風土

第1484回 火山と日本人の精神世界(2)

火山の多い日本のなかでも、特に人々に知られた山としては、九州の桜島、阿蘇山、雲仙岳、そして日本の東西の境目のフォッサマグナに聳える富士山、浅間山、八ヶ岳といったところだろうか。 興味深いことに、この西に三つ、東に三つの六つの山は、対になるよ…

第1483回 火山と日本人の精神世界(1)

39口の銅鐸が発見された加茂岩倉遺跡(島根県雲南市) 日本が世界有数の火山国であることは日本人なら誰でも知っている。実際に世界の活火山の7%が日本にあると言われるが、そのことが日本人の精神に与えてきた影響を、東京など平野部に住んでいる現代人は…

第1477回 迦微(かみ)に出会うところ。

奥山の岩に苔むし 畏(かしこ)けど思ふ心を いかにかもせむ」 よみ人知らず(万葉集 日本の国歌の「君が代」においても、「苔のむすまで」という言葉があるが、むす」は、「産す」であり、万物を生み出す「かみ」の存在が、そこに意識されている。 なので、こ…

第1476回 君が代の歌の本来の意味。 日本人の心がどう作られてきたか(4) 

いわがみ神社(京都府舞鶴市) 三回連続で「日本人の心がどう作られてきたのか」を一挙に書いた。 これが、その最後のまとめになるが、「君が代」という国家のことだ。 日本人以外の海外の人たちは、堂々と国家を歌っているのに、日本人は、国家に対して、ど…

第1475回 日本人の心がどう作られてきたか(続)。縄文と渡来系文化のあいだ。

三日前に、中世の「いろは歌」のこと、二日前に、万葉の時代に遡って書いてきたけれど、今日は、おそらく縄文時代に遡るスピリット(おそらくというのは、縄文時代というのは、私たちに染み付いている思考特性の向こうの世界なので、そう簡単にわかるもので…

第1472回 日本文化に宿る自然体という美意識。

西欧の美というのは、例えばベルサイユ宮殿の庭園のように、それじたいが、「これこそが美だ!」と主張してくる。 それに対して、日本が長い時間をかけて洗練させてきた美は、例えば苔寺のように、それを観る人の心に自由の余地を残す。 ただ単に、綺麗とか…

第1466回 闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

嵐山から嵯峨野は、観光客で溢れかえっているけれど、清涼寺あたりまで来ると、それほどでもない。 私が、京都に移住することになったきっかけの一つが、11年前、風の旅人の第47号で、染色家の志村ふくみさんのロングインタビューのために、この清涼寺のすぐ…

第1462回 情報として表に出てこない日本のリアリティ

日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。 こうした自然風土の国でありながら、山も海も見えない大都市のなかだけで日々暮らしていると、…

第1460回 日本人の潜在的な心の在り方と、海人とのつながり。

古代に対する関心の持ち方は人それぞれだが、私は、卑弥呼のクニがどこにあったかということよりも、日本人の潜在的な心の在り方に関心がある。 日本の縄文時代は10000年も続いており、明らかに大陸の影響を受けたと思われる弥生時代以降の歴史は、その4分の…

第1457回 地震のサイクルと、日本社会のサイクル。

昨夜遅く、愛媛、高知で震度6弱の地震が発生した。これは本当に怖い。南海トラフの前の、不気味な足音のような気がしてならない。 台湾から宮崎、そして四国と、最近、立て続けに、中央構造線の南側の地震が続いている。 1995年の神戸での大地震以来、北海…

第1454回 古代、聖から邪に転換した竜蛇神。

数日前に、近畿の真ん中の縦長の盆地の北と南の端にあたる吉野と京都を結ぶ丹生の女神のことについて書いたが、今度は、その京都を軸にした東と西の関係について考えてみたい。 吉野三山に鎮座し、蛇神の天津羽羽神を祀る波宝神社の真北に位置する上賀茂神社…

第1452回 歴史が動いた時の背後。

久しぶりに天気が回復したので、昨日、以前から気になっていた所を訪れた。 これは、大谷選手の話題とは異なり、かなりマニアックで、古代に興味がない人には退屈な話だけれど、古代の重要鉱物である丹生=辰砂=硫化水銀や、現在、大河ドラマでやっている平…

第1450回 縄文時代に遡る巫女神が、時代を超えて伝えていること。

御前崎。(静岡県御前崎市)。 南海・東海大地震が起きた場合、もっともダメージが懸念される原子力発電所である浜岡原発は、太平洋に突き出た静岡県御前崎にある。 この場所は、四国から近畿にかけての中央構造線を東に伸ばして、伊豆下田の伊古奈比咩命神…

第1449回 大震災と、この国の祈り。

南海・東海大地震が起きた場合、もっともダメージが懸念される原子力発電所が、静岡の浜岡原発で、さらに、プルサーマル発電を継続中(2024年7月終了の予定)の愛媛県の伊方原発も不気味だ。 日本の原発は、岬や半島など、古代の聖域に建設されているものが…

第1428回 ”いのち”のさだめと、もののあはれ。

今年の京都の桜の開花は、ウェザーマップによると平年より早く、3月21日に開花、3月30日に満開になると予想されているが、そのタイミングとなる3月30日(土)と31日(日)に、京都でワークショップセミナーを開催します。 当日は、嵐山の渡月橋あたりに集合…

第1425回 「日本文明が与えることができる優れた教訓のかずかず」 レヴィ=ストロース 

第15回ワークショップセミナー(東京)を終えた。 この場で最初に私が話をしているのは、エンジニアリングとブリコラージュの話。 これは、20世紀の最高の知性、文化人類学者のレヴィ=ストロースが唱えていることで、近代文明の中で生きている私たちは、エ…

第1424回 半島は、なぜ聖域なのか。

今年制作する予定の「日本の古層VOL.5」は、カラー写真を使って「もののあはれ」をテーマに深く掘り下げるつもりで、昨年の末に能登半島を訪れて取材した。これらのピンホール写真は、カラーで撮っていた。 しかし、この取材後、心にひっかるものがあって、…

第1418回 原始のエッセンスが持つ普遍性。

嬉しい頼りが地球の裏側から届いた。 アフリカのルワンダで、「イミゴンゴ」という伝統アートの調査活動と、普及のための展示や販売を行っている加藤雅子さんが、このたび私が制作した「始原のコスモロジー」を、現地でイミゴンゴの制作を行っている人々に見…

1417回 今という永遠の中に在る縄文のコスモロジー

縄文人は、同じような生活を10,000年続けていたとされ、さらに彼らの居住地は、ずっと同じで、竪穴式住居が、前の世代のものの上に積み重ねられるように作られているところが多い。 つまり、他の地域に移る必要がないほど、暮らしが安定していたということに…

第1414回 源氏物語と、宇治の謎。

宇治の宇治橋と、伊勢の宇治橋は、冬至のラインで結ばれており、冬至の日、伊勢の宇治橋の真ん中から、太陽が上るが、宇治と同じく橋姫を祀る伊勢の饗土橋姫神社の位置は、この冬至のライン上にある。 ネットニュースを流し読みしていると、HNK大河ドラマへ…

第1413回 写真に気配が写るとは?

私がピンホールカメラで撮っている写真において、”気配”のことについて質問されることがよくある。 「磐座」や「御神木」「滝」などの聖域に立った時、古代から大切に守り継がれてきた何か、もしくは秘められた先人達の声などを嗅ぎ取ろうとして撮影している…

第1411回 大震災と、細い運命の糸でつながる生命。

この写真は、能登の大地震の後に写真家の渋谷敦志さんが撮った輪島市の白米千枚田。 美しいというより、儚くて切ない風景。 昨年の11月末、輪島から珠洲に向かう途中、20年ぶりに立ち寄った時は、土と潮の香りが満ちていた。 何の説明もなくこの写真を見たら…

第1409回 今こそ知るべき源氏物語に秘められた真相(2)

昨日、紫式部を主人公にしたNHK「大河ドラマの」への違和感から、源氏物語が書かれた背景について長文を投稿したが、本題はここからである。 さらに、2日前の投稿において、「”もののあはれ”という日本のコスモロジーは、古代ギリシャでは無知の知、古代イン…

第1407回 能登半島の記憶と、人生の転機。

今回の地震で津波の被害が大きかった珠洲市の聖域の岬。古代は、日本海交通の要だった。 このたび作った「始原のコスモロジー」には、能登半島の写真が奥付けを含めて5点入っている。 11月下旬に京都から東京に移動する際、ふと思い立って能登を一周した。…

第1406回 最果ての能登は、人生の折り返し地点でもあった。

石川県能登町の真脇遺跡。縄文時代の環状木柱列。 東京から京都に戻ってきた。一ヶ月少々前、京都から東京に移動する時、前々日にふと思い立って、能登半島を一周することを決めた。 2023年中に発行するつもりだった「始原のコスモロジー」で使用する写真の…

第1405回 日本列島の上に生きることの意味

高瀬宮(石川県志賀町) 昨日の大晦日、フェイスブックに、次のような記事を書いて、いつも通のように、翌日の今日、ブログに同じ記事をアップしようと思っていたが、能登の大地震が起きて、戸惑っている。 昨日書いた記事は、このようなものだった。 ______…

第1399回 シンギュラリティ(技術的特異点)と、古代のコスモロジー。

昨日と今日は、今年13回目、今年最後のワークショップ セミナー。 ちょうど一昨日、古代のコスモロジー〜日本の古層vol.4〜が納品されたので、ベストなタイミング。 (詳しい内容は、こちらのサイトへ) www.kazetabi.jp 今回の本、これまでの3冊より写真が…

第1398回 この時代における写真家の存在意義

昨日、私が選考委員をつとめさせていただいている笹本恒子賞の受賞式が行われ、久しぶりに、受賞者の高橋宣之さんにお会いしました。 今回の受賞に合わせて、アイデムフォトギャラリー「シリウス」(東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2 F)において、…

第1394回 誌面を通じた旅体験。

私が、風の旅人を作っていた時、潜在意識に働きかけるビジュアルをリード役とし、その後に言葉によって意識化を深めるという読まれ方を想定していた。 本を買った人は、とりあえずビジュアルの全体に目を通して何らかのイメージを掴む。文章は、その後、少し…

第1393回 日本の大地と聖域について

日本は山国であることを誰でも知っているし、東京23区に住んでいる人以外は、日々、それを実感している。 しかし、なぜ日本が山国なのかという理由を考えることは、あまりない。 一般的には、日本が火山国だからと思っている人が多いのだが、たとえば近畿に…