歴史

第1402回 コスモロジーを置き換える時

寒さのピークはこれからかもしれませんが、冬至という折り返し点を越え、今日から少しずつ日が長くなっていきます。 2024年の始まりにあたって、1月13日(土)、14日(日)、第14回、ワークショップセミナー「始原のコスモロジー」を、1月13日(土)、14日(…

第1401回 天命を全うすること

戦後写真界の巨匠で、現在も現役バリバリで、尊敬というより畏怖すべき存在である写真家から、このたび発行した「始原のコスモロジー」について、「白川静さんの『字統』や『字訓』に通じる極めて大きな仕事であり、(写真の)巨樹、巨岩、海、水が、なんと…

第1399回 シンギュラリティ(技術的特異点)と、古代のコスモロジー。

昨日と今日は、今年13回目、今年最後のワークショップ セミナー。 ちょうど一昨日、古代のコスモロジー〜日本の古層vol.4〜が納品されたので、ベストなタイミング。 (詳しい内容は、こちらのサイトへ) www.kazetabi.jp 今回の本、これまでの3冊より写真が…

第1397回 つながる縁の力に支えられて。

私の事務所にある鈴鹿芳康さんと鬼海弘雄さんの写真 鬼海弘雄さんに背中を押されなければ、私は、日本の古層の書籍化を考えなかったけれど、鈴鹿芳康さんとの出会いがなかったら、私はピンホール写真を始めていなかった。 不思議なことに、鈴鹿さんとは、テ…

第1396回 畏れのなかに含まれた敬意や憧憬。

神社や祭祀場などの聖域が、その場所に在る理由は、現場に行かなければわからない。 ひっそりとそこに在る物は、時の風化によって本来の形を変容させていても、何事かの気配を今に伝えており、その気配は、その場所に立ってみなければ感じ取れない。 聖域と…

第1395回 聖域の求心力

文化人類学における誠実な研究者は、異文化世界を理解するために、外から客観的に分析するのは自分が属する世界の基準を異文化世界に押し付けるだけだと弁えている。 しかし、歴史の探究においては、どうだろうか? 文化人類学の場合は、フィールドワークで…

第1394回 誌面を通じた旅体験。

私が、風の旅人を作っていた時、潜在意識に働きかけるビジュアルをリード役とし、その後に言葉によって意識化を深めるという読まれ方を想定していた。 本を買った人は、とりあえずビジュアルの全体に目を通して何らかのイメージを掴む。文章は、その後、少し…

第1393回 日本の大地と聖域について

日本は山国であることを誰でも知っているし、東京23区に住んでいる人以外は、日々、それを実感している。 しかし、なぜ日本が山国なのかという理由を考えることは、あまりない。 一般的には、日本が火山国だからと思っている人が多いのだが、たとえば近畿に…

第1392回 現代人が見失っている「視る能力」について。

中世の人に比べて現代人は、聴覚より視覚に意識が偏っているという話を聞いたことがある。 文化人類学者の川田順造さんが、「曠野から」という本の中で書いているのだけれど、無文字社会のモシ族のフィールドワークにおいて、神話の語り会があるというのでオ…

第1391回 始原のコスモロジー

始原のコスモロジー 日本の古層Vol.4の納品日が決まりました。 12月15日(金)です。 現在、ホームページで、お申し込みの受付を行っています。 出版に合わせて(タイミングが良かっただけですが)、12月16日(土)、12月17日(日)に、東京の事務所で、ワー…

第1390回 人間の傲りを抑制する日本の聖域

真脇遺跡 石川県鳳珠郡能登町 ギリシャのパルテノン神殿やエジプトのピラミッド、シリアのパルミラ、マヤのティカール、エチオピアのラリベラ、アンコールワットやボルブドゥール、タクラマカン砂漠の楼蘭遺跡も含め、世界中に残る遺跡の大半を訪問したけれ…

第1389回 情報とリアリティのあいだ。

何事の おわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる 西行 神社や古墳や祭祀場が、なぜその場所にあるのかという理由は、現場に立ってみなければ感じ取れません。 そして、その場所に聖域を築いた人たちの心の中を自分ごととして引き寄せないと、そ…

第1388回 電子書籍ではなく本にすることの意義。

まもなく「始原のコスモロジー 日本の古層Vol.4」を印刷会社に入稿します。 本という物体は、在庫が悩みの種なので、先行予約をいただいて、印刷数量を決定する予定です。 始原のコスモロジー 日本の古層Vol.4 まもなく発売。予約受付中。 www.kazetabi.jp …

第1387回 人工知能が、積極的に商業的な動機で使われるようになる転機。

人類の将来を左右するかもしれない動きが、世界中の人たちが瞬きしているあいだに行われていたと、後から振り返った時に思うかもしれない。 オープンAIがChatGPTの無料サービスを公開したのは2022年11月30日。まもなく1年になるが、ツイッターで2年、フェイ…

第1384回 イスラエルのイデオロギーと、日本古来の境界意識の違い。

間垣の里(石川県輪島市) イスラエルに限らないが、唯一絶対神の世界は、善悪二元論でもあるので、敵と味方の線引きを明確にしたがる。だから、その境界に、高い壁を築く。ガザを取り囲む壁は、ベルリンの壁よりも高く、その壁は、見方を変えれば、奢り昂っ…

第1383回 イスラエルは、なぜアブラハムのことを自分ごとにできないのか。

ガザとイスラエルの問題は、私なんかが何か意見を言えるようなことではないけれど、ハマスの無差別殺人から始まったこととはいえ、最先端の兵器を大量に備えるイスラエルの、市民や子供の区別なく徹底的に破壊し殺戮し続ける暴挙は、正気の沙汰とは思えない…

第1382回 吉備の鬼退治の真相。

楯築遺跡 吉備には、日本の古代史の真相につながる深い謎が幾つかあり、一昨日に書いた鬼退治のことや、鬼ノ城という山城の存在が、よく知られている。 それ以外の謎として、2世紀後半という、卑弥呼の時代以前に作られた楯築遺跡がある。これは全長70mとい…

第1381回 神話は史実ではないが、単なる空想の産物でもない。

神話は史実ではないが、単なる空想の産物でもない。かといって、権力者による自己正当化の物語でもない。 神話は、古代における秩序形成のために創られたコスモロジーである。 コスモロジーというのは、自分たちが生きている世界をどう解釈し、その世界でど…

第1380回 古代のことを考えるためには地理のことを踏まえる必要がある。

古代の吉備国の聖域は、吉備の穴海にそって築かれていた。 古代のことを考えるためには地理のことを踏まえる必要があり、吉備もまた例外ではない。 古代の吉備において早くから高度な文化が栄えた場所は、現在の岡山市から総社市や倉敷市にかけての一帯だが…

第1379回 この時代の”編集”の仕事について

1年に一度、京都に来て学んでいるスタンフォード大学の学生に対して「編集」に関する講義をしていて、一昨日にそれを行った。途中、コロナ禍があったので記憶が曖昧だが、6、7年前に始めたかと思う。 毎年違う生徒なので同じ内容のものでも構わないのだが…

第1378回 京都の水と地質。

京都最大の滝、空也の滝。愛宕山の麓 このたび、定期的に行っているワークショップセミナーとは別に、オーダーメイドの依頼があったので、その内容に応じたフィールドワークとセミナーを行った。 ガラスメーカーの方達で、日本および世界各地の砂を使ってそ…

第1375回 未来のコスモロジーと、始原のコスモロジーが重なっていく。

古代に関する本を作ったり、ワークショップセミナーを行っているのは、「歴史好き」のための情報提供を意図しているわけではなく、念頭には、常に「未来」のことがある。 「未来」のことを見据えるうえで「古代」を見据える必要があると感じている。だからと…

第1374回 始原のコスモロジー

年に一冊を目標に制作している日本の古層シリーズ、昨年までに3冊作ってきて、今年は4冊目だけれど、今回は、2016年10月から始めたこのプロジェクトの集大成。 「始原のコスモロジー」というテーマに凝縮させている。 この一年の間に、ブログなどでも膨大な…

第1372回 生成AIと人類の未来について

ソフトバンクグループの孫正義会長は、ディベート相手として毎日 GPT-4版のChat GPTと議論を重ね、そこで生まれたアイデアを特許として申請し、集中した日は1日30件、今月中には1000件を突破するのだという。Chat GPT内での議論は、会社の役員とのディベート…

第1370回 馴れについて。

”馴れ”というのは、人間の可能性につながることかもしれないし、逆に、人間を損なう原因になるかもしれない。 今年に入って今回で10回目、6時間ほどのワークショップセミナーを、毎回二日続けていて、第3回目くらいまでは、けっこう疲れて喉も痛くなり、終…

第1369回 古代の二つの海人勢力について

これまで、古代における転換期に大きく関わっていた二つの海人勢力のことを書いてきた。 一つは、安曇氏(海部氏や、その同族の尾張氏、和邇氏を含む)と呼ばれる勢力で、もう一つは、紀氏(越智氏や平群氏も含む)と呼ばれる勢力だった。 古事記において、…

第1368回 世界観や人生観に影響を与える歴史観

ここ数日で、「日置」と「額田部」を軸にした長大な文章を書いた。 なぜ、今、あえてこんなことを書いているのかというと、私たちの足下の歴史の捉え方が大きく歪められてしまっていれば、現在を生きる私たちの世界観や人生観も歪んでしまって当然だと思うか…

第1367回 歴史の転換期における背後に隠れた力。

古代日本は、100年単位で、大きな変革を遂げている。 西暦400年頃、後の東漢氏や秦氏につながる渡来人が大挙してやってきて、この頃から古墳が超巨大になり、副葬品として、武器や馬具などが多く含まれるようになった。 西暦500年は、今来という新しい渡来人…

第1366回 王権秩序の及ぶ範囲と正確な暦の重なり

日本には無数の聖域があり、それらの聖域のあいだを線で結び、なんでもかんでもレイラインだと主張するのは、あまり意味がないことだと私も思っている。 しかし、日本の各地を旅すればよくわかることだが、古代において、冬至や夏至、春分や秋分の太陽の位置…

第1365回 海に囲まれている国の文化

日本は、海に囲まれた島国。大陸から遠すぎることもなく近すぎることもない微妙な距離感が、日本文化の固有性を育んできた。 日本人にとっては、海そのものが境界線だったから、高い城壁を築いて異民族の侵入を防ぐという発想にはならなかった。 日本人にと…