第1378回 京都の水と地質。

京都最大の滝、空也の滝。愛宕山の麓

 

このたび、定期的に行っているワークショップセミナーとは別に、オーダーメイドの依頼があったので、その内容に応じたフィールドワークとセミナーを行った。

 ガラスメーカーの方達で、日本および世界各地の砂を使ってその土地ならではのガラスを作る活動を主宰しておられるようで、川砂を追いかける中で水系にも興味が出て、今回、京都の水系について深く知りたいとのことだった。

 「砂」が関係しているので、水といっても水利とか水運ということではなく、地質が重要になってくる。

 京都は伏見の酒造りなどを通して、水質が良いことは知られている。

 松尾大社梅宮大社は、日本三大酒神社のうちの二つだ。もう一つは、奈良の三輪山のところの大神神社

 京都盆地は、鴨川や桂川が運んでくる土砂でできた扇状地だが、その下は水を通さない岩盤が広がっており、そこに水が溜まり、京都盆地の下には琵琶湖の水量と同じくらいの水が溜まっているとされる。

 単なる地下水が名水になるわけではなく、やはり、地質の濾過作用が重要だから、京都盆地の地質にどういう特性があるかが関わってくる。

 京都というのは、実は特殊な地質帯で、東側の比叡山から大文字山にかけては花崗岩地帯だ。地下にはウラン鉱脈があるのだろう、関西随一のラジウム温泉も湧く。白川温泉郷とか大原の温泉がそう。

 比叡山大文字山のあいだは、お盆のよう

に削られているが、花崗岩は水の浸食に弱いために、そうなっている。ちょうど、そのあたりが白川の源流で、白川は花崗岩を削った白い砂を運び、祇園を流れて鴨川と合流する。中世には、この白い砂が、銀閣寺などの石庭に使われた。

 京都の東の比叡山花崗岩は火成岩で、マグマが地下深くて冷えて固まったものだが、京都の西にそびえる愛宕山一帯は、太平洋の底に堆積していた地層であり、愛宕山のてっぺんの突起(愛宕神社が鎮座している)は、浸食されにくい硬いチャートだ。

愛宕山の麓、桂川清滝川の合流点

 また高山寺神護寺のある高雄あたりは、世界最高品質の砥石の産地で、超古代、フィリピンあたりの太平洋の海底に堆積した泥岩(微生物を多く含む)で形成されている。

 愛宕山比叡山のあいだの沢山あたりもチャートである。

 沢山のところには菩提の滝があって、ここの滝壺の砂は、北山杉を磨くのに使われる。その理由は、この砂が、非常に硬いからだ。

沢山の近くの菩提の滝。この滝壺の砂が、北山杉を磨く時に使われる。

 チャートは、太平洋の海底3000メートルとか、かなり深いところでプランクトンの死骸が水圧で化石化したもので、カッターナイフで傷がつかないほど硬い。

 沢山や高雄あたりの地層は川に削られ、清滝川に流され、清滝側は保津峡桂川と合流し、京都盆地へと流れる。

 鴨川の方は、源流が雲ヶ畑だが、鞍馬川などとも合流する。鞍馬周辺は、チャートと、太平洋の海底火山でできた玄武岩。そして、比叡山周辺の花崗岩がくわわる。

 上に述べた地質は、日本列島ができた1500万年前より遥かに古い時代に形成されたもので、高雄周辺の世界でも最高品質の砥石は、たしか2〜4億年前くらいの岩石だ。

 さらに、それらの古い岩石は、大陸に押し付けられる前に、ユーラシアプレートの下に巻き込まれ、高熱で変成して焼き固められて、ものすごく硬くなっている。

 私は、あちこちで石を拾ってくるのが好きで、家の中や庭には、各地の石がゴロゴロしている。

 石は地球の歴史が凝縮している。これは1億年くらい前とか、そう思いながら手で触れるだけでも、感慨深いものがある。

 京都の歴史は、寺社の建築物だけにあるのではなく、私たちが立っている地面の下にも秘められている。

 古代人も、私が感じているように感慨深い感覚を持っていたはずであり、たとえば、飛鳥の石舞台古墳と同じくらいの規模の石室を持つ蛇塚古墳は、硬いチャートで石室が作られている。石舞台古墳花崗岩よりも、加工が難しい。

 蛇塚古墳は、わりと桂川に近いところに築かれているので、桂川と合流する清滝川沿いの愛宕山や沢山方面から切り出されたのだろう。

蛇塚古墳 チャートで作られた石室。

 石だけでなく、平安京が築かれた時の材木は、桂川の源流近くの桂川の支流である片波川源流域から調達しており、今でも、樹齢1000年の杉などを見ることができる。

片波川源流域。平安京が築かれた時は、ここから材木が調達され、水運で運ばれた。

 こういうマニアックな内容に特化することは、定期的なワークショップでは、集まり人のニーズがそれぞれなので難しいが、同じ関心を持つ人だけであれば可能だ。 

 だから一台の車で移動できる4人くらいまでで、そういう希望があれば、応えていこうと思う。

 京都であれば、西は亀岡、南は大山崎、東は山科くらいまで可能です。場合によっては、近江も、かなりディープなことはできます。

 同じ興味を持つ仲間がいれば、内容などご要望に応じて、アレンジしますので、お問い合わせください。

 仕事としてというより、私個人としても、時おりマニアックなものは面白い。

 定期的にやっているワークショップも、かなりマニアックかもしれないけれど。

 

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ワークショップセミナーの第12回目を、 11月11日(土)、11月12日(日)の両日(それぞれ1日で完結)、京都にて、午後12時半〜午後5時にかけて行います。 

 詳細、ご参加のお申し込みは、こちらをご覧ください。 

https://www.kazetabi.jp/%E9%A2%A8%E5%A4%A9%E5%A1%BE-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97-%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC/

両日とも、10名限定。

場所:かぜたび舎(京都)

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