歴史

第1536回 日本に秘められた可能性

"> この8年間、日本の古層を探究してきたけれど、今、なぜ東京を撮るのか。 私は、風の旅人を作っていた時も、日本の古層をめぐる旅をしている時も、自分の関心は同じで、それは、世界、人間、そして日本人というものを、もっと深く知りたいということ。 だ…

第1535回 八幡神の謎について

離宮八幡宮 "> 大山崎山荘美術館にアンドリューワイエス展を見に行った後、すぐ近くの離宮八幡宮に立ち寄った。 ここは気になる聖域であるため、何度も立ち寄っているのだが、この対岸の男山に鎮座する石清水八幡宮の元宮で、石清水八幡宮の創建の1年前の859…

第1534回 掻き消えてしまいそうな自我のゆくえ

小野啓という写真家がいる。 ホームページで全国の高校生に呼びかけて、写真を撮ってもらいたいという声に応えて、彼らの土地まで足を運んで対話を行って撮影している。 今から17年も前だが、撮影における、そうした丁寧なプロセスがとてもよく写真に反映さ…

第1519回 羽衣伝説の謎について

竹野川河口にそびえる立岩 羽衣伝説についてのあれこれ。 昨日、丹後半島を休暇気分で訪れて、その最後にジオサイトで出会った翁が語ったこと。「古代最大の製鉄遺跡である遠所遺跡で用いられた砂鉄が、丹後のものではない」という話が心に引っかかって、家…

第1518回 京都の三本鳥居の謎について

宇多天皇が創建した仁和寺で平寿夫さんの「熊野」に関する写真展を見た後、帰り道にある太秦の蚕の社へ。 宇多天皇は、日本で最初の法皇だが、熊野は、出家した宇多天皇が、たびたび修行のために訪問した場所である。 宇多天皇が、なぜ出家したのか? 様々な…

第1515回 「狂」という特別な霊力。

10,000人の感想よりも、その人の一言が、自分の方向性を決めることがある。 私が、ずっと長い間、自分がアウトプットするものが果たしてうまくいっているかどうか、確認するための指針としている方から、このたびの「かんながらの道」に対するお言葉をいただ…

第1514回 思念の宙返りと、新しい世界の円環

"> 恋愛において、どんなに異性にもてる人でも、自分の意中の人に振り向いてもらえないと、心の中は辛く悲しいはずで、それは、物づくりでも同じ。 100人の感想よりも、あの人の心に届くかどうかが気になるという存在がいる。 なので、新しく本ができれば、…

第1513回 日本人とは何か? 日本文化とな何か?

"> ここ数年、遺伝子解析の技術が進んでいるようで、数限られた古代人の人骨のDNAと、現在の日本人のDNAの比較が行われている。その結果、これまで考えられていたような、日本人の起源を縄文人と弥生人のどちらかとする説ではなく、古墳時代に大挙してやって…

第1510回 空海の思想の奥義と、かんながらの道

">このたび発行する「かんながらの道」〜日本人の心の成り立ち〜の制作において、空海の思想を、頭の片隅に置いていました。 今日の思想世界の混迷のなかで、日本から生まれた空海の叡智を、再発見する必要があると私は思っているからです。 空海の思想の核…

第1509回 すべてをこの地上の生のうちに見ること。

「 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜」の納品日が、10月26日と決まりました。 ワークショップ の日と重なってしまうので、受け取りのタイミングが問題。 それはともかく、オンラインでの販売サイトを立ち上げました。 詳しくは、次のアドレスからホー…

第1508回 かんながらの道〜日本人の心の成り立ち〜

"> 今年中に出版するつもりで取り組んできた日本の古層Vol.5「かんながらの道」の入稿が終わった。 完成は、来週末(10月25日、26日)に行うワークショップに、ぎりぎり間に合うタイミングか。 今回は、日本人の心の成り立ちに焦点をあてて、仮名文字が日本…

第1507回 不易流行と、現代都市文明。

風の旅人 第43号より 写真/石元泰博 「シカゴ シカゴ」や「桂離宮」などの写真で知られ、戦後日本写真界でもっとも重要な写真家である石元泰博さんは、長いあいだ五反田に住んでおられ、90歳に近い年齢の頃、カメラを首からぶらさげて山手線に乗って、渋谷…

第1506回 約束の地をめぐる煩悩の醜い争い。

これまで何度も惨たらしい争いが繰り広げられてきた中近東で、もっとも深刻かもしれない事態がはじまって1年が経つ。 ポケベル爆弾といった最新テクノロジーを使いながら、3000年前のユダ王国を引き合いに出して自らを正当化するという傲慢。 その傲慢さは、…

第1505回 おのずから、しからしむ道

伏見稲荷大社は、外国人旅行客の人気ナンバーワンの場所だそうで、連日、ものすごい人だかり。 境内には、「伏見稲荷は祈りの場です」という言葉が掲示されているが、果たして、どれだけの人が、祈るために、この場所に来ているのか? しかし、聖所というの…

第1504回 五大の響きと、写真表現。

連日、京都市内をピンホールカメラで撮影し続けている。 京都の観光名所に群がる人たちは、いろいろな会話をかわしながら、人とぶつからないように巧みに左右に進路を変えながら歩いていて、その場にはすごいエネルギーが渦巻いている。 私は、その場に三脚…

第1502回 京都がなぜ千年の都になったのか。

">前回の記事で、平安京が、四神相応ではなく、京田辺の甘南備山を軸にして、その真北に朱雀通りや大極殿が来るように設計されたということを書いた。 このことで明らかにしなければいけないのは、なぜ京田辺の甘南備山が軸になったかということだ。 桓武天…

第1501回 京都の歴史と、京都の現実。

猛暑の東京を歩き回ってピンホール写真を撮り続けていた余韻を引きずったまま、京都に移動してすぐに歩き回った祇園界隈は、2014年から2019年くらい前までの5年間、住んでいたところだった。 その当時、airbnbをやりながら、毎日のように海外からやってくる…

第1500回 かんながらの道

"> 今年発行するつもりの「日本の古層Vol.5 かんながら」は、7月くらいには、ほぼ完成していたのだけれど、今年の猛暑で本なんか読む人はいないんではないかと思い、少し寝かせて、もう少し涼しくなってから印刷すればいいと思っていた。 しかし、8月に入っ…

第1499回 荘子の説く道と、東京での暮らし。

私が東京に暮らし始めたのは、海外放浪から戻ってきた22歳の時で、成田空港に到着してすぐ戸越銀座に向かい、駅のそばの不動産屋で、家賃1万6000円の北向きの4畳半、風呂無し、トイレ共同のアパートを見つけて、その日から入居した。(戸越銀座が都心に近い…

第1498回 天を指す人工物に惹かれる心

東京に何かしらの用事で出かける時は、必ず、ピンホールカメラと三脚を持って、用事の前後、歩き回って撮影するようにしている。 ダラダラと歩くのではなく、撮影する意思を持って歩いていると、暑い中、重い荷物を持っていても、あまり疲れを感じない。 ピ…

第1497回 東京の中に潜む古代性

今思えば、東京の中に潜む古代性や懐かしさに対して、小説作品にまで昇華させていたのは日野啓三さんだった。 1970年代から80年代にかけて、日野さんは半蔵門近くに住み、深夜、皇居周辺を歩き回りながらコンクリートの冷え冷えとした感覚の向こうに、何かし…

第1496回 未来につながる記憶に潜り込む写真

先日、中藤毅彦の新作写真集「「DOWN ON THE STREET」について文章を書いたが、彼は、2018年に「White Noise」という自らの思い入れの強さが特に反映された写真集を作っている。 この本は、彼が尊敬する写真家の川田 喜久治さんの歴史的傑作である『地図』と…

第1495回 古事記の冒頭の神々が意味するのは、宇宙の根本原理(続き)。

クラゲの話から広がって、さらなる続きを。 地域ごとに異なる神々を信仰していた古代日本において、一つの国としてまとまる時代的必然性が生じた時、普遍的宗教の仏教の理念が取り入れられた。 古事記の冒頭、アメツチはじめの時に登場するアメノミナカヌシ…

第1494回 古事記の冒頭の神々が意味するのは、宇宙の根本原理。

八景島シーパラダイスに行った。意外と強く心を惹かれたのは、クラゲたち。 海でクラゲを見つけると、気持ち悪くて逃げてしまい、じっくりと観察することはないけれど、水族館では、色々な種類のクラゲをじっくりと見ることができる。この原始の生物は、5億…

第1492回 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。

「彼岸に目を向けることなく、すべてを、神に関することも、死も、すべてこの地上のこととして考え、すべてをこの地上の生のうちに見ること。 すべてのものを、神秘的なものも、死も、すべて生のうちに見ること。 すべてのものを価値に上下のないものとして…

第1491回 日本という国の宿命

ペルセウス座流星群が極大を迎えた8月12日深夜、北海道では低緯度オーロラが観測され、流星群とオーロラの共演が見られたと話題になった。 確かに美しいのだが、なんだか不吉な気配もある。 測量工学の世界的権威としても知られる村井俊治(東京大学名誉教授…

第1489回 日本人の精神的ルーツと、丹生都比売と空海の聖域

丹生都比売神社 高野山の麓の丹生都比売神社と、丹生都比売が降臨した場所とも伝えられる紀ノ川ほとりの丹生酒殿神社へ。 丹生都比売神社は、丹生酒殿神社の真南の山中に位置しているので、丹生酒殿神社は里宮で、丹生都比売神社が山宮という説もある。 丹生…

第1488回 1000年に渡る祇園祭の祈り

9世紀、貞観の時代、富士山の大爆発や大地震が起き、疫病も流行した。 朝廷は、863年、京都の神泉苑で御霊会を行った。御霊会は、恨みを残したまま亡くなった人々の祟りを鎮めることで、世の安寧を祈る祭だった。 京都の神泉苑は、平安時代の初期、空海が雨…

第1486回 人類史上稀にみる世界的規模の画一化、標準化、規格化の時代を生き抜く力(1)。

7月19日、「過去最大のIT障害」とされる世界的なシステム障害が起きた。 空港や銀行がストップ…医療システムや緊急通報まで大混乱。 このシステム障害は、ウィンドウズパソコンに搭載したセキュリティソフトが原因で、ソフトが自動でアップデートされた際…

第1484回 火山と日本人の精神世界(2)

火山の多い日本のなかでも、特に人々に知られた山としては、九州の桜島、阿蘇山、雲仙岳、そして日本の東西の境目のフォッサマグナに聳える富士山、浅間山、八ヶ岳といったところだろうか。 興味深いことに、この西に三つ、東に三つの六つの山は、対になるよ…