2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

第1194回 映画「くじらびと」。11月7日、石川梵監督とトークを行います。

映画「くじらびと」。この奇跡の映画、革命的な映画の大阪での上映で、石川梵監督と、トークを行うことになりました。 大阪復活上映(第七芸術劇場) (11月7日(日)、14:10の回上映後 1時間のスペシャルトークイベント) 登壇者:石川 梵 監督、佐伯 剛(…

第1193回 紫式部は、なぜ「源氏」を主人公に物語を描いたのだろうか?

紫式部は、なぜ光源氏を主人公にして、「源氏」の栄華を描いたのだろうか? 源氏というのは、もともとは天皇の子供達であったけれど皇位争いを避けるために早い段階で臣下の身分となり、皇族の身分を離れた者たちである。 皇族から臣籍降下した者のうち、一…

第1192回 オリックスの山本投手のトレーニング方法と、いにしえの日本

日本で最も人気スポーツである野球で、最高峰の投手でアメリカ球界も注目しているオリックスの山本投手がこんなことを言っている。 「昔の女の人が米俵を担いでいる写真。担げるの?って思うじゃないですか。コツを知っているから持って運べる。人間にはそれ…

第1191回 古代海人の拠点と、京都の向日山の関係

京都市は歴史の都として多くの観光客が訪れるが、歴史的建造物は中世以降に作られたもので、京都市の南に位置する向日市の方が歴史的には古い。 向日市は、平安京の前に長岡京が築かれた場所で、その時より300年前には継体天皇の弟国宮が築かれた。 長岡京の…

第1190回 写真家の良心と、いのちの在り処。

2018年秋、鬼海さんと小栗康平さんと一緒に亀岡や京都の紅葉を観て歩いた。 昨日、10月19日で、鬼海弘雄さんが亡くなって1年が経つ。 京都の家の玄関には、鬼海さんから頂いたペルソナの写真2枚が飾られており、うちに来る人のなかには、びっくりして、「…

第1189回 あの写真の「封印」を私は解いた! ???

このインタビューを読むと、私が、「MINAMATA」の映画を見て、きな臭く感じたことの理由が伝わってくる。 www.asahi.com 北野隆一さんは、MINAMATAの映画の中に、これまで封印されていたはずの入浴シーンの写真が出てきたことに疑問を持ち、その真相を知るた…

第1188回 縄文の水上ネットワークと、竹野の巫女?

玄武洞(兵庫県豊岡市) 兵庫県豊岡市には火山活動の痕跡が生々しく残るが、柱状節理で有名な玄武洞は、地磁気の逆転現象発見の場所。 1929年、松山基範は、ここの玄武岩の持つ磁気が現在の地磁気と反対の向きを指していることを発見し、かつて地球の磁場が…

第1187回 「MINAMATA」と「くじらびと」、事実に対する誠実さの違い。

https://lastwhaler.com/bon-ishikawa/?fbclid=IwAR0SB70MpHebmRJByfpHiYdxelCDGQUCUA0cNRw_atUJEzi0os5dT_dc0qk 「これまで海の上の人間の物語を撮ってきた。しかし、海の下のもうひとつの物語があることに気づいた」 石川梵監督の映画「くじらびと」の誕生…

第1186回 たとえフィクションであっても、事実を伝える際のモラルは必要だ。

「Let truth be the prejudice」真実を偏見(こだわり)にしようというユージンスミスの有名な言葉の中のTruth(真実)は、神様の目ではなく、人間の目からの真実である。 ユージン・スミスは言っている。人間というのは、純粋に客観的であることはできない…

第1185回 重層性や複合性の視点を失わずに表現することの大切さ。

映画MINAMATAは、非常にわかりやすいサンプルなので、しつこく言及してきたが、現在の表現の一番の問題は、重層性や複合性の視点が欠けているものが多く、その方が、人に受けやすいということ。だから、単純な構造にしてわかりやすくして人心を誘導する手口…

第1184回  水俣やユージン・スミスのリアルと向き合うことは、近代の問題と向き合うこと。

私が映画「MINAMATA」のことについて書くことに対して、「佐伯さんは、一般大衆に期待しすぎ」と、なんとも不思議なコメントをくれる人がいる。 一般大衆の定義がよくわからないが、期待しても、何にも変わらないよ、という程度の意味だろうか? 私がしつこ…

第1183回 映画MINAMATAが隠してしまった本当のこと

MINAMATAの映画について、辛口の意見はあまりないようで、孤独を感じながらも、もう十分に書き切ったと思っていた。 しかし、映画ライターが「ユージンを演じるジョニー・デップが素晴らしい。酒浸りになっていたユージンが水俣の現実を知り、再び報道写真家…

第1182回 桑原史成さんの水俣の写真から伝わってくる、正義よりも本当のことを伝える思い。

桑原史成さんの水俣に関する写真展が開かれている。 http://www.fujiwara-shoten.co.jp/whatsnew/9-15%EF%BD%9E10-16-%E6%A1%91%E5%8E%9F%E5%8F%B2%E6%88%90%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%B1%95%E3%80%8Cminamata%E3%80%8D%E9%96%8B%E5%82%AC%EF%BC%81/ 大勢の人に…

第1181回 ハリウッドのMINAMATAと、石川梵が一人で作った「くじらびと」の差異。

映画「MINAMATA」を観た人は、ぜひ、石川梵製作の映画「くじらびと」を観て欲しい。 https://lastwhaler.com/ 私が、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人に対して懸念を覚えるのは、映画MINAMATAの手法が、ポピュリズムの常套手段であるから…

第1180回 映画MINAMATAー正義と真理の隔たり

ここ数日、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人が多すぎるので、私なりに感じる問題点を書いてきたけれど、これを最後とする。 この映画は、「事実に基づくフィクションである」という中途半端な逃げで、悪の集団役としてチッソ株式会社は具…

第1179回 映画「MINAMATA」と、当事者意識の問題。

ユージン・スミスを主人公にした「MINAMATA」の映画に対して、熊本県と水俣市の判断は違っていた。この映画の水俣での上映会において熊本県は後援したが、水俣市は後援を拒否した。熊本県の方が水俣市よりも懐が大きいなどと思う人は、水俣のことについて、…

第1178回 映画「MINAMATA」について、ユージン・スミスは、どう思うだろう?

「私は、男は泣かないということを承知しているが、私は泣いた。同室のものから顔をそむけ、涙と嗚咽を抑えるのに精一杯だった。私を深く感動させる写真、私の人生を変えてしまう写真は数少ない。森永純の写真はその二つを併せ持っていた。」 ユージン・スミ…

第1177回 「MINAMATA」なのか、「OUR MINAMATA DISEASE」なのか。

映画「MINAMATA」の製作に関わり、主演でもあるジョニーデップが、2020年ベルリン映画祭公式記者会見で、こう述べている。 「ユージンスミスとアイリーンスミスの水俣での記念碑的な仕事と、彼らの献身に! 」 MINAMATAという映画は、まず、このジョニーデッ…

第1176回  水俣とMINAMATAの違い

ジョニー・デップが写真家のユージン・スミスを演じる映画、「MINAMATA」を観てきた。 これは「水俣」の映画とは言えないので、「ユージンスミスと水俣」というタイトルくらいが、ちょうどいい。 ユージンスミスの写真については昨日書いたとおりなのだけれ…

第1175回 「MINAMATA」のユージンスミスと、森永純

ジョニーデップが製作・主演の「 MINAMATA」が、京都でも観られる。 この時代に、改めて水俣のことに注目がいくことは、大事なことかもしれない。 しかし、私は、風の旅人の誌面で、ユージンスミスの写真は、日立関係のもの(高度経済成長下の日本人)を編集…