歴史

第1120回 ”いかるが”の背後にあるもの(3)

加古川のいかるが、鶴林寺の本堂と太子堂。 (第1119回の続き) 日本神話において、日本を一つにまとめるために東に西にと遠征し続けたヤマトタケルの出生地が、兵庫県加古川の”いかるが”の地である。 前回の記事で書いたように、加古川の西岸には仁徳天皇陵…

第1119回 ”いかるが”の背後にあるもの(2)

西播磨のいかるが。兵庫県揖保郡太子町の斑鳩寺。 ”いかるが”と聞くと、一般的には、聖徳太子の法隆寺がある斑鳩を連想するが、その歴史は、もっと古い。”いかる”は、洪水を意味するイカリミズとつながり、感情が溢れ出す怒りでもあり、それは祟りともつなが…

第1118回 ”いかるが”の背後にあるもの(1)

斑鳩の法隆寺のことを知らない人はいないと思うが、イカルガという地名は、私の知る限り、近畿圏で6箇所ある。 そして、その中で、斑鳩の法隆寺が一番古いというわけではない。 日本の古代史のなかで、史実かどうかはともかく、もっとも古いイカルガの記録…

第1117回 京都の古層と、北野天満宮。

京都、太秦の地に築かれた蛇塚古墳。石室は全長17.8メートルで、同じ飛鳥時代に作られた石舞台古墳に匹敵する。玄室の大きさは日本で六番目、積み上げられた岩石は、チャートである。 京都の北野天満宮は、九州の太宰府天満宮とともに学問の神様として崇めら…

第1116回 時を超えた物づくり

亀岡の歴史探求の延長で、亀岡の漆作家、土井宏友さんの工房へ。最近、古代の丹生、すなわち辰砂(硫化水銀)の産地を訪れることが多く、土井さんは、本物の辰砂を使った漆作品を作っている。 また、土井さんは、古代から大切にされてきた錫(銅と化合させて…

第1115回 菅原道眞と藤原道長のつながり

第1112回ブログ 「歴史を知ることは未来を知ること」 https://kazetabi.hatenablog.com/entry/2020/06/28/172054 の続き。 この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば 藤原道長が詠んだとされるこの歌は、盤石な権力を手に入れ、得意の…

第1114回  美意識と人生の選択。

京都郊外、日本一の高さを誇る花脊の三本杉。現存する樹木としては国内最高となる62.3メートル(右端の杉)、残りの二本も、国内第2位と5位。 古樹と巨岩と水の流れ。悠久の時間を感じさせるものと、絶えず流転していくもの。古代から日本人の心に受け継が…

第1113回 自然と人間のあいだ

1日の降雨量が、1ヶ月の平均総雨量と等しいとか、その2倍、3倍であるという報道が増えた。 梅雨の7月は、例年でも降雨量が多いのに、以前なら1ヶ月かけて降り積もった雨量が、たった1日で降ってしまうという状況は、いったい何を物語っているのか。 …

第1112回 歴史を知ることは、未来を知ること。

私が子供の頃もそうだが、日本の歴史教育は、本当につまらないものになっている。「鳴くよウグイス平安京」と、何年に何が起こったかと、権力者や優れた業績を残した人の名を覚えることが重要視され、教科書に載っていることを正確に覚えて書けるかどうかを…

第1111回 わかりやすい自分事と、わかりにくい他人事で切り分けるのではなく。

近年、テレビメディアやSNSの影響からなのか、人々は、わかるかわからないか、共感できるかできないか、という単純な線を引きたがる傾向が強い。 しかし、わかることや簡単に共感できることというのは、自分の経験の中で処理できることにすぎず、重要なこと…

第1110回 現代人にも受け継がれている縄文の世界観や生命観。

山添村 縄文時代早期の遺物が多く出土した大川遺跡の目の前の名張川。 最近、山の中に分け入って、激しく急流が流れるところを訪れることが多いのだが、そういう場所の近くに見晴らしの良い高台があり、そこに縄文人が住んでいたと知ると、縄文の人たちの世…

 第1109回 「命は何よりも大事」と言う時のいのちとは何か?

今回のコロナウイルス騒動で、強く感じた違和感。「命は何よりも大事」という時の”命”とは一体何を指しているのかということ。 生命尊重という言葉を使っていると、現代社会においては、まず誰からも非難されることはなく、腹の中で何を考えていようが、良心…

第1108回 未来の土壌となる記憶

東京が日本の中心になって、日本の歴史が見えにくくなってしまったことは間違いないだろう。 しかし、400年前まで東京は辺境の地だったわけで、時代環境が変われば、辺境だった地域が中心になる可能性もある。 その場合、インフラの変化は大きな意味を持…

第1107回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(10)

奈良県宇陀郡曽爾村、済浄坊の滝 神話に事実が厳密に書かれているわけではない。神話は、大切なものを次世代に伝えていくために創り出された物語だ。 神話は、その多くが口承によるものだったため、人間の記憶に頼らざるを得ず、人から人へと伝えていくうち…

第1106回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(9)

山添村 神野山 鍋倉渓。真っ黒で重く硬い「角閃石斑れい岩」の巨岩が谷を埋め尽くす。 1995年から本格的に発掘が進められてきたトルコのギョペクリ・テペ遺跡が、放射性炭素年代測定によって12000年も前のものであることが証明された。 この地の神殿は、繊細…

第1105回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(8)

曽爾村で出会った辰砂(硫化水銀) 私はこれまでの人生で、野生の狐が原野を飛び回っているのを見たことがない。 鹿とか猿なら、日本の聖域を探求中に色々なところで見ることがあるが、狐だけは見たことがなく、子供の頃からの記憶を辿っても思い浮かばない…

第1104回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(7)

赤目四十八滝 【布曳滝】 修験道の祖とされるのは、役小角(634年-701年)であり、空海(774-835)より100年ほど前の時代を生きたとされる。役小角は、聖徳太子や蘇我氏の時代から大化の改新や白村江の戦いなどを経て天智天皇の時代となり、壬申の乱に勝利し…

第1103回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(6)

室生龍穴神社 奥宮 古代中国で、牛は神聖な生物だった。牛に対する崇拝は、「物」という漢字にも現れている。物とは万物のこと。万物は牛から始まった。ゆえに牛が偏となっている。 また、古代において、祭祀の時に不可欠だったのが牛で、牛は生贄だった。犠…

第1102回 神話のわかりにくさの背後にあるもの。

日本神話に出てくる神や天皇の名前は、長くて、わかりにくくて、覚えにくい。そして、名前ばかりが連なっているところもあり、筋がぼやけてしまう。 でも、これはきっと、わざとそうしている。 20歳の時、大学を辞めて2年間ほど諸国放浪したが、リュック…

第1101回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(5)

かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀と滑った 後ろの正面だあれ? 表の裏は表である。 表の裏のまた裏は表であるというのは、本来は一のものを二つに分ける現代人の合理的な分析だが、表の裏が表であることがわからないと、日本の…

第1100回 日本の古層vol.2 祟りの正体。時代の転換期と鬼(4)

伊賀の鍛冶屋にある山神遺跡の磐座。巨石の前面から古墳時代の土師器片と推定される遺物が見つかっている。この遺跡の東3kmのところに木津川が流れており、すぐ近くに元伊勢とされる猪田神社が鎮座する。このあたり、伊賀の鍛治拠点の一つと考えられる。 今…

第1099回 日本の古層vol.2   祟りの正体。時代の転換期と鬼(3)

日本の歴史は、リーダー(権力者)の足跡を追っていても本質が見えてこない。 リーダー(権力者)は、今でもそうだが、必ず他の誰かに取って代わられることが前提であり、その人物の治世において何かが成されていたとしても、その多くが、それ以前に準備され…

第1096回 日本の古層vol.2   祟りの正体。時代の転換期と鬼(2)

赤岩尾神社 祭神はカグツチ。柱状節理で知られる。平安中期、金鬼、風鬼、水鬼、隠形鬼の4人の鬼ともに朝廷と戦った藤原千方は、 ここで必勝祈願をした。。 日本の鬼伝説は、異なる時代にいくつかあるが、共通しているのは時代の転換期であることだ。 桃太…

第1093回 森羅万象の摂理と、ピンホール写真。

原初というのは、終わってしまった過去ではない。森羅万象の摂理においては、そこから生まれたものは、そこに還っていく宿命にある。 このたび制作した「Sacred World 日本の古層 Vol.1」に掲載されている写真は、この数年間、日本の様々な聖域を訪れ、すべ…

第1085回 日本の古層vol.2   祟りの正体。時代の転換期と鬼(1)

怨霊と聞くと、菅原道眞(845ー903)がよく知られているが、道眞の死より少し前にも、怨霊が日本を騒がせていた。 9世紀、日本は、疫病の大流行(859〜877)や、貞観の富士山の大噴火(864-866)、そして貞観大地震と貞観の大津波(869)などに襲われていた。…

第1083回 もののあはれという、日本人の運命の受け止め方

コロナウィルスで、かつて経験したことのない重い空気が世界を覆っている。 私は、2015年10月に発行した風の旅人の第50号で、次号の告知として、「もののあはれ」を発表したものの、その底深いテーマの前に途方にくれ、そのままになってしまっていた。 日本…

第1081回 歴史的転換期の中のコロナウィルス騒動

現在起きているコロナウィルス騒動で、専門家が、もしアメリカで何も対策を講じなければ、死亡率が爆発し約1,000万人が死亡するとシミュレーションをしている。アメリカ人の約75%が感染し、4%が死亡した場合、それは1,000万人の死亡、つまり第二次世界大戦…

第1080回 黙示の時代

台風被害や大規模な山火事の後にパンデミック、ここにイナゴが地上を覆うような状況にでもなれば、黙示録の世界ではないかと思っていたら、バッタが大発生していた。https://tocana.jp/2020/03/post_148608_entry.html 現状の勢いでは1日に35000人分の食物を…

第1078回  日本の古層(24) 元伊勢と鬼伝説の大江山(3)

(前回の続き。) 政治に陰陽五行道を取り入れた天武天皇の時代の頃に定められたであろう近畿の五芒星のことを前回の記事で書いたが、その五芒星のど真中、平城京の傍に日葉酢媛の御陵を含む佐紀盾列古墳群(さきたてなみこふんぐん)がある。 紀元4世紀の…

第1077回 日本の古層(23) 元伊勢の鬼伝説の大江山(2)

(前回の続き) 日葉酢媛が亡くなった時、野見宿禰の垂仁天皇への助言によって、殉死の代わりに埴輪を埋めることが始まったと記紀に書かれている。 野見宿禰は、古墳の造営に携わっていた土師氏の祖とされ、”野見”という名は、”野”と”見る”という言葉の組み…