政治

第1473回 現代の世界と、詩への希望。

シュテファン・バチウという亡命詩人について、知っている人はほとんどいないと言っていいかもしれない。 私も、知らなかった。 この詩人のことだけでなく、この詩人が生まれたルーマニアについても特別な関心を持っている人は、ほとんどいない。 だが、私は…

第1462回 情報として表に出てこない日本のリアリティ

日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。 こうした自然風土の国でありながら、山も海も見えない大都市のなかだけで日々暮らしていると、…

第1452回 歴史が動いた時の背後。

久しぶりに天気が回復したので、昨日、以前から気になっていた所を訪れた。 これは、大谷選手の話題とは異なり、かなりマニアックで、古代に興味がない人には退屈な話だけれど、古代の重要鉱物である丹生=辰砂=硫化水銀や、現在、大河ドラマでやっている平…

第1448回 震災国日本の祈りのかたち。

(さらに昨日の続き)。 古来、日本の天皇は政治的権力者というより、この国の祭祀の要に位置しており、この国の祭祀の根幹は、古代の巫女が、自分の存在を打ち捨てる覚悟で神に仕えることで、その身に神を憑依し、神そのものになって人々に恵みをもたらし災…

第1444回 源氏物語と、京都と吉野をつなぐ古代の巫の勢力。

(3月30日と31日に京都で行うワークショップのメモ②) 何度も書いてきたことだけれど、「源氏物語」というのは、11世紀の初頭に突然出てきた創作物ではなく、こういう文学が創造されるまでの歴史的な準備期間があった。 源氏物語の100年前、10世紀の初頭、紀…

第1433回 時代が変わる時。

(3月末に行うワークショップについて) 現代世界には、環境問題をはじめ様々な問題が横たわっているが、それらの問題の根元には、「万物の尺度は人間にあり」という、すべての物事を人間を基準にして測る価値観がある。 この価値観が人間の傲慢さにつながっ…

第1399回 シンギュラリティ(技術的特異点)と、古代のコスモロジー。

昨日と今日は、今年13回目、今年最後のワークショップ セミナー。 ちょうど一昨日、古代のコスモロジー〜日本の古層vol.4〜が納品されたので、ベストなタイミング。 (詳しい内容は、こちらのサイトへ) www.kazetabi.jp 今回の本、これまでの3冊より写真が…

第1387回 人工知能が、積極的に商業的な動機で使われるようになる転機。

人類の将来を左右するかもしれない動きが、世界中の人たちが瞬きしているあいだに行われていたと、後から振り返った時に思うかもしれない。 オープンAIがChatGPTの無料サービスを公開したのは2022年11月30日。まもなく1年になるが、ツイッターで2年、フェイ…

第1384回 イスラエルのイデオロギーと、日本古来の境界意識の違い。

間垣の里(石川県輪島市) イスラエルに限らないが、唯一絶対神の世界は、善悪二元論でもあるので、敵と味方の線引きを明確にしたがる。だから、その境界に、高い壁を築く。ガザを取り囲む壁は、ベルリンの壁よりも高く、その壁は、見方を変えれば、奢り昂っ…

第1381回 神話は史実ではないが、単なる空想の産物でもない。

神話は史実ではないが、単なる空想の産物でもない。かといって、権力者による自己正当化の物語でもない。 神話は、古代における秩序形成のために創られたコスモロジーである。 コスモロジーというのは、自分たちが生きている世界をどう解釈し、その世界でど…

第1344回 神武天皇とは何か(2)

神武天皇とは何か(2) 神武天皇の神話を、第26代継体天皇と重ねて考えるためには、(1)で述べたこと以外に、神武天皇の東征に登場する神々が、継体天皇の時代において何に該当するのかを検討する必要がある。 まず第一に、神武天皇の東征において、最初…

第1343回 神武天皇とは何か(1)

神武天皇が、いつの時代のことなのかについて、これまで色々と複雑な読み解きがなされてきた。 しかし、そもそも日本に文字が流通するようになったのは西暦500年頃からで、それまでは口承で物事が伝えられていたわけであり、弥生時代の始まりとされる紀元前5…

第1339回 文字と人間の精神文化の関係

人間の精神活動は、少しずつ時間をかけて右肩上がりで成長変化を遂げてきたわけではない。 人間は、文字を使っていない時と、文字を使うようになってからでは、精神活動に大きな変化が起きる。そして、文字を使い始めた人間の精神活動には、地域差に関係なく…

第1332回 出雲の国譲りとは何か? (4)

八雲山のスサノオの磐座。八雲山の西麓に鎮座する須賀神社の奥宮。 島根の出雲地方は、大きく分けて三つの領域に分かれる。 一つは、出雲の西側、斐伊川の流域で、もう一つの地域が、鳥取との県境の大山の周辺、日野川の流域。 これらの地域のことは、(1)…

第1330回 出雲の国譲りとは何なのか?(3)

因幡の白兎伝承のある白兎海岸の淤岐ノ島。 神話の中で描かれる「出雲」を、縄文に遡る日本の先住系の人々の文化と捉え、天孫降臨という新参者に「国譲り」という形で実権が奪われたと考えている人がいるが、それは違っている。 長野の諏訪大社は、今日まで…

第1329回 出雲の国譲りとは何なのか? (2)

荒神谷遺跡 「出雲」は、3つのエリアに分かれる。中海の東の米子市から大山周辺と、中海と穴道湖のあいだの松江周辺、そして穴道湖の西で、出雲大社が鎮座する地域。 出雲大社は、近畿で律令体制を築きつつある人たちによって、何かしらのシンボル的な意味…

第1327回 大事なことだから隠す必要がある。

牽牛子塚古墳(斉明天皇陵) 歴史好きの人のなかで、藤原氏の陰謀ということが、よく言われる。古事記や日本書紀なども、藤原不比等の陰謀で藤原氏に都合が良く書き換えられ、都合の悪いことは隠されたと。 梅原猛氏などは、古事記編纂において口承を伝える…

第1313回 ”酒”の神は、”避け”の神。

(京都 梅宮大社) 前回のエントリーで、酒というのは、厄災や悪霊を防ぐ「避け」であると書いた。 神事において清めに酒が用いられるのも同じ理由であり、日本三大酒神神社のうち、酒神といえるのは、京都の梅宮大社の酒解神(大山津見神)だけであるとも書…

第1308回 自由からの逃走

エーリッヒフロムは、ナチズムに傾倒していったドイツのことを深く考察し、「自由からの逃走」という本を書き上げた。 ドイツ国民は何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのか? 一人ひとりは、真面目で、誠実で、決して…

第1307回 古代、東国は、本当に後進地帯だったのか!?

明日の3月4日に行う「現代の古代のコスモロジー」のワークショップセミナー。本日、風邪を引かれた方のキャンセルが出ましたので一名の空きがでました。 今回は、武蔵国(東京とその周辺)を掘り下げます。 一般的な歴史認識だと、日本の歴史は近畿を中心に…

第1301回 500年を区切りに起きる人類のコスモロジーの転換。

そもそも私は、古代のことについて、どの時代に何が起きたとか、誰がどうした、これこそが真実であるという類の、過ぎたことに対する一つの正しい答だけを求める原理的思考で、古代のフィールドワークを行なっているのではない。 蘇我馬子や藤原不比等の陰謀…

第1288回 時代ごとに変わる人間のコスモロジーと、歴史との向き合い方

今を生きる人にとって、「歴史」が、自分に関係ないもの、もしくは単なる知的好奇心の対象(趣味)、および大河ドラマ鑑賞などの娯楽になってしまったのは、歴史と向き合う時に、人間のコスモロジーのことが、あまり考えられていないからではないかと思う。 …

第1287回 古墳の形と、国譲り神話と、鬼退治の関係。

第1285回のブログで、前方後方墳と前方後円墳の違いを、弥生時代の「方形周溝墓」と「円形周溝墓」の違いの延長と捉えて説明した。一人の王が軍事や祭祀など全権を担う統治システムと、複数人物による分権統治システムの違いではないかという仮説を立てて。 …

第1286回 日本の近代化を促進させたもの

10年以上前、風の旅人編集部で働いていた中山慶が、現在、地域社会活性化と異文化交流を軸にした仕事を、京都の京北地方を拠点に行っている。 日本各地で様々な地域社会活性化の取り組みが行われているが、中山慶が行っているプロジェクトで私が興味深く感じ…

第1285回 前方後円墳と前方後方墳の違いについて

(愛知から信州までの塩の道、三州街道沿いの月瀬の大杉。長野県最大の巨木で、推定樹齢は1500年とも1800年ともいわれる。つまり、古墳出現期から、この街道沿いで世の移り変わりを見てきたことになる。) 新潟の糸魚川からは千国街道、愛知県の岡崎からは三…

第1282回 縄文の記憶が重ねられた諏訪の祭祀

諏訪大社 前宮 御室社。ここに半地下式の土室(つちむろ)が造られ、金刺氏で現人神とされる大祝と、洩矢氏の神長官以下の神官が参篭し、蛇形の御体と称する大小のミシャグジ神とともに「穴巣始」といって、冬ごもりをした。旧暦12月22日に「御室入り」をし…

第1261回 シベリア収容所を通して見るロシアとウクライナの現実

昨日、新宿のオリンパスギャラリーで行われている野町和嘉さんの「シベリア収容所」の写真展において、野町さんとトークをさせていただいた。 野町さんは、報道写真を撮っているわけではないので政治的な話になるのは嫌そうだったが、私なりに気になることが…

第1240回 退行していく社会の行く末。

ちょうど「愛国」ということを考えていた時に、安倍元首相が銃撃されたというニュースが飛び込んできた。 アメリカやインドではなく、現代の平和ボケと言われるこの日本で、選挙運動中にこういう事件が起きるなどと、いったい誰が想像できただろう。 15年以…

第1233回 古代から人間は同じことを繰り返している。

ロシアとウクライナの戦争が、このまま続けば世界はどうなってしまうのか? 単純化してしまうことに慎重でなければならないと思うけれど、こうした戦争は、けっきょくのところ男性原理が突出した形で現れた結果ではないだろうか。 強い方が偉くて立派だと思…

第1231回 一元化の思考を知の巨人と持ち上げる知の衰退

web.kawade.co.jp ユヴァル・ノア・ハラリ氏のことを、現代における「知の巨人」と持ち上げる論調が多いのだけれど、ベストセラーになっている彼の「サピエンス全史」にしても、とくに新しい視点はなくて、他の誰かが書いているようなことを(膨大なウィキペ…