2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧
安井仲治 「馬と少女」 安井仲治の写真について、2回にわたって書いたきたが、不思議なことに安井仲治は、38年の短い生涯で、近代写真の最初から、21世紀芸術として写真表現が存続するための唯一の在り方まで、全てをやりきって いる。 「21世紀芸術として…
日本が太平洋戦争に突入する直前、安井は、驚くべき写真を創出する。 それは、「磁力の表情」と題されたシリーズで、鉄粉と磁石で作り出した磁場の形を浮かび上がらせたものだ。 このイメージは、私が編集制作を行っていたグラフィック雑誌『風の旅人』の第3…
東京都国立近代美術館で展覧会が行われている中平卓馬の写真が、対象を観るというより、強い自我と呼応させるように対象に手をくわえているのに対して、虚心の目に徹し切って世界の実相を写真で捉えようとした安井仲治の展覧会が、東京都ステーションギャラ…
「円形の貯水槽の上に寝て目を閉じる。 宇宙に包まれるという感覚ではなく、宇宙を包み込むという感覚、そのような一瞬は来るのだろうか。 多分、その時は、生きることの不安からも死の恐怖からも解放されるに違いない。 瞼に柔らかな光を感じながら漠然とそ…
今年の京都の桜の開花は、ウェザーマップによると平年より早く、3月21日に開花、3月30日に満開になると予想されているが、そのタイミングとなる3月30日(土)と31日(日)に、京都でワークショップセミナーを開催します。 当日は、嵐山の渡月橋あたりに集合…
ビクトル・エリセの最新作の「瞳をとじて」を観て思うところがあったので、昨日の夜、彼の処女作である「ミツバチのささやき」を久しぶりに観てきた。 素晴らしく心に染み込む映画ではあるのだけれど、この映画の魅力は、無垢の少女のアナの眼差しに引き込ま…
昨日、久しぶりに新宿歌舞伎町まで足を伸ばし、ビクトル・エリセの31年ぶりの新作、「瞳をとじて」を観てきた。 同じように20代の頃に観ていたヴィムヴェンダースの新作の「perfect days」よりは、映画の時間の中に潜入することができた。 「perfect days…
第15回ワークショップセミナー(東京)を終えた。 この場で最初に私が話をしているのは、エンジニアリングとブリコラージュの話。 これは、20世紀の最高の知性、文化人類学者のレヴィ=ストロースが唱えていることで、近代文明の中で生きている私たちは、エ…
今年制作する予定の「日本の古層VOL.5」は、カラー写真を使って「もののあはれ」をテーマに深く掘り下げるつもりで、昨年の末に能登半島を訪れて取材した。これらのピンホール写真は、カラーで撮っていた。 しかし、この取材後、心にひっかるものがあって、…
風の旅人の第50号の巻末で、次号の告知として「もののあはれ」と示したものの、けっきょく、雑誌として作ることができなかった。 「もののあはれ」について、「しみじみとした情緒や気分」とか、「形あるのは、いずれ姿を消す」といった程度で説明されること…
石山寺。紫式部が、源氏物語を書き始めた場所とされる。 NHK大河ドラマの「紫式部」は、藤原道長との恋愛が軸になっているそうで、その恋愛が「源氏物語」の着想につながっているという設定のようだが、本当に、そういう安易な解釈でいいのだろうか。 光源氏…
源氏物語の後半の舞台は宇治。宇治平等院は、藤原道長の息子、藤原頼通が、末法の時代を反映させて、別荘を寺に改めた。 大河ドラマの「紫式部」は、セクシー&バイオレンス路線なのだそうだ。そうしないと視聴率を稼げないのだそう。 テレビ番組については…
昨日書いた友人のことの続きだけれど、いろいろな友人がいても、その奥さんの食事を何十回もいただいたというのは、そうあることではない。 この20年、私が富士山に通うたびに、そして富士山の雄大な姿が目の前に広がる彼の家で何日も連泊する時など、朝、昼…
人によって色々な生き方があるし、何をもって自分の人生を満足なものとするか、人それぞれだ。 友人の奥さんが肺癌で亡くなったと連絡があった。正月に会った時、咳の音がよくなかったので、覚悟はしていた。五年前に癌だとわかったものの、去年の春先までは…