芸術

第1516回 写真における、独自の視点と、その人ならではの姿勢。

">(新刊の「かんながらの道」より "> 東京の写真を撮っている人は、とても多い。 そして、それらの写真を持ち上げる際に、「独自の視点で東京と切り取った!」という言葉が使われることが、とても多い。 気鋭の写真家とか、重鎮の写真家とか、なんでもいい…

第1515回 「狂」という特別な霊力。

10,000人の感想よりも、その人の一言が、自分の方向性を決めることがある。 私が、ずっと長い間、自分がアウトプットするものが果たしてうまくいっているかどうか、確認するための指針としている方から、このたびの「かんながらの道」に対するお言葉をいただ…

第1514回 思念の宙返りと、新しい世界の円環

"> 恋愛において、どんなに異性にもてる人でも、自分の意中の人に振り向いてもらえないと、心の中は辛く悲しいはずで、それは、物づくりでも同じ。 100人の感想よりも、あの人の心に届くかどうかが気になるという存在がいる。 なので、新しく本ができれば、…

第1511回 この世から肉体は消えても。

2018年、鬼海さんと小栗さんと一緒に、神護寺や亀岡の紅葉を楽しんだ。 "> 人生において、明確に自分の意思や計画だけで始めて、続けていることが、どれだけあるだろうか。 私の場合、何かしらの縁をきっかけにして始めて、やっているうちに天命だという気持…

第1510回 空海の思想の奥義と、かんながらの道

">このたび発行する「かんながらの道」〜日本人の心の成り立ち〜の制作において、空海の思想を、頭の片隅に置いていました。 今日の思想世界の混迷のなかで、日本から生まれた空海の叡智を、再発見する必要があると私は思っているからです。 空海の思想の核…

第1509回 すべてをこの地上の生のうちに見ること。

「 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜」の納品日が、10月26日と決まりました。 ワークショップ の日と重なってしまうので、受け取りのタイミングが問題。 それはともかく、オンラインでの販売サイトを立ち上げました。 詳しくは、次のアドレスからホー…

第1508回 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜

"> 今年中に出版するつもりで取り組んできた日本の古層Vol.5「かんながらの道」の入稿が終わった。 完成は、来週末(10月25日、26日)に行うワークショップに、ぎりぎり間に合うタイミングか。 今回は、日本人の心の成り立ちに焦点をあてて、仮名文字が日本…

第1505回 おのずから、しからしむ道

伏見稲荷大社は、外国人旅行客の人気ナンバーワンの場所だそうで、連日、ものすごい人だかり。 境内には、「伏見稲荷は祈りの場です」という言葉が掲示されているが、果たして、どれだけの人が、祈るために、この場所に来ているのか? しかし、聖所というの…

第1504回 五大の響きと、写真表現。

連日、京都市内をピンホールカメラで撮影し続けている。 京都の観光名所に群がる人たちは、いろいろな会話をかわしながら、人とぶつからないように巧みに左右に進路を変えながら歩いていて、その場にはすごいエネルギーが渦巻いている。 私は、その場に三脚…

第1503回 細江英公さんが、超新星爆発のように生涯を終えられた。

写真/細江英公 風の旅人39号より 「薔薇刑」、「鎌鼬」、「胡蝶の夢」、「抱擁」、「男と女」、自分の書棚にこれらの写真集が置かれている幸運な人は、今、改めて見つめ直しているかもしれない。 戦後日本の写真表現界が生んだ大きな大きな星、細江英公さん…

第1498回 天を指す人工物に惹かれる心

東京に何かしらの用事で出かける時は、必ず、ピンホールカメラと三脚を持って、用事の前後、歩き回って撮影するようにしている。 ダラダラと歩くのではなく、撮影する意思を持って歩いていると、暑い中、重い荷物を持っていても、あまり疲れを感じない。 ピ…

第1497回 東京の中に潜む古代性

今思えば、東京の中に潜む古代性や懐かしさに対して、小説作品にまで昇華させていたのは日野啓三さんだった。 1970年代から80年代にかけて、日野さんは半蔵門近くに住み、深夜、皇居周辺を歩き回りながらコンクリートの冷え冷えとした感覚の向こうに、何かし…

第1496回 未来につながる記憶に潜り込む写真

先日、中藤毅彦の新作写真集「「DOWN ON THE STREET」について文章を書いたが、彼は、2018年に「White Noise」という自らの思い入れの強さが特に反映された写真集を作っている。 この本は、彼が尊敬する写真家の川田 喜久治さんの歴史的傑作である『地図』と…

第1495回 古事記の冒頭の神々が意味するのは、宇宙の根本原理(続き)。

クラゲの話から広がって、さらなる続きを。 地域ごとに異なる神々を信仰していた古代日本において、一つの国としてまとまる時代的必然性が生じた時、普遍的宗教の仏教の理念が取り入れられた。 古事記の冒頭、アメツチはじめの時に登場するアメノミナカヌシ…

第1494回 古事記の冒頭の神々が意味するのは、宇宙の根本原理。

八景島シーパラダイスに行った。意外と強く心を惹かれたのは、クラゲたち。 海でクラゲを見つけると、気持ち悪くて逃げてしまい、じっくりと観察することはないけれど、水族館では、色々な種類のクラゲをじっくりと見ることができる。この原始の生物は、5億…

第1493回 世界共通の「現代」を前向きに生き抜く力

私は40歳になるまで写真界とは無関係だったのに、2003年、突然、風の旅人というグラフィック雑誌の制作を始め、2015年10月まで50冊を制作した。 創刊当時の執筆者は、白川静さん、川田順造さん、河合雅雄さん、日高敏隆さん、養老孟司、松井孝典さんといった…

第1492回 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。

「彼岸に目を向けることなく、すべてを、神に関することも、死も、すべてこの地上のこととして考え、すべてをこの地上の生のうちに見ること。 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。 すべてのものを価値に上下のないものとして…

第1491回 日本という国の宿命

ペルセウス座流星群が極大を迎えた8月12日深夜、北海道では低緯度オーロラが観測され、流星群とオーロラの共演が見られたと話題になった。 確かに美しいのだが、なんだか不吉な気配もある。 測量工学の世界的権威としても知られる村井俊治(東京大学名誉教授…

第1490回 狭い舞台空間を広大な時空に変成する小池博史のブリコラージュ力。

photo by 許方于 感想を書いているうちに長くなる。複合的で多面的で多層的に大事なことなので手短に書くことは不可能。だから仕方がない。 一昨日、小池博史の脚本・構成・演出による舞台、「Breath Triple」を体験するために、猛暑のなか、木場まで行った…

第1487回 人類史上稀にみる世界的規模の画一化、標準化、規格化の時代を生き抜く力(2)。

昨日書いたことに通じる問題だけれど、現在は、映像の加工ソフトの技術進化が著しくて、富士山の写真に無数の星々が煌く天体写真を合成したり、日頃は敵対する動物同士を仲良くさせたり、フェイク画像を簡単に作り出すことができる。 いわゆる社会問題や政治…

第1486回 人類史上稀にみる世界的規模の画一化、標準化、規格化の時代を生き抜く力(1)。

7月19日、「過去最大のIT障害」とされる世界的なシステム障害が起きた。 空港や銀行がストップ…医療システムや緊急通報まで大混乱。 このシステム障害は、ウィンドウズパソコンに搭載したセキュリティソフトが原因で、ソフトが自動でアップデートされた際…

第1482回 「社会問題」や「国際問題」を伝達する表現について(2)

さきほど書いた問題にも通じることなのだが、アメリカで、トランプ前大統領が銃撃された。それを伝えるTBSの報道番組で、膳場貴子アナと、元外務省事務次官で立命館大学客員教授の藪中三十二氏のやりとりで、この事件が、「大統領選挙に有利になる可能性があ…

第1481回 「社会問題」や「国際問題」を伝達する表現について(1)

「KYOTOGRAPHIE」を京都の春の風物詩にまで育て上げた主催者の努力への敬意とは別に、この記事で、ダニエル・アビー氏が批評していることは、非常に大事なことを含んでいる。 www.tokyoartbeat.com 特に今日の写真表現の有様について深く考えるべき立場にい…

第1480回 山頭火の人生に重ね合わせた人生

まっすぐな道でさみしい(山頭火) 放浪の俳人山頭火。その人生を、ひとり語りで演じ続けていた林田鉄さんが、7月10日、あちらの世界に旅立たれた。 あまりにも突然で驚いた。 林田さんは、ワークショップの常連だった。5月25日に京都で開催したワークショッ…

第1479回 小さな映画のようで、実は深遠なる映画。「丘の上の本屋さん」

昨日、2023年に公開された「丘の上の本屋さん」というイタリア映画を観た。ユニセフ共同製作で、監督・脚本は、クラウディオ・ロッシ・マッシミという無名の人だが、小品ながら、とても深遠なる映画だった。 舞台はトスカーナの小さな村の書店。大がかりな状…

第1478回 表現における現代的停滞(頽廃)を超える行先

現在、上野の森美術館で、「石川九楊大全」展が開催されていたので行ってきた。 広大な上野の森は、いつも大勢の人で溢れているが、上野の森美術館方面に歩く人は少なく、鬱蒼と茂る大樹の陰は、厳しい暑さを和らげてくれた。 私は、書道について詳しくはな…

第1477回 迦微(かみ)に出会うところ。

奥山の岩に苔むし 畏(かしこ)けど思ふ心を いかにかもせむ」 よみ人知らず(万葉集 日本の国歌の「君が代」においても、「苔のむすまで」という言葉があるが、むす」は、「産す」であり、万物を生み出す「かみ」の存在が、そこに意識されている。 なので、こ…

第1474回  日本人の心が、どう作られてきたか。「いろは歌」の果たした役割。

私たち日本人は、日本語を使って物事を理解し、日本語を使って物事を考えている。だから、私たちの思考やイメージが日本語の影響を受けていることは当たり前であり、日本文化も、日本語という言語の特質を抜きに存在しえない。 日本人とは何か?という問いに…

第1473回 現代の世界と、詩への希望。

シュテファン・バチウという亡命詩人について、知っている人はほとんどいないと言っていいかもしれない。 私も、知らなかった。 この詩人のことだけでなく、この詩人が生まれたルーマニアについても特別な関心を持っている人は、ほとんどいない。 だが、私は…

第1472回 日本文化に宿る自然体という美意識。

西欧の美というのは、例えばベルサイユ宮殿の庭園のように、それじたいが、「これこそが美だ!」と主張してくる。 それに対して、日本が長い時間をかけて洗練させてきた美は、例えば苔寺のように、それを観る人の心に自由の余地を残す。 ただ単に、綺麗とか…