い出した。 そして、驚いたことに、昨日、突然、その写真家からメールがきた。 「佐伯さん、お元気ですか。素晴らしい写真集…

第1003回 過去と未来の橋渡しになる映像を

一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)が発表している数字を見ると、デジカメ販売の長期衰退は、著しい。 コンパクトカメラは、2010年が1億900万台で9,774億円だったが、2016年は、1,200万台で1,630億円。 レンズ交換式カメラは、2010年が1,300万台で3,9…

第994回 写真に言葉は必要か否か

写真も、言葉も、それを作り出した人間も、それ単独では不完全なもの。それが存在するだけで、知らず知らず世界を損なっている。それは、大脳を発達させてしまった人間の宿業。生命の生存に直接に結びついた小脳と違い、大脳は、経験を応用的に処理し、より…