2016-01-01から1年間の記事一覧

第975回 競争から共創へ、利己から利他へ⑤ 人間と自然をつなぐ宗教

伊勢に行った。冬至の前後、太陽は、伊勢神宮の内宮の宇治橋にある大鳥居から昇るというので、それを見るために。 夏至の時は、夫婦岩の間から昇り、その延長線上に、富士山と鹿島神宮があり、その逆方向は、高野山から剣山を通り、高千穂に至る。日本を南北…

第974回 競争から共創へ、利己から利他へ④ 経済合理性とは逆のところにある豊かさ

能登半島の北部の「じんのびーと」で行われた『京ことば源氏物語 能登語り会』に参加して、帰ってきた。山下智子の源氏物語の語り会を核にして、心に沁みる様々な出来事が重なり合う催しとなった。 第二部の「自然と伝統文化から日本を見つめ直す」という座…

第973回 競争から共創へ 利己から利他へ③ 授かった命との付き合い方

私の家から自転車ですぐ行ける範囲内で、樹齢400年くらいから1000年くらいになる木が、何本もある。屋久島など深い森の中の原始林もすごいが、京都という街中で、中世の人々の暮らしのすぐそばで生きてきた樹木が、今もそこにあるというのがすごい。 …

第972回 競争から共創へ、利己から利他へ② 自然と伝統文化から日本を見つめ直す

都会を離れ、慌ただしい日常の時間からしばし離れ、能登半島にこもり、大自然の中で、日本のことをじっくりと振り返りませんか。大きな時間の中で、過去から今、そして未来のことに思いを馳せませんか。 12月19日(月)、能登半島にある「能登の家じんの…

第971回  競争から共創へ、利己から利他へ①  宗教の本質

神社が政治的存在感を増している。 http://toyokeizai.net/articles/-/139081 神社で憲法改正を求める幟やポスターが掲げられ、署名が集められている。神社は、祈りの場なのに政治活動の場になっている。 そうした神社の関係者は、「個人だけでなく国家の安…

第970回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角⑦

⑥から続く ドナルド・トランプが大統領になったアメリカは、金融の資金調達力に情報技術と天然資源を結びつけて、新たな製造業の時代を切りひらき、新たな保護主義政策をとっていくのかもしれない。 そして、アメリカに限らず、イギリス連邦、EUも、グロー…

第969回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角⑥

⑤から続く 資本主義によってお金や物は増えたけれど、貧富が拡大し、人間が機械部品のように扱われる職場で働きがいや生きがいを喪失し、競争社会でストレスを抱えて鬱病など心の病に陥る人も増え、家族や地域のつながりがなくなって孤立化する人が増え、引…

第968回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角⑤

④から続く 今回のドナルト・トランプの勝利後の世界について、漠然とした悲観論や不安を軸にした分析を行う社会学者やジャーナリストは多い。 そうした分析は、もしかしたら80%は”間違いではない”かもしれない。しかし、間違いではない分析だったとして…

第967回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角④

③から続く 「ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角」というテーマでブログを書いてきて、昨日、そろそろまとめようと思って書き終えた途端、衝撃的なニュースが入ってきたので、まとめの前に続きを書かなければいけない。 シリコンバレーのカリ…

第966回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角。③

②から続く。 日本は、イギリスやアメリカに遅れて、製造業依存の輸出型生存戦略から、投資型へと移行しつつある。 しかし、日本は、法人税が高く、外国企業の参入を阻む規制も多く、タックスヘイブンを使ったり企業に対する税の優遇措置をとるアメリカやイ…

第965回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角②

①から続く アメリカ合衆国大統領選挙には莫大な資金が必要になるので、その資金を提供する者が、大統領の政策に大きな影響力を持つことになる。 にもかかわらず、アメリカ合衆国の大統領には巨大な権限がある。その一つが閣僚任命権で、大統領に資金を提供し…

第964回 ドナルド・トランプの勝利と、資本主義の曲がり角。①

2016年に起きたイギリスのEU離脱、アメリカ大統領選挙でのドナルドトランプの勝利、そして、パナマ文章事件で象徴されるタックスヘイブンの問題。この三つは、製造業主体から金融主体へと移行した資本主義が、さらなる段階へと移行していく重要な暗示で…

第963回 若冲に還る。(後半)

(前半から続く)若冲は、次のような言葉を残している。 今の所謂画は、皆画を画く者にして、未だ能く物を画く者を見ず。且つ技を以って售(う)らんことを求め、未だ能く技より進(まさ)る者有らず。是れ吾の人に畸とする所なり。(もと漢文、訓み下し) …

第962回 若冲に還る。(前半)

若冲は、「千載具眼の徒をまつ」という言葉を残した。 やはり若冲はすごい。東京都美術館で行われた「若冲 生誕三百年」の展覧会は、待ち時間5時間という凄まじい人気だったようだが、10月30日に行った京都市立美術館の展覧会は、「動植綵絵」など人気作品…

第961回 無意識の記憶と、人の幸福

久しぶりに高野山を訪れた。高野山では、陶芸家の三星善業さんの窯出しのタイミングと重なり、また三星さんの弟子の和田直樹君が、ちょうど窯焼きの最中で、幸運だった。http://hiraharagama.doorblog.jp/ 和田君は、この前に訪れた時とは違う窯で焼いていた…

第960回 もののあはれを知る二つの東京 (第4回・完)

(第3回から続く) 時は不可逆であり、過ぎたことを悔やんでもどうにもならない。 それが、ものの限界である。しかし、ものの限界を知る時に初めて、ものの価値をリアルに感じられることもある。 ”限りあるもの”との出逢いは偶然であり、二度と同じ形での出…

第959回 もののあはれを知る二つの東京(第3回)

(第2回から続く) 技術革新がどれだけ進もうとも、基本的に、人間と”もの”との関係は昔からそんなに変わっていない。変わっているのは主に観念の部分であり、身体という限りある”もの”とともに在る人間は、これまでも、そしてこれからも、”もの”との関係を…

第958回 ”もののあはれ”を知る二つの東京(第2回)

(第1回から続く) 今年度、「東京」の名がつく二つの大型写真集が刊行された。 一つは、鬼海弘雄さんの「Tokyo View〜東京模様〜」(発行:かぜたび舎)、そしてもう一つが、有元伸也さんの「Tokyo Circulation」(発行:禅フォトギャラリー)だ。 この二…

第957回 「もののあはれ」を知る二つの東京 第1回

この20年ほどの間に、パソコンが大型コンピューターに取って変わり、さらに、どこにでも持ち出し可能なラップトップコンピューター、より携帯性に優れたスマホが人々のあいだに普及した。これから急速に進むのは、IoT(Internet of Things)、「もののインター…

第956回  主義主張の正しさよりも、伝え方の正しさ。

「アルビノの木」という映画が、7月16日から29日まで、テアトル新宿のレイトショーで、緊急に、限定に、公開される。 http://www.albinonoki.com/ 金子雅和監督(38歳)の自主制作作品である。昨今、映画産業の衰退は著しい。テレビ局や広告代理店がしきる…

第955回 人間として引き継いでいくべきものを写す写真

現代社会は、概念としてできあがっている「問題意識」を上塗りする社会的・政治的な写真や、消費社会で商業的に成功した写真をもてはやす傾向が強い。しかし、そのどちらの写真があってもなくても、世界の見え方や、受け止め方に、そんなに大きな変化は生じ…

第954回  高齢化問題で、ふと思ったこと

最近、身近にあった出来事で、今まであまり意識していなかったことが、自分ごとになった。 高齢化によって様々な問題が生じることが当然ながら予測できるが、膨大な高齢者をどう支えるかという問題だけでなく、これから高齢化していく人たちの意識を、今から…

第953回 普通であることのすごさ

このたびの鬼海弘雄さんの大判の写真集「Tokyo View」を購入した方から、「1ページずつバラバラに切り離して、額装したい。」という声をたくさんいただいている。 印刷とは思えないクオリティだと誉めていただいているわけだが、一方では、この写真集の厚塗…

 *第952回 何度見ても、気にかかる写真

鬼海弘雄さんの写真集「TokyoView」が完成して、発送作業に追われている。(写真集の詳細はこちら→http://www.kazetabi.jp/) この写真集の制作には2年かけた。それだけ拘るに値する写真ばかりだからだ。 最初の1年で写真の選択と組み方とレイアウトとデザ…

第951回 野党に期待できるわけではないけれど

夏の参院選を占う補欠選挙が、北海道と京都で行われた。 結果は、”逆風”が強いため自民党が候補者の擁立を見送った京都3区は民進党、前回よりかなり接戦となった北海道5区は自民党が勝った。 日本全体を見渡すと、現時点の自民党支持率が40%ちょっと、…

第950回 自分ではどうにもならない困難と、自分で何とかするしかない課題

この世界には、自分ではどうにもならない困難と、自分で何とかするしかない課題がある。長い人生で、ずっと順風満帆に行くことはありえず、どこかで間違いなく苦しい困難に遭遇する。自分で何とかするしかない課題の場合は、自分を鼓舞したり気分転換をはか…

第949回 ”これまで通り”の果てに

(地震によって破壊された阿蘇神宮 画像:NHKニュースより) 日本を縦に貫くフォッサマグナと、横に貫く中央構造線にそって、東の鹿島神宮から長野の諏訪神社、伊勢神宮など、重要な神社が建っていることは前から気になっていた。大地が引き裂かれたり押され…

第948回 どんな現実も、自分の潜在意識の現れ

ごめんなさい 許してください 愛しています ありがとう。 (ホ・オポノポノの4つの言葉) どんな目の前の現実も、100%自分の記憶(潜在意識)の現れ。 同じことが起きていても、人によって現実の受け止め方や解釈や対応の仕方が違うのだから、その現実は、そ…

第947回 消費社会のマインドコントロール

日本の首相は、演説をする時、いつも原稿から目を離さない。そして、借り物の言葉で語る。自分の頭で考えていないからだ。ウルグアイのムヒカ前大統領は、ほとんど原稿を見ることなく、自分の言葉で力強く語り続ける。信念を持ち、それを実践しているからこ…

第946回 散るからこそ知る有り難み

昨日の春の嵐で、桜はかなり散ってしまったけれど、緑は、一段と濃くなった。これからが春の本番。心の辛さは残り続けているけれど、だからこそ、あの頃の何でもないような日々が、とても幸福な日々だったということがよくわかる。 辛さを経験しなければ、気…