写真

第1588回 もののあはれと、かんながらの道

とんでもない本が、私の手元にあります。 井津建郎さんの新作写真集「もののあはれ」。 https://twelve-books.com/products/mono-no-aware-by-kenro-izu?fbclid=IwY2xjawL6M8xleHRuA2FlbQIxMABicmlkETE2RWY2T2RING5yTFd3eEpPAR6DcWoWANTLJ9ZI29TECIUUES_pFNZ…

第1587回 短期的に希望を持つな、長期的に絶望するな。

「人類がその創造的想像力を試されるのはこれからである。倫理的感受性を純化し、想像力を精錬しよう。不屈の生存意思を磨け。短期的に希望を持つな、長期的に絶望するな。」日野啓三 京都市で気温39.6度に達した酷暑の今日、日野啓三さんが使用していたキャ…

第1583回 プラチナプリントと記憶の継承

手前、井津さんの作品、奥は川田さんの作品。 東京のPGIギャラリーで、「土佐白金紙」を使用した10名の写真家によるプラチナプリントの写真展が開催されています。 10名のうち、川田喜久治、井津建郎、志鎌 猛、八木清の4名は、風の旅人の誌面で何度も紹介し…

第1582回 人間の大地、祈りの大地。野町和嘉写真展。

世田谷美術館で野町和嘉さんの写真家人生の集大成とでもいうべき写真展が始まり、内覧会に行ってきました。 あいにく猛暑が続く日々ですが、野町さんが撮ったサハラ、ナイル、サウジアラビアなどの地域は、地球上で最も暑い地域ですから、この暑い季節にこそ…

第1579回 ヤマトタケル神話と、八角墳の背後の真相。

ヤマトタケルの蝦夷鎮圧の拠点、朝日山に鎮座する吉田神社(茨城県水戸市) 今年の5月に東北の古代巡礼の旅をした時、最後の訪問地としたのは茨城県水戸市の吉田神社と吉田古墳でした。 なぜこの場所なのかというと、ここが、神話のなかでヤマトタケルの蝦夷…

第1576回 微分的ではなく積分的な視点での歴史認識

"> "> 東京と京都で交互に行なってきた31回目のワークショップセミナーを終えました。毎回土と日の二日間行うので、延べ日数では62日。フィールドワークを雨の中でやったことがない。 さすがに今回は梅雨本番の時期に設定しているから雨は覚悟していたし、…

第1569回 超然たるサルガドの眼差し

SNSを開くと、実に多くの人が、セバスチャン・サルガドの死について言及している。 写真というジャンルを超えて、いろいろな分野の人が強く関心を持つ写真家というのは、今ではほとんど存在しなくなった。 また、何の説明もなく、ただ写真だけを見て、強烈な…

第1563回 人工知能に譲れない人間の領域

ゴールデンウィークが終わった後に東北への巡礼の旅を行う計画なので、連休中は、今年に発行予定の大山行男さんの写真集、The Creation Vo.l3に、筋道を立てるつもりで取り組んでいます。 大山行男と言えば富士山の写真家と思われていますが、4年ほど前に…

第1543回 理と智を統べる21世紀の表現

空海は、「真理というものは言葉で言い表せないものだけれども、けっきょく言葉で表現して伝えようと努力するしかない」と言った。だから空海の密教は、真言密教。 密教というのは、本当は、経典の言葉では伝えられない真理への道のはずだけれど、真言密教は…

第1541回 かんながらの道と、小栗康平監督の映画

新宿のOM SYSTEM ギャラリーで開催中の「かんながらの道」写真展。期間の半分を終了。今日の火曜日と明日の水曜日は休館で、13日(木)から再開です。 https://note.jp.omsystem.com/n/nef782674b1cc?magazine_key=mf329d1da0f83&fbclid=IwY2xjawIX5LtleHRuA…

第1540回 日本人の特性と針穴写真

いよいよ、新宿のOM SYSTEMギャラリーで開催の写真展の設営が明日となりました。そして、本番が6日(木)から始まります。(入場無料。火曜と水曜が休館日。10時から6時。最終日の17日は午後3時閉館)。 私は、職業として写真家ではないので、これが、生ま…

第1537回 未知との向き合い方

今年最後のワークショップセミナーが終わった。これまで24回、東京と京都で交互に規則正しく行なってきた。 この規則性が、自分にとって、とても良いリズムになった。 この期に及んで、あれこれやりたいことは、あまりない。 あちこち行きたいところは、この…

第1534回 掻き消えてしまいそうな自我のゆくえ

小野啓という写真家がいる。 ホームページで全国の高校生に呼びかけて、写真を撮ってもらいたいという声に応えて、彼らの土地まで足を運んで対話を行って撮影している。 今から17年も前だが、撮影における、そうした丁寧なプロセスがとてもよく写真に反映さ…

第1522回 「かんながらの道」 写真展について

まだ先のようだけれど、年が明ければすぐなので、早め早めに作業を進めています。 来年の2月6日(木)から2月17日(月)まで、新宿のOM SYSTEMギャラリーで開催することになった写真展のDMができあがりました。 何しろ写真展は初めてなので、これをどう活用…

第1516回 写真における、独自の視点と、その人ならではの姿勢。

">(新刊の「かんながらの道」より "> 東京の写真を撮っている人は、とても多い。 そして、それらの写真を持ち上げる際に、「独自の視点で東京と切り取った!」という言葉が使われることが、とても多い。 気鋭の写真家とか、重鎮の写真家とか、なんでもいい…

第1515回 「狂」という特別な霊力。

10,000人の感想よりも、その人の一言が、自分の方向性を決めることがある。 私が、ずっと長い間、自分がアウトプットするものが果たしてうまくいっているかどうか、確認するための指針としている方から、このたびの「かんながらの道」に対するお言葉をいただ…

第1514回 思念の宙返りと、新しい世界の円環

"> 恋愛において、どんなに異性にもてる人でも、自分の意中の人に振り向いてもらえないと、心の中は辛く悲しいはずで、それは、物づくりでも同じ。 100人の感想よりも、あの人の心に届くかどうかが気になるという存在がいる。 なので、新しく本ができれば、…

第1513回 日本人とは何か? 日本文化とな何か?

"> ここ数年、遺伝子解析の技術が進んでいるようで、数限られた古代人の人骨のDNAと、現在の日本人のDNAの比較が行われている。その結果、これまで考えられていたような、日本人の起源を縄文人と弥生人のどちらかとする説ではなく、古墳時代に大挙してやって…

第1511回 この世から肉体は消えても。

2018年、鬼海さんと小栗さんと一緒に、神護寺や亀岡の紅葉を楽しんだ。 "> 人生において、明確に自分の意思や計画だけで始めて、続けていることが、どれだけあるだろうか。 私の場合、何かしらの縁をきっかけにして始めて、やっているうちに天命だという気持…

第1510回 空海の思想の奥義と、かんながらの道

">このたび発行する「かんながらの道」〜日本人の心の成り立ち〜の制作において、空海の思想を、頭の片隅に置いていました。 今日の思想世界の混迷のなかで、日本から生まれた空海の叡智を、再発見する必要があると私は思っているからです。 空海の思想の核…

第1509回 すべてをこの地上の生のうちに見ること。

「 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜」の納品日が、10月26日と決まりました。 ワークショップ の日と重なってしまうので、受け取りのタイミングが問題。 それはともかく、オンラインでの販売サイトを立ち上げました。 詳しくは、次のアドレスからホー…

第1507回 不易流行と、現代都市文明。

風の旅人 第43号より 写真/石元泰博 「シカゴ シカゴ」や「桂離宮」などの写真で知られ、戦後日本写真界でもっとも重要な写真家である石元泰博さんは、長いあいだ五反田に住んでおられ、90歳に近い年齢の頃、カメラを首からぶらさげて山手線に乗って、渋谷…

第1504回 五大の響きと、写真表現。

連日、京都市内をピンホールカメラで撮影し続けている。 京都の観光名所に群がる人たちは、いろいろな会話をかわしながら、人とぶつからないように巧みに左右に進路を変えながら歩いていて、その場にはすごいエネルギーが渦巻いている。 私は、その場に三脚…

第1503回 細江英公さんが、超新星爆発のように生涯を終えられた。

写真/細江英公 風の旅人39号より 「薔薇刑」、「鎌鼬」、「胡蝶の夢」、「抱擁」、「男と女」、自分の書棚にこれらの写真集が置かれている幸運な人は、今、改めて見つめ直しているかもしれない。 戦後日本の写真表現界が生んだ大きな大きな星、細江英公さん…

第1501回 京都の歴史と、京都の現実。

猛暑の東京を歩き回ってピンホール写真を撮り続けていた余韻を引きずったまま、京都に移動してすぐに歩き回った祇園界隈は、2014年から2019年くらい前までの5年間、住んでいたところだった。 その当時、airbnbをやりながら、毎日のように海外からやってくる…

第1500回 かんながらの道

"> 今年発行するつもりの「日本の古層Vol.5 かんながら」は、7月くらいには、ほぼ完成していたのだけれど、今年の猛暑で本なんか読む人はいないんではないかと思い、少し寝かせて、もう少し涼しくなってから印刷すればいいと思っていた。 しかし、8月に入っ…

第1499回 荘子の説く道と、東京での暮らし。

私が東京に暮らし始めたのは、海外放浪から戻ってきた22歳の時で、成田空港に到着してすぐ戸越銀座に向かい、駅のそばの不動産屋で、家賃1万6000円の北向きの4畳半、風呂無し、トイレ共同のアパートを見つけて、その日から入居した。(戸越銀座が都心に近い…

第1498回 天を指す人工物に惹かれる心

東京に何かしらの用事で出かける時は、必ず、ピンホールカメラと三脚を持って、用事の前後、歩き回って撮影するようにしている。 ダラダラと歩くのではなく、撮影する意思を持って歩いていると、暑い中、重い荷物を持っていても、あまり疲れを感じない。 ピ…

第1497回 東京の中に潜む古代性

今思えば、東京の中に潜む古代性や懐かしさに対して、小説作品にまで昇華させていたのは日野啓三さんだった。 1970年代から80年代にかけて、日野さんは半蔵門近くに住み、深夜、皇居周辺を歩き回りながらコンクリートの冷え冷えとした感覚の向こうに、何かし…

第1496回 未来につながる記憶に潜り込む写真

先日、中藤毅彦の新作写真集「「DOWN ON THE STREET」について文章を書いたが、彼は、2018年に「White Noise」という自らの思い入れの強さが特に反映された写真集を作っている。 この本は、彼が尊敬する写真家の川田 喜久治さんの歴史的傑作である『地図』と…