2022-01-01から1年間の記事一覧

第1288回 時代ごとに変わる人間のコスモロジーと、歴史との向き合い方

今を生きる人にとって、「歴史」が、自分に関係ないもの、もしくは単なる知的好奇心の対象(趣味)、および大河ドラマ鑑賞などの娯楽になってしまったのは、歴史と向き合う時に、人間のコスモロジーのことが、あまり考えられていないからではないかと思う。 …

第1287回 古墳の形と、国譲り神話と、鬼退治の関係。

第1285回のブログで、前方後方墳と前方後円墳の違いを、弥生時代の「方形周溝墓」と「円形周溝墓」の違いの延長と捉えて説明した。一人の王が軍事や祭祀など全権を担う統治システムと、複数人物による分権統治システムの違いではないかという仮説を立てて。 …

第1286回 日本の近代化を促進させたもの

10年以上前、風の旅人編集部で働いていた中山慶が、現在、地域社会活性化と異文化交流を軸にした仕事を、京都の京北地方を拠点に行っている。 日本各地で様々な地域社会活性化の取り組みが行われているが、中山慶が行っているプロジェクトで私が興味深く感じ…

第1285回 前方後円墳と前方後方墳の違いについて

(愛知から信州までの塩の道、三州街道沿いの月瀬の大杉。長野県最大の巨木で、推定樹齢は1500年とも1800年ともいわれる。つまり、古墳出現期から、この街道沿いで世の移り変わりを見てきたことになる。) 新潟の糸魚川からは千国街道、愛知県の岡崎からは三…

第1284回 日本語の柔軟性と、議論の深め方について

昨日、ワールドカップを見ようと思ってamebaテレビをつけたら、「議論」についての議論を行う討論番組があった。 この番組の中の議論は、それぞれが知っていることをアウトプットする状況説明と状況分析でしかないのだが、一般的に議論が合意形成を目指すも…

第1283回 諏訪と京都の向日山をつなぐ古代のコスモロジー

昨日、諏訪のことについて書いたところ、諏訪のミシャクジ神についてもっと掘り下げて欲しいという意見があった。 諏訪は、昨日も書いたように、特殊な事情によって縄文に遡る祭祀を融合という形で引き継いでいるわけで、諏訪に伝わるミシャクジ神は、縄文に…

第1282回 縄文の記憶が重ねられた諏訪の祭祀

諏訪大社 前宮 御室社。ここに半地下式の土室(つちむろ)が造られ、金刺氏で現人神とされる大祝と、洩矢氏の神長官以下の神官が参篭し、蛇形の御体と称する大小のミシャグジ神とともに「穴巣始」といって、冬ごもりをした。旧暦12月22日に「御室入り」をし…

第1281回 伊勢神宮という聖なる舞台装置

伊勢神宮 宇治橋 伊勢神宮 五十鈴川 先ほどのタイムラインの続きだが、伊勢神宮を訪れると、”つくられた聖域”という気がしてならない。 伊勢神宮は、おそらく、律令制の始まりに、聖なる舞台装置として作られたのではないかと思うのだ。 もちろん、そうだと…

第1280回 10,000年前から引き継がれている精神的イメージ

日本最古の土偶が出土した粥見井尻遺跡。背後に見えるのは烏山。 ここは、中央構造線上にある。 日本の歴史を、改めて考察し、捉え直すことが必要だと思う。 そして、その際には、最新の考古学的成果の上に、もっと地理や地勢のことを踏まえる必要があると思…

第1279回 たった一人の大学の名誉教授の問題ではなくて

「たった1人の「子供の声がうるさい」という意見で廃止になった長野市内の公園。市に対して意見を言っていたのは大学の名誉教授だったことが週刊ポストの取材で明らかになった。その1人の声で、子供の遊び場である公園を閉鎖した市の対応には疑問の声があが…

第1278回 In all chaos there is a cosmos,in all disorder a secret order.

4年前に私が撮ったピンホール写真。 (最近、井津建郎さんが撮った写真) 井津建郎さんにも許可をいただいて、井津さんが撮った写真と、私が撮ったピンホール写真を並べてアップしました。 ここにアップしている2枚の写真は、奈良の柳生の天石立神社ですが、…

第1277回 ドイツ対日本の試合で、日本チームの修正力に感心しきり。

ワールドカップが始まっていることや、日本対ドイツ戦があるということも、まるで意識しておらず、たまたま映画を見ようと思ってプライムビデオをつけたら、冒頭に試合放映の告知があったので観ただけなのだが、ドイツ対日本の試合は面白かった。 歴史的勝利…

第1276回 量子コンピューターの時代の思考特性とは?

花背の三本杉。(京都府京都市左京区) 3日前のイベントの後の懇親会で、「花背(京都市左京区)の三本杉のところに白鷹竜王の碑がありますが、あれは何ですか?」という質問を受けた。この偶発的で、ローカルで、普通の人にとってはどうでもよい問いから、…

第1275回 人類の時空に対する意識と、歴史のサイクル。

小樽の忍路環状列石。 11/21(月)の19:00-21:00 京都のIMPACT HUB KYOTO https://kyoto.impacthub.net/ で行うトークにおいて、どういう切り口でやろうかと考えているのだけれど、今回は、歴史というより時空の話をしようと思う。 われわれホモ・サピエンス…

第1274回 学校教育の問題と、教育に携わる教師の問題 

北海道の中学校が実施した修学旅行で、全ての生徒に配る必要がある「全国旅行支援」のクーポンを、生活保護受給世帯の生徒らに配っていなかったことが判明した。修学旅行を担当した旅行会社が「公的支援を二重に受けることはできない」と制度を誤解していた…

第1273回 レイラインと、太陰太陽暦の関係。

生島足島神社(長野県上田市) 現在の長野県の県庁所在地は長野市だが、明治の廃藩置県までは松本市が長野の中心だった。 そして、奈良時代以前は、上田市に国府が置かれていた。 信濃川流域に位置する上田市は、四方に秀麗な形の山が見られるところで、戦国…

第1272回 文字が変えた日本人の思考特性!?

ヴァルカモニカ渓谷の岩絵。約1万年前からローマ時代までの8000年間に描かれた14万点にもおよぶ精巧な線刻画が残っている。 ジュリアン・ジェインズは、『神々の沈黙』という著書のなかで、人間がアルファベットを使い始めた時から言語野が左脳になり、それ…

第1271回 わかることと、わからないことの間

わかることと、わからないことの間の在り方について、色々と思うことがある。 先週、スタンフォード大学の学生に対する講義を行った。スタンフォード大学の学生は、自分が選ぶ海外の国において、一定期間、授業を受けるプログラムに参加できる。 私が関わっ…

第1270回 日本の神話と火山の関係

浅間山の「鬼押出し」 。1783(天明3)年の噴火の際に、浅間山の山頂から流れ出た溶岩流。 全国に約1,300社の浅間信仰の神社があるとされるが、浅間神社は、現在、富士山への信仰の神社とされる。さらに、浅間神というのは、ニニギと結ばれて山幸彦と海幸彦を産…

第1269回 ロシアとウクライナの戦争で巨額の利益をあげているのは!?

「ウクライナが史上初めてアメリカから原油の輸入開始」。 現在のことではなく、2019年のニュースだ。 www.jetro.go.jp 現在、世界的な原油高の状況が、とてつもなく深刻になってきているのだが、この引き金になったのは、もちろん、ロシアとウクライナの戦…

第1268回 日本の全ての場所に、古代の聖域がある。

ここ数ヶ月に取材を行なった岐阜や四国、房総や常陸の写真をくわえて、「ピンホールカメラで撮る日本の聖地」のサイトを更新しました。 https://kazesaeki.wixsite.com/sacred-world このサイトでは、これまで撮影してきた場所を地図で確認できるようにして…

第1267回 筑波山と、采女と、国産み神話。

今回の旅で最後に訪れたのが筑波山。 筑波の地は、東国の神々を神話的に統合していく拠点だったのではないかというのが、私の仮説。 筑波山は、標高877m、男体山と女体山の二つの頂きを持つ双耳峰だが、広大な関東平野のどこからでも、その印象的な山容が…

第1266回 北九州と常陸と四国をつなぐ国づくりの糸

大洗磯前神社(茨城県大洗町) たった一つの場所のことを書くだけなのに、その一つの場所は無数の事柄と関わってきてしまい、手短に書けなくなってしまった。あまりにも長い、一つの場所に関する取材メモ。 今回の旅で房総半島から茨城の鹿島灘を北上し、辿…

第1265回 人間の流儀

昨日の夜遅く、テレビをつけたら、京大総長でゴリラ研究で知られる山極壽一さんが出ていて、人間の暴力性の起源と理由についての話を展開していたので、しばらく聞き入っていた。 山極さんは、ゴリラという生物は暴力的だと思われているけれど実際は平和を望…

第1264回 房総半島に秘められた歴史の謎

安房神社(千葉県館山市) 7世紀、日本で律令制が整えられていく段階の時期に、8箇所の神郡が定められた。一郡全体を特定の神社の所領・神域とし、郡からの収入は、その神社の修理・祭祀費用に充てられた。 日本が一つの国として統一されていく段階におい…

第1263回 日本文化の根本原理

香取神宮 旅の記録メモのつもりでも、他の場所との関係で考えていくと、どうしても長くなってしまう。 このたび、茨城県の鹿島神宮と千葉県の香取神宮を訪問した。 現在、神社が国家の管理から離れているため、「神宮」を称するかどうかは各神社の判断に任せ…

第1262回 鬼海弘雄さんが広げてくれた領域

亡くなる2年前、今から4年前の秋、京都に来た時、亀岡とか神護寺とかを歩いた。この頃の体調は万全ではなかったが、癌であることはわからなかった。この半年後くらいに、体調が悪かったは癌のせいだとわかったと電話があった。 今日、10月19日は、鬼海弘雄…

第1261回 シベリア収容所を通して見るロシアとウクライナの現実

昨日、新宿のオリンパスギャラリーで行われている野町和嘉さんの「シベリア収容所」の写真展において、野町さんとトークをさせていただいた。 野町さんは、報道写真を撮っているわけではないので政治的な話になるのは嫌そうだったが、私なりに気になることが…

第1260回 古代海人と太陽神の関係。淡路から伊勢へ。

舟木 石上神社 淡路島の舟木にある石上神社は、小高い丘の上の巨石群が御神体となっている古くからの聖域。ここは、現代の日本とは思えない異界のような雰囲気が漂っているが、今でも女人禁制を守っている聖域である。 女人禁制だからといって、女性を差別し…

第1259回 海人と水銀ネットワークの関係

轟九十九滝(徳島県海部郡海陽町) 観光旅行と旅の違いは、前者が「点」の訪問であるのに対して、後者は「線」の移動であることだ。 「点」の訪問の場合、自分の現実世界と訪問地が二項対立の関係になるが、「線」の移動は、自分の現実世界と各訪問先が、一…