時事問題

第1424回 半島は、なぜ聖域なのか。

今年制作する予定の「日本の古層VOL.5」は、カラー写真を使って「もののあはれ」をテーマに深く掘り下げるつもりで、昨年の末に能登半島を訪れて取材した。これらのピンホール写真は、カラーで撮っていた。 しかし、この取材後、心にひっかるものがあって、…

第1422回 源氏物語と、もののあはれ

石山寺。紫式部が、源氏物語を書き始めた場所とされる。 NHK大河ドラマの「紫式部」は、藤原道長との恋愛が軸になっているそうで、その恋愛が「源氏物語」の着想につながっているという設定のようだが、本当に、そういう安易な解釈でいいのだろうか。 光源氏…

第1383回 イスラエルは、なぜアブラハムのことを自分ごとにできないのか。

ガザとイスラエルの問題は、私なんかが何か意見を言えるようなことではないけれど、ハマスの無差別殺人から始まったこととはいえ、最先端の兵器を大量に備えるイスラエルの、市民や子供の区別なく徹底的に破壊し殺戮し続ける暴挙は、正気の沙汰とは思えない…

第1372回 生成AIと人類の未来について

ソフトバンクグループの孫正義会長は、ディベート相手として毎日 GPT-4版のChat GPTと議論を重ね、そこで生まれたアイデアを特許として申請し、集中した日は1日30件、今月中には1000件を突破するのだという。Chat GPT内での議論は、会社の役員とのディベート…

第1359回 鳥のさえずりを「X」にすることの陰に。

ツイッターは、私自身はほとんど使っていないが、鳥のさえずりマークがxマークになって、なんだか不気味な感じがする。 ツイッターは、多くの人々に使われているわりにビジネスとしてはうまくいっていなかったのに、イーロンマスクが、なぜあれほどの大金を…

第1290回 世界の三大リスクと、AI技術

国際情勢のリスク分析を手がける米コンサルタント会社が、今年の世界10大リスクとして、1位にロシア・ウクライナ戦争、2位に中国の習近平国家主席の権力独占をあげているのは、まあ多くの人が共有しそうなことだが、興味深いことに第3位として、人工知…

第1284回 日本語の柔軟性と、議論の深め方について

昨日、ワールドカップを見ようと思ってamebaテレビをつけたら、「議論」についての議論を行う討論番組があった。 この番組の中の議論は、それぞれが知っていることをアウトプットする状況説明と状況分析でしかないのだが、一般的に議論が合意形成を目指すも…

第1279回 たった一人の大学の名誉教授の問題ではなくて

「たった1人の「子供の声がうるさい」という意見で廃止になった長野市内の公園。市に対して意見を言っていたのは大学の名誉教授だったことが週刊ポストの取材で明らかになった。その1人の声で、子供の遊び場である公園を閉鎖した市の対応には疑問の声があが…

第1269回 ロシアとウクライナの戦争で巨額の利益をあげているのは!?

「ウクライナが史上初めてアメリカから原油の輸入開始」。 現在のことではなく、2019年のニュースだ。 www.jetro.go.jp 現在、世界的な原油高の状況が、とてつもなく深刻になってきているのだが、この引き金になったのは、もちろん、ロシアとウクライナの戦…

第1261回 シベリア収容所を通して見るロシアとウクライナの現実

昨日、新宿のオリンパスギャラリーで行われている野町和嘉さんの「シベリア収容所」の写真展において、野町さんとトークをさせていただいた。 野町さんは、報道写真を撮っているわけではないので政治的な話になるのは嫌そうだったが、私なりに気になることが…

第1252回 野町和嘉さんの写真展「シベリア収容所1992」

野町和嘉さんの写真展が、東京のOM SYSTEM GALLERYで開催されます。(10月13日〜10月24日)。 そして、展覧会中の10月15日(土)14:00~15:00に、野町さんと私でトークを行います。 fotopus.com いつも思いますが、野町さんの写真力は、ずば抜けています。他…

第1246回 「いのちの居場所」について

「未来も過去も、無限に小さくしていくと現在となり、無限に大きくしていくと時の流れそのものになります。ズームインとズームアウトの振り子のような視点は、時間という概念に束縛されずに「わたしたちは現在をどう生きるかと考えるには大事なことだと思い…

第1240回 退行していく社会の行く末。

ちょうど「愛国」ということを考えていた時に、安倍元首相が銃撃されたというニュースが飛び込んできた。 アメリカやインドではなく、現代の平和ボケと言われるこの日本で、選挙運動中にこういう事件が起きるなどと、いったい誰が想像できただろう。 15年以…

第1232回 折鶴を非難する人の偏狭 

京都の家でテレビは見られないのだけれど、ネットニュースで流れてくる情報では、ウクライナの戦争に心を痛めている人が折鶴をウクライナ大使館に送ろうという活動に対して、現地の人が望んでいるものではないとか、自己満足だとか、だったらお金を送った方…

第1229回 思考停止の正義よりも大事な自らの眼差し

河瀬直美氏の東大入学式での祝辞に噛み付いている人々の意見って、テレビの芸能人コメンテーターの意見とさほど大きな違いがあるわけでなく、東大生にとって、とくに頭を使って考えさせられるような内容ではない。 河瀨直美監督の東大入学式での祝辞、国際政…

第1223回 ウクライナのことと、政治家の白痴化に対する不安。

ウクライナとロシアの戦争について、歴史文化も国の置かれている状況も異なる日本に安住している自分が、何かの考えを持ったところで、それは浅いものにしかならないという自覚があった。 今もその感覚は変わらないが、昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領…

第1208回 歪んだ人間の死生観と親子愛

92歳という高齢で寝たきりの母が亡くなり、そのことを逆恨みした66歳の息子が、医師をはじめとする在宅医療・介護に関わった人たちを自宅に呼びつけ、44歳の医師を散弾銃で殺害し、41歳の理学療法士に重症を負わせた痛ましすぎる事件。 44歳の医師と41歳の理…

第1198回 エチオピアが、ユーゴやアフガンのようになってしまう。

現在、エチオピアが崩壊の危機にある。 ユーゴスラビアや、アフガニスタンのようになる可能性がある。激しい内戦により、民族間の対立は収まるところを知らず、虐殺、拷問、性的暴力が横行し、この1年間で戦闘により数千人の命が奪われている。 私は海外70…

第1187回 「MINAMATA」と「くじらびと」、事実に対する誠実さの違い。

https://lastwhaler.com/bon-ishikawa/?fbclid=IwAR0SB70MpHebmRJByfpHiYdxelCDGQUCUA0cNRw_atUJEzi0os5dT_dc0qk 「これまで海の上の人間の物語を撮ってきた。しかし、海の下のもうひとつの物語があることに気づいた」 石川梵監督の映画「くじらびと」の誕生…

第1186回 たとえフィクションであっても、事実を伝える際のモラルは必要だ。

「Let truth be the prejudice」真実を偏見(こだわり)にしようというユージンスミスの有名な言葉の中のTruth(真実)は、神様の目ではなく、人間の目からの真実である。 ユージン・スミスは言っている。人間というのは、純粋に客観的であることはできない…

第1185回 重層性や複合性の視点を失わずに表現することの大切さ。

映画MINAMATAは、非常にわかりやすいサンプルなので、しつこく言及してきたが、現在の表現の一番の問題は、重層性や複合性の視点が欠けているものが多く、その方が、人に受けやすいということ。だから、単純な構造にしてわかりやすくして人心を誘導する手口…

第1184回  水俣やユージン・スミスのリアルと向き合うことは、近代の問題と向き合うこと。

私が映画「MINAMATA」のことについて書くことに対して、「佐伯さんは、一般大衆に期待しすぎ」と、なんとも不思議なコメントをくれる人がいる。 一般大衆の定義がよくわからないが、期待しても、何にも変わらないよ、という程度の意味だろうか? 私がしつこ…

第1182回 桑原史成さんの水俣の写真から伝わってくる、正義よりも本当のことを伝える思い。

桑原史成さんの水俣に関する写真展が開かれている。 http://www.fujiwara-shoten.co.jp/whatsnew/9-15%EF%BD%9E10-16-%E6%A1%91%E5%8E%9F%E5%8F%B2%E6%88%90%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%B1%95%E3%80%8Cminamata%E3%80%8D%E9%96%8B%E5%82%AC%EF%BC%81/ 大勢の人に…

第1181回 ハリウッドのMINAMATAと、石川梵が一人で作った「くじらびと」の差異。

映画「MINAMATA」を観た人は、ぜひ、石川梵製作の映画「くじらびと」を観て欲しい。 https://lastwhaler.com/ 私が、映画MINAMATAについて、あまりにも無防備に絶賛する人に対して懸念を覚えるのは、映画MINAMATAの手法が、ポピュリズムの常套手段であるから…

第1176回  水俣とMINAMATAの違い

ジョニー・デップが写真家のユージン・スミスを演じる映画、「MINAMATA」を観てきた。 これは「水俣」の映画とは言えないので、「ユージンスミスと水俣」というタイトルくらいが、ちょうどいい。 ユージンスミスの写真については昨日書いたとおりなのだけれ…

第1150回 ジェンダー平等って? 

帰宅した若い女性が「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」と笑う。 さらに、「化粧水買っちゃったの。…

第1097回 新型コロナウィルスの死者と、肥満の因果関係。

医療施設が整っていないから死者が膨大になると予測されている発展途上国では、いつまで経ってもさほど死者が増えず、飽食の国に犠牲が集中したという皮肉な結果。そこに今回の新型コロナウィルスの特徴がある。 ベトナムは、人口が1億に近い大国だが、今回…

第1095回 新型コロナウィルス対策。数理モデルと、環境要因の分析。

今日の新聞も、「新型コロナウイルスの感染者が187カ国・地域で400万人を超えた」という見出しが踊る。 しかし、おそらく一般の人々の生理的な感覚では、パンデミックと言われるけどピンとこないという人が増えてきているのではないか。 ロックダウンされて…

第1094回 ウィルス禍のなか、健やかな未来のための総合的判断とは。

どれか一つの理由でと決めつけることはできないが、新型コロナウィルスの禍が広がり始めて4ヶ月近くなり、地域ごとの違いがはっきりとしてきた。 専門家の先生は、このウィルスは、人種や地域性などに関係なく全人類の普遍的な脅威であると言っておられたが…

第1089回 発展途上国で健やかな暮らしをしている人々の方が、新型コロナウィルス感染による死者数が少ない。

このたびの新型コロナウィルスにおいて、たとえばアメリカでは、アンソニー・ファウチ博士など、感染症の権威の発言が大きな影響力を持っている。 アンソニー・ファウチ博士は、エボラやヒト免疫不全ウィルス( HIV)の研究に貢献されてきた人だが、そのため…