2023-01-01から1年間の記事一覧
因幡の白兎伝承のある白兎海岸の淤岐ノ島。 神話の中で描かれる「出雲」を、縄文に遡る日本の先住系の人々の文化と捉え、天孫降臨という新参者に「国譲り」という形で実権が奪われたと考えている人がいるが、それは違っている。 長野の諏訪大社は、今日まで…
荒神谷遺跡 「出雲」は、3つのエリアに分かれる。中海の東の米子市から大山周辺と、中海と穴道湖のあいだの松江周辺、そして穴道湖の西で、出雲大社が鎮座する地域。 出雲大社は、近畿で律令体制を築きつつある人たちによって、何かしらのシンボル的な意味…
出雲大社の隣に、摂社の命主社(いのちのぬしのやしろ)がある。巨岩の前に建てられており、古代の磐座が聖域だったと考えられる。社の前には、推定樹齢1000年といわれるムク(椋)の巨木がある。1665年、命主社の裏の大石を石材として切り出したところ、下…
牽牛子塚古墳(斉明天皇陵) 歴史好きの人のなかで、藤原氏の陰謀ということが、よく言われる。古事記や日本書紀なども、藤原不比等の陰謀で藤原氏に都合が良く書き換えられ、都合の悪いことは隠されたと。 梅原猛氏などは、古事記編纂において口承を伝える…
京都は日本の歴史文化の宝庫とされていますが、観光地の大半は豊臣秀吉以降の時代に作られたものが多く、多くの人が古都の街並みだと勘違いしている祇園は明治維新以降のものです。 京都のなかで平安京遷都の1200年前より古い聖域は、京都の西側の桂川沿いに…
岐阜県瑞浪市の鬼岩。ここは木曽川支流の可児川の源流に近く、巨岩群の中を、清冽な水が勢いよく流れている。 この地は日本有数のラジウム温泉の場所で、すぐ近くに、日本最大のウラン鉱脈がある。 鬼岩から5kmのところには、高レベル放射性廃棄物の処分の…
岐阜県中津川の苗木城あたりは、日本三大ペグマタイトの地、つまり宝石の産地。 ペグマタイトは、主に花崗岩地帯に生じるが、中津川は、花崗岩の奇岩がゴロゴロしている。 巨石とか大樹は、古くから信仰の対象だが、神籬(ひもろぎ)など神を迎えるための依…
写真表現に深く関わるところで仕事をしてきた一人として、写真について評論や解説をしている、とりあえずプロの写真家や言論関係の人の言葉で、「写真のこと、まったくわかっていない」と嘆きたくなる言葉がある。 それは、写真を語る時に、たとえばモノクロ…
CHAT GPTを子供に使わせるべきかどうか? とか、大学生が、これを使って論文を書くようになってしまうのではないか、とか、どうでもいいような議論がなされている。 仮に大学生が、CHAT GPTで論文を書いたとしても、問題になってくるのは、それを評価する側…
スティーブ・ジョブスの日本文化への関心はよく知られており、彼は、来日のたびに、京都の苔寺(西芳寺)を訪れていた。 スティーブ・ジョブスは、次のように言っている。 「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)をもとに、テクノロジーを構築していくこ…
東京都写真美術館で深瀬昌久展が開かれている。 深瀬昌久という写真家は、世間ではあまり知られていないが、「写真」という表現行為と、「視ること」の関係を深く考えるうえで、欠かせない写真家だと思う。 人は、視るという行為について、とくに深く考えて…
昨日は、船尾修さんの土門拳賞の授賞式で、協賛企業や来賓の人のスピーチの後に、他の人があまり認識していない彼のこれまでの活動の軌跡についてスピーチをするのが私の役割だと船尾さんから言われていて、自分もそのつもりだった。 しかし、選考委員の大石…
朝早くから、船尾修さんの「満州国の近代建築遺産」と、新田樹さんの「Sakhalin」の写真集を見ていて、心洗われるような気持ちになった。 船尾さんは土門拳賞、新田さんは木村伊兵衛賞と、長い歴史のある写真界の賞を今年度受賞したわけだが、この二つの賞の…
今年に入ってから、現代と古代のコスモロジーというワークショップセミナーを行っており、次の5回目を4月22日(土)と23日(日)で計画している。 https://www.kazetabi.jp/%E9%A2%A8%E5%A4%A9%E5%A1%BE-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%…
前回、今年度の写真界において、新田樹さんが木村伊兵衛賞と林忠彦賞のダブル受賞をしたことを書いたが、土門拳賞は、船尾修さんが受賞した。 本人にも伝えたけれど、船尾さんの受賞は予想通りだった。そもそも私は、数年前の「フィリピン残留日本人」が土門…
このたび、写真家の新田樹さんが、「Sakhalin」という作品で、林忠彦賞と木村伊兵衛賞のダブル受賞をされた。 写真界の賞で、同じ年のダブル受賞は珍しい。(これまでは、できるだけ違う人を選ぶ、みたいなおかしな風習があった)。 林忠彦賞は予測できたが…
オオヤマツミ神社(愛媛県今治市) 古代、文字のなかった時代、「トポス」がとても重要だった。 トポスというのは、古代ギリシャ語で「場所」を意味するのだが、足場であり拠点であり、思考を進めるうえでの手掛かり、論点、定石といったものを含む。 つまり…
(京都 梅宮大社) 前回のエントリーで、酒というのは、厄災や悪霊を防ぐ「避け」であると書いた。 神事において清めに酒が用いられるのも同じ理由であり、日本三大酒神神社のうち、酒神といえるのは、京都の梅宮大社の酒解神(大山津見神)だけであるとも書…
梅宮大社。酒解神の聖域。 一つのことを知るためには、その背後の複雑なつながりのことも知らなければならない。 他者を知ることも、歴史を知ることも同じであり、だから、どうしても説明が長くなってしまう。簡潔な答を求めることが癖になっている人は、そ…
AI(人工知能)を使った文章生成ソフトのChat Gtpは、思考しているように見えて、実は、何も考えていないそうだ。 このソフトのカラクリは、一つの言葉の次にどの言葉がくるべきなのか、確率的に高いものを選び取る機能にあるらしい。 この半年間、Chat Gtp…
大江健三郎氏が亡くなった。 ノーベル文学賞作家の死なので、各界から、品のいい賞賛や哀悼のメッセージが色々と発せられるだろうが、私の人生のなかで、この人の存在は捻れていて、とても複雑である。 私は、20歳までは彼の熱心な読者だった。『飼育』と…
「The creation vol.2 天と地の曼荼羅」が、まもなく完成します。 昨年発行したVol.1では、富士山の麓の生物たちのミクロコスモスをご紹介しましたが、今回の Vol.2では、「富士山」そのものの多彩で深遠な表情を、曼荼羅をテーマに構成しました。 詳細、お…
エーリッヒフロムは、ナチズムに傾倒していったドイツのことを深く考察し、「自由からの逃走」という本を書き上げた。 ドイツ国民は何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのか? 一人ひとりは、真面目で、誠実で、決して…
明日の3月4日に行う「現代の古代のコスモロジー」のワークショップセミナー。本日、風邪を引かれた方のキャンセルが出ましたので一名の空きがでました。 今回は、武蔵国(東京とその周辺)を掘り下げます。 一般的な歴史認識だと、日本の歴史は近畿を中心に…
「写真集制作のためのポートフォリオレビュー」というのを始めたのだけれど、写真表現を行っている人で、「文学には興味がない」とか、「自分は言葉が苦手だから、言葉にならないことを写真で表現する」などと軽々しく言う人がいるけれど、果たしてそれでい…
若い友人に返答するための文章を書いていたら、「コスモロジー」というテーマで、本作りやワークショップを行っている自分の潜在意識が浮かび上がってきた。 「Sacred world」の本作りにおいて、私は、古代史研究をやっているつもりはないし、写真においても…
現在、私が行っているワークショップセミナー「現代と古代のコスモロジー」でも、重要な鍵を握るテーマなのだが、私は、ブリコラージュ型の思考や仕事と、エンジニアリング型の思考や仕事について意識的に話をしている。去年の11月に行ったスタンフォードの…
私は、ここ数年、20年前の印刷技術革命よりさらに進化した新しい印刷方法によって本を作り続けていて、その方法も公開し、友人の写真家にも伝えているのだけれど、彼らの腰は重い。 写真業界に比べて新しいことに柔軟なのがアニメの人たちで、彼らはこの新し…
京都の私の家にはテレビアンテナがないのでテレビが見られないのだけれど、昨日、近くの温泉に行って、サウナに備え付けのテレビニュースを見ていたら、次の日銀総裁、植田和男氏のことが伝えられていて、植田氏の叔父さんがインタビューに出て、「ラジオ英…
そもそも私は、古代のことについて、どの時代に何が起きたとか、誰がどうした、これこそが真実であるという類の、過ぎたことに対する一つの正しい答だけを求める原理的思考で、古代のフィールドワークを行なっているのではない。 蘇我馬子や藤原不比等の陰謀…