第1459回 時代の先端を疾走し続ける91歳。

現在、東京と京都で同時開催中の川田喜久治さんの写真展。 本日、東京のPGIギャラリーでのオープニングパーティがあったので、野町和嘉さんと訪れた。 川田さんは、私と同じ1月1日生まれだが、今年、なんと91歳になった。 2022年の秋の展覧会でお会いして以…

第1458回 口先だけの分析なら、もはやAIの方が上手にできる。

昨夜の地震の状況を知ろうと思って、朝、テレビをつけたら、屋台を引きながら無料でハーブティーをふるまい、薬に関する相談などにのっている若い薬剤師が紹介されていた。 彼がこういうことをするようになったきっかけは、病院の待合室で、患者さんが隣の人…

第1457回 地震のサイクルと、日本社会のサイクル。

昨夜遅く、愛媛、高知で震度6弱の地震が発生した。これは本当に怖い。南海トラフの前の、不気味な足音のような気がしてならない。 台湾から宮崎、そして四国と、最近、立て続けに、中央構造線の南側の地震が続いている。 1995年の神戸での大地震以来、北海…

第1456回 女性天皇が続いた時代。

愛子さま、明治神宮に初参拝。 この方は、なんだか巫女のようなオーラを漂わせている。 現在、皇位継承順位は、第一位が、秋篠宮文仁親王で、第2位が、文仁親王の長男の悠仁親王。 これは皇統に属する男系男子にのみ皇位継承権を認めるという皇室典範のため…

第1455回 自分の計画通りに作るのか、何かに導かれるようにして作るのか。

レヴィ=ストロースは、生命原理は、エンジニアリング(設計思想)ではなくブリコラージュで成り立っていると述べた。 毎月、東京と京都で交互に行っているワークショップセミナーの冒頭で、このことについて詳しく説明してから本題に入ることにしている。 …

第1454回 古代、聖から邪に転換した竜蛇神。

数日前に、近畿の真ん中の縦長の盆地の北と南の端にあたる吉野と京都を結ぶ丹生の女神のことについて書いたが、今度は、その京都を軸にした東と西の関係について考えてみたい。 吉野三山に鎮座し、蛇神の天津羽羽神を祀る波宝神社の真北に位置する上賀茂神社…

第1453回 『生成と消滅の精神史』下西風澄著について。

先週の21日(日)に行ったワークショップセミナーに、昔、風の旅人の編集部で働いていた中山慶が参加してくれて、会が終わった後、ノンアルコールビールを何本も飲みながら夜遅くまで話し込んだ。 その時、彼が、最近読んだ本として、「生成と消滅の精神史』…

第1452回 歴史が動いた時の背後。

久しぶりに天気が回復したので、昨日、以前から気になっていた所を訪れた。 これは、大谷選手の話題とは異なり、かなりマニアックで、古代に興味がない人には退屈な話だけれど、古代の重要鉱物である丹生=辰砂=硫化水銀や、現在、大河ドラマでやっている平…

第1451回 大谷翔平選手の”遊び”と、世俗世間の無聊の慰めの違い。

大谷選手の通訳が、スポーツ賭博で7億円近い借金をして、大谷選手の口座から埋め合わせをした事件が世間を賑わす前、大谷選手の新妻が、五千円のバッグを持って海外遠征に同行している写真が取り上げられているのを見て、いいなあと思っていた。 二人が付き…

第1450回 縄文時代に遡る巫女神が、時代を超えて伝えていること。

御前崎。(静岡県御前崎市)。 南海・東海大地震が起きた場合、もっともダメージが懸念される原子力発電所である浜岡原発は、太平洋に突き出た静岡県御前崎にある。 この場所は、四国から近畿にかけての中央構造線を東に伸ばして、伊豆下田の伊古奈比咩命神…

第1449回 大震災と、この国の祈り。

南海・東海大地震が起きた場合、もっともダメージが懸念される原子力発電所が、静岡の浜岡原発で、さらに、プルサーマル発電を継続中(2024年7月終了の予定)の愛媛県の伊方原発も不気味だ。 日本の原発は、岬や半島など、古代の聖域に建設されているものが…

第1448回 震災国日本の祈りのかたち。

(さらに昨日の続き)。 古来、日本の天皇は政治的権力者というより、この国の祭祀の要に位置しており、この国の祭祀の根幹は、古代の巫女が、自分の存在を打ち捨てる覚悟で神に仕えることで、その身に神を憑依し、神そのものになって人々に恵みをもたらし災…

第1447回 巫の力と、天皇制。

室生龍穴神社(奈良県宇陀市)の奥宮の「吉祥龍穴」。ここが「善女龍王」の聖域。 「善女龍王」は、仏教における龍を統率する女神で、空海が京都の神仙苑(しんせんえん)で雨乞いを行った時に現れたとされる龍王でもある。伝説によれば、善女龍王は、奈良市…

第1446回 悶えて加勢する巫の力。

(昨日の続き) 世界中の文学のルーツには悲劇がある。悲劇には、人間の心の深いところを揺さぶる力がある。だから後々まで伝承され、記憶が引き継がれる。 現代社会のように、人間の欲望を刺激するものが溢れ、悩みや不安を一時的に紛らわす娯楽に不自由し…

第1445回 この時代の巫の力。

2011年の東北大震災から13年が経った。 ここにアップしている石牟礼道子さんの写真は、風の旅人の第48号(2014年6月1日発行)に掲載しているロングインタビューの時の写真で、写真データを確認したら、ちょうど10年前の2014年3月11日になっている。 このイン…

第1444回 源氏物語と、京都と吉野をつなぐ古代の巫の勢力。

(3月30日と31日に京都で行うワークショップのメモ②) 何度も書いてきたことだけれど、「源氏物語」というのは、11世紀の初頭に突然出てきた創作物ではなく、こういう文学が創造されるまでの歴史的な準備期間があった。 源氏物語の100年前、10世紀の初頭、紀…

第1433回 時代が変わる時。

(3月末に行うワークショップについて) 現代世界には、環境問題をはじめ様々な問題が横たわっているが、それらの問題の根元には、「万物の尺度は人間にあり」という、すべての物事を人間を基準にして測る価値観がある。 この価値観が人間の傲慢さにつながっ…

第1432回  安井仲治と、鬼海弘雄の写真が示す未来。

安井仲治 「馬と少女」 安井仲治の写真について、2回にわたって書いたきたが、不思議なことに安井仲治は、38年の短い生涯で、近代写真の最初から、21世紀芸術として写真表現が存続するための唯一の在り方まで、全てをやりきって いる。 「21世紀芸術として…

第1431回 もし安井仲治が、あと30年長生きしていたなら。(2)

日本が太平洋戦争に突入する直前、安井は、驚くべき写真を創出する。 それは、「磁力の表情」と題されたシリーズで、鉄粉と磁石で作り出した磁場の形を浮かび上がらせたものだ。 このイメージは、私が編集制作を行っていたグラフィック雑誌『風の旅人』の第3…

第1430回 もし安井仲治が、あと30年長生きしていたなら。(1)

東京都国立近代美術館で展覧会が行われている中平卓馬の写真が、対象を観るというより、強い自我と呼応させるように対象に手をくわえているのに対して、虚心の目に徹し切って世界の実相を写真で捉えようとした安井仲治の展覧会が、東京都ステーションギャラ…

第1429回 現実とファンタジーをつなぐ写真 『ON THE CIRCLE』。

「円形の貯水槽の上に寝て目を閉じる。 宇宙に包まれるという感覚ではなく、宇宙を包み込むという感覚、そのような一瞬は来るのだろうか。 多分、その時は、生きることの不安からも死の恐怖からも解放されるに違いない。 瞼に柔らかな光を感じながら漠然とそ…

第1428回 ”いのち”のさだめと、もののあはれ。

今年の京都の桜の開花は、ウェザーマップによると平年より早く、3月21日に開花、3月30日に満開になると予想されているが、そのタイミングとなる3月30日(土)と31日(日)に、京都でワークショップセミナーを開催します。 当日は、嵐山の渡月橋あたりに集合…

第1427回 ビクトル・エリセと小栗康平の眼差しが交差するところ

ビクトル・エリセの最新作の「瞳をとじて」を観て思うところがあったので、昨日の夜、彼の処女作である「ミツバチのささやき」を久しぶりに観てきた。 素晴らしく心に染み込む映画ではあるのだけれど、この映画の魅力は、無垢の少女のアナの眼差しに引き込ま…

第1426回 瞳をとじて

昨日、久しぶりに新宿歌舞伎町まで足を伸ばし、ビクトル・エリセの31年ぶりの新作、「瞳をとじて」を観てきた。 同じように20代の頃に観ていたヴィムヴェンダースの新作の「perfect days」よりは、映画の時間の中に潜入することができた。 「perfect days…

第1425回 「日本文明が与えることができる優れた教訓のかずかず」 レヴィ=ストロース 

第15回ワークショップセミナー(東京)を終えた。 この場で最初に私が話をしているのは、エンジニアリングとブリコラージュの話。 これは、20世紀の最高の知性、文化人類学者のレヴィ=ストロースが唱えていることで、近代文明の中で生きている私たちは、エ…

第1424回 半島は、なぜ聖域なのか。

今年制作する予定の「日本の古層VOL.5」は、カラー写真を使って「もののあはれ」をテーマに深く掘り下げるつもりで、昨年の末に能登半島を訪れて取材した。これらのピンホール写真は、カラーで撮っていた。 しかし、この取材後、心にひっかるものがあって、…

第1423回 もののあはれ源流を辿る。

風の旅人の第50号の巻末で、次号の告知として「もののあはれ」と示したものの、けっきょく、雑誌として作ることができなかった。 「もののあはれ」について、「しみじみとした情緒や気分」とか、「形あるのは、いずれ姿を消す」といった程度で説明されること…

第1422回 源氏物語と、もののあはれ

石山寺。紫式部が、源氏物語を書き始めた場所とされる。 NHK大河ドラマの「紫式部」は、藤原道長との恋愛が軸になっているそうで、その恋愛が「源氏物語」の着想につながっているという設定のようだが、本当に、そういう安易な解釈でいいのだろうか。 光源氏…

第1421回 源氏物語のハリウッド的味付け!?

源氏物語の後半の舞台は宇治。宇治平等院は、藤原道長の息子、藤原頼通が、末法の時代を反映させて、別荘を寺に改めた。 大河ドラマの「紫式部」は、セクシー&バイオレンス路線なのだそうだ。そうしないと視聴率を稼げないのだそう。 テレビ番組については…

第1420回 なんとなく、霊魂のことについて。

昨日書いた友人のことの続きだけれど、いろいろな友人がいても、その奥さんの食事を何十回もいただいたというのは、そうあることではない。 この20年、私が富士山に通うたびに、そして富士山の雄大な姿が目の前に広がる彼の家で何日も連泊する時など、朝、昼…