第1191回 古代海人の拠点と、京都の向日山の関係

京都市は歴史の都として多くの観光客が訪れるが、歴史的建造物は中世以降に作られたもので、京都市の南に位置する向日市の方が歴史的には古い。 向日市は、平安京の前に長岡京が築かれた場所で、その時より300年前には継体天皇の弟国宮が築かれた。 長岡京の…

第1190回 写真家の良心と、いのちの在り処。

2018年秋、鬼海さんと小栗康平さんと一緒に亀岡や京都の紅葉を観て歩いた。 昨日、10月19日で、鬼海弘雄さんが亡くなって1年が経つ。 京都の家の玄関には、鬼海さんから頂いたペルソナの写真2枚が飾られており、うちに来る人のなかには、びっくりして、「…

第1189回 あの写真の「封印」を私は解いた! ???

このインタビューを読むと、私が、「MINAMATA」の映画を見て、きな臭く感じたことの理由が伝わってくる。 www.asahi.com 北野隆一さんは、MINAMATAの映画の中に、これまで封印されていたはずの入浴シーンの写真が出てきたことに疑問を持ち、その真相を知るた…

第1188回 縄文の水上ネットワークと、竹野の巫女?

玄武洞(兵庫県豊岡市) 兵庫県豊岡市には火山活動の痕跡が生々しく残るが、柱状節理で有名な玄武洞は、地磁気の逆転現象発見の場所。 1929年、松山基範は、ここの玄武岩の持つ磁気が現在の地磁気と反対の向きを指していることを発見し、かつて地球の磁場が…

第1187回 「MINAMATA」と「くじらびと」、事実に対する誠実さの違い。

https://lastwhaler.com/bon-ishikawa/?fbclid=IwAR0SB70MpHebmRJByfpHiYdxelCDGQUCUA0cNRw_atUJEzi0os5dT_dc0qk 「これまで海の上の人間の物語を撮ってきた。しかし、海の下のもうひとつの物語があることに気づいた」 石川梵監督の映画「くじらびと」の誕生…

第1186回 たとえフィクションであっても、事実を伝える際のモラルは必要だ。

「Let truth be the prejudice」真実を偏見(こだわり)にしようというユージンスミスの有名な言葉の中のTruth(真実)は、神様の目ではなく、人間の目からの真実である。 ユージン・スミスは言っている。人間というのは、純粋に客観的であることはできない…

第1185回 重層性や複合性の視点を失わずに表現することの大切さ。

映画MINAMATAは、非常にわかりやすいサンプルなので、しつこく言及してきたが、現在の表現の一番の問題は、重層性や複合性の視点が欠けているものが多く、その方が、人に受けやすいということ。だから、単純な構造にしてわかりやすくして人心を誘導する手口…

第1184回  水俣やユージン・スミスのリアルと向き合うことは、近代の問題と向き合うこと。

私が映画「MINAMATA」のことについて書くことに対して、「佐伯さんは、一般大衆に期待しすぎ」と、なんとも不思議なコメントをくれる人がいる。 一般大衆の定義がよくわからないが、期待しても、何にも変わらないよ、という程度の意味だろうか? 私がしつこ…

第1183回 映画MINAMATAが隠してしまった本当のこと

MINAMATAの映画について、辛口の意見はあまりないようで、孤独を感じながらも、もう十分に書き切ったと思っていた。 しかし、映画ライターが「ユージンを演じるジョニー・デップが素晴らしい。酒浸りになっていたユージンが水俣の現実を知り、再び報道写真家…

第1182回 桑原史成さんの水俣の写真から伝わってくる、正義よりも本当のことを伝える思い。

桑原史成さんの水俣に関する写真展が開かれている。 http://www.fujiwara-shoten.co.jp/whatsnew/9-15%EF%BD%9E10-16-%E6%A1%91%E5%8E%9F%E5%8F%B2%E6%88%90%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%B1%95%E3%80%8Cminamata%E3%80%8D%E9%96%8B%E5%82%AC%EF%BC%81/ 大勢の人に…

第1181回 ハリウッドのMINAMATAと、石川梵が一人で作った「くじらびと」の差異。

映画「MINAMATA」を観た人は、ぜひ、石川梵製作の映画「くじらびと」を観て欲しい。 https://lastwhaler.com/ 私が、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人に対して懸念を覚えるのは、映画MINAMATAの手法が、ポピュリズムの常套手段であるから…

第1180回 映画MINAMATAー正義と真理の隔たり

ここ数日、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人が多すぎるので、私なりに感じる問題点を書いてきたけれど、これを最後とする。 この映画は、「事実に基づくフィクションである」という中途半端な逃げで、悪の集団役としてチッソ株式会社は具…

第1179回 映画「MINAMATA」と、当事者意識の問題。

ユージン・スミスを主人公にした「MINAMATA」の映画に対して、熊本県と水俣市の判断は違っていた。この映画の水俣での上映会において熊本県は後援したが、水俣市は後援を拒否した。熊本県の方が水俣市よりも懐が大きいなどと思う人は、水俣のことについて、…

第1178回 映画「MINAMATA」について、ユージン・スミスは、どう思うだろう?

「私は、男は泣かないということを承知しているが、私は泣いた。同室のものから顔をそむけ、涙と嗚咽を抑えるのに精一杯だった。私を深く感動させる写真、私の人生を変えてしまう写真は数少ない。森永純の写真はその二つを併せ持っていた。」 ユージン・スミ…

第1177回 「MINAMATA」なのか、「OUR MINAMATA DISEASE」なのか。

映画「MINAMATA」の製作に関わり、主演でもあるジョニーデップが、2020年ベルリン映画祭公式記者会見で、こう述べている。 「ユージンスミスとアイリーンスミスの水俣での記念碑的な仕事と、彼らの献身に! 」 MINAMATAという映画は、まず、このジョニーデッ…

第1176回  水俣とMINAMATAの違い

ジョニー・デップが写真家のユージン・スミスを演じる映画、「MINAMATA」を観てきた。 これは「水俣」の映画とは言えないので、「ユージンスミスと水俣」というタイトルくらいが、ちょうどいい。 ユージンスミスの写真については昨日書いたとおりなのだけれ…

第1175回 「MINAMATA」のユージンスミスと、森永純

ジョニーデップが製作・主演の「 MINAMATA」が、京都でも観られる。 この時代に、改めて水俣のことに注目がいくことは、大事なことかもしれない。 しかし、私は、風の旅人の誌面で、ユージンスミスの写真は、日立関係のもの(高度経済成長下の日本人)を編集…

第1174回 日本の祈り、神道について思うこと。

京都 月読神社 日本の宗教について、神道と仏教が基本になっていることは、誰でも知っているが、神道とは何か?と問われた時、アニミズムとか、八百万神(やおよろずのかみ)と簡略化され、縄文に遡る自然崇拝の思想だと説明されることがある。 しかし、神社…

第1173回 時代の転換点に起きた、菅原道眞の怨霊騒ぎ

歴史上の天皇で、身分や血筋からは決して天皇になる筈がなかったのに天皇に即位し、しかも、それが歴史的に重要な転機点となった人物が三人いる。 一人は、6世紀初頭、福井の豪族だったとされる第26代継体天皇で、現在の天皇の血統を遡れるもっとも古い天…

第1172回 京都における銅鐸関連地と、その後の歴史のつながり

石清水八幡宮の鎮座する男山は、桂川、木津川、宇治川の合流点で、かつては、巨椋池があった交通の要所。 銅鐸というのは、境界に埋められていることが多いが、京都盆地では、嵯峨野の北、日本海に抜ける周山街道の出入り口に近いの梅ヶ畑と、木津川、宇治川…

第1171回 『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 を読み終えて 

『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 河出書房新社発行 https://www.amazon.co.jp/%E6%B0%B4%E4%BF%A3-%E5%A4%A9%E5%9C%B0%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A-%E7%94%B0%E5%8F%A3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3/dp/4309029922 久しぶりに、深い…

第1170回 東京周辺の古代を考えるうえで(2) 平将門の乱の背景

八王子市 多賀神社 東京の国立市にある谷保天満宮が、なぜ菅原道眞の死を弔うための聖域として日本最古なのか、前から気になっていたのだけれど、少し線がつながってきた。そして、平将門の乱も、そこにつながっていた。 私が住んでいる高幡不動の近くに多摩…

第1169回 東京周辺の古代史を考えるうえで。(1) 日本の歴史を変えた騎馬技術と高句麗人。

高麗神社(埼玉県日高市) 埼玉県日高市の高麗神社と、神奈川県大磯の高来神社(高麗神社)は、東経139.32という南北ライン上に鎮座している。どちらも、かつて高麗人(高句麗人)が拠点としていたところだ。 埼玉の高麗神社は、若槻礼次郎、浜口雄幸、斎藤…

第1168回 目の焦点と、心の焦点。

富士ヶ嶺から望む富士山 富士山と、富士山周辺の聖域をピンホールカメラで撮ると、確かに、その霊気が針穴の中に忍び込んでくるような気がしないでもない。 最近、私のピンホール写真を見た写真家の水越武さんから写真の焦点について問いを投げかけられたが…

第1167回 東京オリンピックが浮かび上がらせたもの

女子バスケットボールの試合が始まってすぐ、日本の選手たちと、2mを超える選手のいるアメリカチームとの体格差が大人と子供のように違いすぎていたので、50対100くらいの点差で負けても仕方がないと思ったが、75対90と、そんなに差が開かなかった…

第1166回 見えるものと見えないものの間

足摺岬 竜宮神社 日本は、アメリカや中国などに比べると小さな島国ですが、北から南まで長い国で、その自然や文化の多様性は、無限とも言えるほどの豊かさがあります。 現在、私が取り組んでいる「 Sacred world 日本の古層」のプロジェクトで、ピンホール写…

第1165回 偶然と必然は糾える縄のごとし

事任八幡宮 (静岡県掛川市) 偶然と必然は、糾える縄のごとしであり、偶然だったことも、後から思えば必然だったのかと思わされることが多い。 昨年の冬、京都から東京に移動する時、出発の前日までは長野経由を考えていたが、大雪で道路の状況に不安があっ…

第1164回 現場を訪れることで立ち上がってくる新たな問い

三角形の北の頂点が、京丹後市網野町の網野神社、西の頂点が兵庫県宍粟市の伊和神社、東の頂点が、亀岡市の魔気神社である。それぞれのあいだは、76kmで正三角形である。魔気神社と、伊和神社は、珍しく本殿が北向きの神社であり、京丹後の網野神社は、浦島…

第1163回 古代から現在、そして未来への連続性

昨年の夏、自分の故郷の明石に長く滞在したこともあり、明石から播磨にかけての地域をじっくりと取材していた。 私は、18歳まで明石で育った。明石原人や明石象の発見地ということもあり、その現場で考古学のママゴトをしていたが、明石周辺が歴史的に重要…

第1162回 ピンホール写真と、祈り。

高性能のデジタルカメラは、撮影者が狙うような絵を作り出すために非常に有用なツールとなっている。 それは、撮影者の満足度を高めるために適しているかもしれないが、そのアウトプットが、自分と世界のあいだの作法として相応しいものかどうかは別問題だ。…