芸術

第1171回 『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 を読み終えて 

『水俣 天地への祈り』 田口ランディ著 河出書房新社発行 https://www.amazon.co.jp/%E6%B0%B4%E4%BF%A3-%E5%A4%A9%E5%9C%B0%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A-%E7%94%B0%E5%8F%A3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3/dp/4309029922 久しぶりに、深い…

第1161回 有為転変の出来事そのものではなく、この世を司る理。

Sacred world 日本の古層 vo.2の最後の14ページは、ピンホール写真と、上嶋鬼貫の俳句のコラボレーションになっている。 上嶋鬼貫は、芭蕉と同じ時代の俳人で、東の芭蕉、西の鬼貫と高く評価されていたものの、芭蕉ほど知名度が高くない。しかし、リルケなど…

第1149回 村上春樹氏の SNSに対する言葉について

村上春樹氏が、 SNSについて言及した言葉が、話題になっているようだ。 「大体において文章があまり上等じゃないですよね。いい文章を読んでいい音楽を聴くってことは、人生にとってものすごく大事なことなんです。だから、逆の言い方をすれば、まずい音楽、…

第1148回 民族が積み重ねてきた歴史文化風土

【かんでんコラボアート】 2月26日(金)〜3月3日(水) 平日10:00〜19:00 土日10:00〜17:00 最終日は15:00まで 堂島リバーフォーラム 1階ホール 大阪市福島区福島1-1-17 10年以上前だけれど、風の旅人の第39号で、日本のアール・ブリュットを欧米で紹…

第1131回 無念を承知の人生。

池袋で、鬼海弘雄さんの供養のための飲み会が終わった。鬼海さんの本当の供養は、という話となった。鬼海さんが、あちらの世界で、もっとも喜ぶであろうことは? 人は、この世を去ることで、良い意味で悪い意味でも。その存在が、永遠となる。人は亡くなって…

第1130回 魂の交流と、天命

お使い帰りの兄妹 撮影:鬼海弘雄 生前、私を同志と言ってくれた鬼海さんは、2020年10月19日、75歳で逝ってしまった。 そして、若造の私にとって恩師だった日野啓三さんは、2002年10月14日、73歳で他界された。鬼海さんも日野さんも、ほ…

第1129回 撮ることの秘儀  鬼海弘雄さんの写真について

鬼海弘雄さんの写真で素晴らしいものはたくさんある。 その中で、例えば、この一枚の写真には、鬼海さんの人柄や、哲学、そして写真の凄さ、写真表現だからこそ可能なことが、ぎゅっと詰まっている。 これは、鬼海さんが、トルコのアナトリア地方を旅してい…

第1128回 追悼 鬼海弘雄さん(2)

Impact hub Kyoto で行った鼎談「黙示の時代の表現〜見ることと、伝えること〜」(右から、鬼海弘雄さん、小栗康平さん、佐伯剛) 撮影:市川 信也さん 2018年11月11日。とっても楽しかった。この後、小栗さんと鬼海さんで、何日、我が家に泊まって…

第1127回 追悼 鬼海弘雄さん(1)

10月19日、鬼海弘雄さんが、2年あまりのリンパ腫との闘病の末、亡くなった。 春頃までは、電話がかかってくれば、次の本作りのことや、良くなったらあと一回、トルコに取材に行きたいなあとか、そういう前向きな話ばかりだった。きっと、自分を鼓舞して…

第1116回 時を超えた物づくり

亀岡の歴史探求の延長で、亀岡の漆作家、土井宏友さんの工房へ。最近、古代の丹生、すなわち辰砂(硫化水銀)の産地を訪れることが多く、土井さんは、本物の辰砂を使った漆作品を作っている。 また、土井さんは、古代から大切にされてきた錫(銅と化合させて…

第1082回 神の使者、ライチョウと、水越武さんの写真。

写真家の水越武さんの新著、「日本アルプスのライチョウ」が、手元に届いた。 https://www.shinchosha.co.jp/book/315233/ 本当に素晴らしい! ここ最近見た新著の写真集のなかで、もっとも素晴らしい。 写真集としては小さなサイズだけれど、この小ささで、…

第1071回 鬼海弘雄 最新写真集 SHANTI persona in india

https://www.chikumashobo.co.jp/special/persona/shanti/ スマホで、色調その他色々と調整ができて、手軽に撮影ができる時代、プロとアマチュアの差がほとんどわからなくなった時代。もはや、「いい写真だね」という言葉は、褒め言葉でもなんでもなくて、た…

第1066回 過去と未来の橋渡しになる映像を

亀岡 御霊神社 ピンホールカメラで撮影した日本の古代の聖域の写真を紹介するホームページを一新しました。 ​​ https://kazesaeki.wixsite.com/sacred-world 日本というのは、たぶん世界の中でも実に特殊な国で、一千年以上も前の歴史を探るために、文献の量…

第1063回 時間の流れ

http://www.bitters.co.jp/satantango/ タルベーラ監督の『サタンタンゴ』について、さらに重要なポイントについて、考えてみたい。 7時間を超えるこの映画を構成している僅か150カットの長回しのシーンの一つひとつ。5分を超える長回しの撮影のあいだ、…

第1062回 それぞれの世紀末 

http://www.bitters.co.jp/satantango/ タルベーラ監督の『サタンタンゴ」。7時間18分という驚くべき長さを誇る映画だが、カット数は、わずか150カット。 ハリウッド映画を見習ったような俳優の動きで物語を作り出していくようなタイプの映画は、2時間たら…

第1046回 広河隆一氏の性的暴行事件について(4)

広河隆一氏が、月刊雑誌に、今回のセクハラ事件に対して「手記」を書いて掲載している。 このタイミングで、手記を書く方も書く方だが、掲載する方の神経も理解できない。 手記を書くのは構わない。しかし、ふつう、手記というのは、事件がなんらかの結論に…

第1042回 能面に伝わる人類のタマシイ

ニューヨークに活動の起点を置く写真家、井津建郎さんが京都に来て、数日間、一緒に過ごすことになった。 井津さんは、7、8年ほどかけて一つのテーマをじっくりと追っているが、現在のテーマは、日本の能面。彼が撮った能面の凄みのある写真を見せてもらい…

第1026回 リアリティと幻想の交錯

4月5日、写真家の森永純さんが亡くなった。80歳だった。森永純さんのことを、知っている人は少ないと思う。森永純さんは、日本の写真界で、写真展という形で最初に展覧会を行った人だ。それまで日本における写真家というのは、雑誌や新聞などに素材を提供す…

第1021回 宇宙の摂理と人間をつなげる力。〜ウィリアム・ターナーの絵画世界〜

京都文化博物館でターナー展が始まったので、さっそく見に行ってきた。 20歳の時、大学を中退して放浪中に、ロンドンのテートギャラリーで見たターナーの絵画。それまでヨーロッパの絵画には大して心動かされなかったが、ターナーの絵は格別で、心が震えた…

第1020回 個々の死を超える自然の大調和の世界

2月10日、石牟礼道子さん亡くなられた。90歳だった。 石牟礼さんのロングインタビューを行ったのは、2014年の春だった。6月1日に発行する「風の旅人」の第48号に間に合わせるための、ギリギリのタイミングだった。 インタビューの予定は、1月…

*第1014回 時代や地域が変わっても変わらないもの

11月2日に、スタンフォード大学京都プログラムで来日している学生達に、編集と日本的な時空間の関係などを講義する機会をいただいた。もちろん、『風の旅人』をベースにしての話だ。 2003年4月から50冊の『風の旅人』を作ってきたが、対談や講演で…

第1006回 ありのままを伝えることの深み〜ジャン-ウジェーヌ・アッジェと鬼海弘雄の街の写真〜

撮影:ジャン-ウジェーヌ・アッジェ 一昨日、神戸まででかけた時、もう10年以上、連絡もしていない同郷の写真家のことを、ふと思い出した。 そして、驚いたことに、昨日、突然、その写真家からメールがきた。 「佐伯さん、お元気ですか。素晴らしい写真集…

第1004回 世界でいちばん美しい村

(撮影:石川梵) 石川梵監督の「世界でいちばん美しい村」というドキュメント映画がある。日本全国で上映され、人々の心を捉えているが、6月17日から、大阪の第七藝術劇場でも公開される。 http://www.nanagei.com/ 6月19日には、13時55分からの…

第1002回 天の恵みを授かる作法ー鈴鹿芳康の作品世界ー

鈴鹿芳康は、アーティストである前に旅人である。旅人というのは、実際にその環境を訪れて、土地と空気と水などの物質や様々な価値観をもった人々と身体感覚を通して交じり合う感覚をリアルなものと記憶しているから、その感覚を抜きに、物事を判断すること…

第1001回 「室礼展」に見る、緩く心地よいつながり。中央集権的な構造から分散処理的な構造へ。

京都ではKyoto Graphieという写真祭りで盛り上がっています。私も、この期間中、「The Terminal Kyoto」というところで、最近、ピンホールカメラで撮り続けている古樹の写真を、和紙に出力して展示させていただいています。 Kyoto Graphieが写真メインの展示…

第1000回 自分のモラルから言葉や表現物を発するということ

小栗康平監督のDVDブックのFOUJITA (小栗康平コレクション 別巻) <駒草出版>が発表された。 https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=25VR46+1RPEIA+249K+BWGDT&a8ejpredirect=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2Fdp%2F490544778X%2F%3Ftag%3Da8-affi-145793-22 装…

第998回 もののあはれと幽玄

第7回 風天塾開催 もののあはれと幽玄〜近代合理主義を超えて〜「源氏物語と日本文化の秘めた力」 お申し込みはこちら➡︎https://www.kazetabi.jp/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/ (和蝋燭の灯りに照らされた空間で) 日時 2017年4月28日(金…

第992回 1000年前よりも遥か以前と現代の紐帯になる源氏物語

私は源氏物語の研究者でもなんでもないが、なぜかその私が、同志社大学で源氏物語関係のイベントを企画しているので、最近、これまでよりも源氏物語を身近に引きつけて考える癖がついている。 1,000年前に書かれた源氏物語は、欧米世界では近代小説の傑作と…

第991回 根源と全体を受容すること②

小栗さんと京都の清水あたりを歩いている時、小栗さんがデビュー映画「泥の河」を作ってまもなく、若狭と東大寺のお水送りとお水取りのリポーターをやった時の話をされた。 この時のことは、1987年に発行された「哀切と痛切」という本の中に書かれている…

第990回  根源と全体を受容すること①

20歳の頃、2年間の諸国放浪の前後、計り知れない影響を受けた人物が二人いた。一人は小説家、もう一人は映画監督。 世界に対する視点、世界への向き合い方、掘り下げ方は、この二人の作品世界に触れたことで、かなり方向付けられた。それまで試行錯誤しな…