第1488回 1000年に渡る祇園祭の祈り

9世紀、貞観の時代、富士山の大爆発や大地震が起き、疫病も流行した。 朝廷は、863年、京都の神泉苑で御霊会を行った。御霊会は、恨みを残したまま亡くなった人々の祟りを鎮めることで、世の安寧を祈る祭だった。 京都の神泉苑は、平安時代の初期、空海が雨…

第1487回 人類史上稀にみる世界的規模の画一化、標準化、規格化の時代を生き抜く力(2)。

昨日書いたことに通じる問題だけれど、現在は、映像の加工ソフトの技術進化が著しくて、富士山の写真に無数の星々が煌く天体写真を合成したり、日頃は敵対する動物同士を仲良くさせたり、フェイク画像を簡単に作り出すことができる。 いわゆる社会問題や政治…

第1486回 人類史上稀にみる世界的規模の画一化、標準化、規格化の時代を生き抜く力(1)。

7月19日、「過去最大のIT障害」とされる世界的なシステム障害が起きた。 空港や銀行がストップ…医療システムや緊急通報まで大混乱。 このシステム障害は、ウィンドウズパソコンに搭載したセキュリティソフトが原因で、ソフトが自動でアップデートされた際…

第1485回 アメリカの正義と戦争ビジネス

トランプ氏が狙撃されるニュースが世界中を駆け巡ったが、もしトランプ氏が大統領になった場合に、一番気になるのが、ウクライナ戦争の行方だ。トランプ氏は、ウクライナ戦争を終結させる方向で考えていると伝えられている。 以下は、2021年1月23日に書いた…

第1484回 火山と日本人の精神世界(2)

火山の多い日本のなかでも、特に人々に知られた山としては、九州の桜島、阿蘇山、雲仙岳、そして日本の東西の境目のフォッサマグナに聳える富士山、浅間山、八ヶ岳といったところだろうか。 興味深いことに、この西に三つ、東に三つの六つの山は、対になるよ…

第1483回 火山と日本人の精神世界(1)

39口の銅鐸が発見された加茂岩倉遺跡(島根県雲南市) 日本が世界有数の火山国であることは日本人なら誰でも知っている。実際に世界の活火山の7%が日本にあると言われるが、そのことが日本人の精神に与えてきた影響を、東京など平野部に住んでいる現代人は…

第1482回 「社会問題」や「国際問題」を伝達する表現について(2)

さきほど書いた問題にも通じることなのだが、アメリカで、トランプ前大統領が銃撃された。それを伝えるTBSの報道番組で、膳場貴子アナと、元外務省事務次官で立命館大学客員教授の藪中三十二氏のやりとりで、この事件が、「大統領選挙に有利になる可能性があ…

第1481回 「社会問題」や「国際問題」を伝達する表現について(1)

「KYOTOGRAPHIE」を京都の春の風物詩にまで育て上げた主催者の努力への敬意とは別に、この記事で、ダニエル・アビー氏が批評していることは、非常に大事なことを含んでいる。 www.tokyoartbeat.com 特に今日の写真表現の有様について深く考えるべき立場にい…

第1480回 山頭火の人生に重ね合わせた人生

まっすぐな道でさみしい(山頭火) 放浪の俳人山頭火。その人生を、ひとり語りで演じ続けていた林田鉄さんが、7月10日、あちらの世界に旅立たれた。 あまりにも突然で驚いた。 林田さんは、ワークショップの常連だった。5月25日に京都で開催したワークショッ…

第1479回 小さな映画のようで、実は深遠なる映画。「丘の上の本屋さん」

昨日、2023年に公開された「丘の上の本屋さん」というイタリア映画を観た。ユニセフ共同製作で、監督・脚本は、クラウディオ・ロッシ・マッシミという無名の人だが、小品ながら、とても深遠なる映画だった。 舞台はトスカーナの小さな村の書店。大がかりな状…

第1478回 表現における現代的停滞(頽廃)を超える行先

現在、上野の森美術館で、「石川九楊大全」展が開催されていたので行ってきた。 広大な上野の森は、いつも大勢の人で溢れているが、上野の森美術館方面に歩く人は少なく、鬱蒼と茂る大樹の陰は、厳しい暑さを和らげてくれた。 私は、書道について詳しくはな…

第1477回 迦微(かみ)に出会うところ。

奥山の岩に苔むし 畏(かしこ)けど思ふ心を いかにかもせむ」 よみ人知らず(万葉集 日本の国歌の「君が代」においても、「苔のむすまで」という言葉があるが、むす」は、「産す」であり、万物を生み出す「かみ」の存在が、そこに意識されている。 なので、こ…

第1476回 君が代の歌の本来の意味。 日本人の心がどう作られてきたか(4) 

いわがみ神社(京都府舞鶴市) 三回連続で「日本人の心がどう作られてきたのか」を一挙に書いた。 これが、その最後のまとめになるが、「君が代」という国家のことだ。 日本人以外の海外の人たちは、堂々と国家を歌っているのに、日本人は、国家に対して、ど…

第1475回 日本人の心がどう作られてきたか(続)。縄文と渡来系文化のあいだ。

三日前に、中世の「いろは歌」のこと、二日前に、万葉の時代に遡って書いてきたけれど、今日は、おそらく縄文時代に遡るスピリット(おそらくというのは、縄文時代というのは、私たちに染み付いている思考特性の向こうの世界なので、そう簡単にわかるもので…

第1475回 日本人の心が、どう作られてきたか。(後半)。

斉明天皇と間人皇后を合葬する八角墳、牽牛子塚古墳(奈良県明日香村) 「いろは歌」の作者が誰であったかを追求することも歴史の楽しみかもしれないが、そのことだけを目的化してしまうと、歴史の真相とは遠ざかってしまう。 歴史の真相を掴むことは、歴史…

第1474回  日本人の心が、どう作られてきたか。「いろは歌」の果たした役割。

私たち日本人は、日本語を使って物事を理解し、日本語を使って物事を考えている。だから、私たちの思考やイメージが日本語の影響を受けていることは当たり前であり、日本文化も、日本語という言語の特質を抜きに存在しえない。 日本人とは何か?という問いに…

第1473回 現代の世界と、詩への希望。

シュテファン・バチウという亡命詩人について、知っている人はほとんどいないと言っていいかもしれない。 私も、知らなかった。 この詩人のことだけでなく、この詩人が生まれたルーマニアについても特別な関心を持っている人は、ほとんどいない。 だが、私は…

第1472回 日本文化に宿る自然体という美意識。

西欧の美というのは、例えばベルサイユ宮殿の庭園のように、それじたいが、「これこそが美だ!」と主張してくる。 それに対して、日本が長い時間をかけて洗練させてきた美は、例えば苔寺のように、それを観る人の心に自由の余地を残す。 ただ単に、綺麗とか…

第1471回 人間の心の変化と、時代の変化。

武信稲荷神武信稲荷神社(京都)。 一昨日、奈良に行った時、興福寺の近くの商店街にカメラ屋があり、店頭に、レトロな中古フィルムカメラと、オシャレな新品のフィルムカメラがずらりと並べられていた。 おしゃれなフィルムカメラの価格は2万円以下。レンズ…

第1470回 千年の時を超えて、今に伝わってくる叡智。

春日大社と空海展へ。 空海が関わって制作されたとされる神護寺の曼陀羅が、修復作業を経て公開。 西洋絵画だと、ヒエロニムス・ボスが、超精密な描写を行なっているが、それよりも700年も前に日本でつくられた超巨大な曼陀羅の中の超精密な描写には、驚くば…

第1469回 偶然性の仕打ちを受容する生存の美学。

明治時代になって、浮世絵などの日本文化が、二束三文の値段で海外に持ち去られたように、日本人は、日本にあるものの価値を知らず、欧米のものに価値があると思い込んで、高い値段を払ってまで手にいれてきた。そして、欧米から褒めてもらって初めて、自分…

第1468回 ピンホール写真の写真展について

来年の初めに、東京のオリンパス関連のOMシステムギャラリーで写真展を開催することになったのだけれど、これまでの人生で、自分の写真の写真展は初めてのこと。 本はたくさん作ってきたのでイメージを掴みやすいのだが、写真展は、プリントサイズとか、額装…

第1467回 北斎と広重が描いた小野の滝を、ピンホールカメラで撮影した。

木曽路の寝覚の床。浦島太郎が玉手箱を開けた場所だという伝承の地。 戦国時代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えて重用され、肥後国の細川家の礎となった細川幽斎は、一流の文化人で優れた歌人でもあった。 その彼が、豊臣秀吉の小田原城攻めに参陣し、…

第1466回 闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

嵐山から嵯峨野は、観光客で溢れかえっているけれど、清涼寺あたりまで来ると、それほどでもない。 私が、京都に移住することになったきっかけの一つが、11年前、風の旅人の第47号で、染色家の志村ふくみさんのロングインタビューのために、この清涼寺のすぐ…

第1465回 レトロでアナログだけれど、新しい世界!?

風の旅人第25号〜第30号。表紙制作/大竹伸朗 これまで世代論について、あまり深く考えたことがなかった。 交遊関係にしても、年代で分けて意識することもなかったのだが、近年、Z世代という生まれた時からインターネットが当たり前だった世代の社会的影響力…

第1464回 縄文人には見えていて、現代人には見えていないもの。

先ほど書いたことの補足だけれど、今回、北海道でもオーロラが見えた。 私は、自分でも縄文土器を作り続けていた時期があったのだが、縄文土器の文様は、オーロラのようなプラズマ現象ではないかという気がしていた。 縄文人は、実際にオーロラ現象をよく見…

第1463回 人間の目には見えない宇宙の真理。

太陽フレアの大爆発によって、低緯度でもオーロラが見られたというニュースが、各地から届いている。 その場にいた人たちがスマホで撮影したオーロラを、世界中のどこでも見られるわけで、地球上に起きていることを人類全員が共有化できる時代になっているこ…

第1462回 情報として表に出てこない日本のリアリティ

日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。 こうした自然風土の国でありながら、山も海も見えない大都市のなかだけで日々暮らしていると、…

第1461回 今年の木村伊兵衛賞の受賞作品展の、哀しいまでの空疎さ。

昨日、池袋の新文芸坐で小栗康平監督の「眠る男」と 「伽倻子のために」の デジタル4Kレストア版を観る前に、銀座に立ち寄って、写真界の芥川賞などとメディアが煽る木村伊兵衛賞の受賞展を観てきた。 そして、会場に入るなり、その空疎な内容に呆然。ポスタ…

第1460回 日本人の潜在的な心の在り方と、海人とのつながり。

古代に対する関心の持ち方は人それぞれだが、私は、卑弥呼のクニがどこにあったかということよりも、日本人の潜在的な心の在り方に関心がある。 日本の縄文時代は10000年も続いており、明らかに大陸の影響を受けたと思われる弥生時代以降の歴史は、その4分の…