第1359回 鳥のさえずりを「X」にすることの陰に。

ツイッターは、私自身はほとんど使っていないが、鳥のさえずりマークがxマークになって、なんだか不気味な感じがする。

 ツイッターは、多くの人々に使われているわりにビジネスとしてはうまくいっていなかったのに、イーロンマスクが、なぜあれほどの大金を積んで傘下に収めたのか。

 イーロンマスクが展開してきたビジネスは、一見、異なる分野ではあるけれど、その組み合わせ方は、強力だ。

 スペースxというロケットビジネスは、現在、次々と、イーロンマスクが手掛けるスターリンク衛星を打ち上げており、ロシアとの戦いで通信インフラを破壊されたウクライナは、この衛星がなければ、戦闘を続けられないという。

 衛星を使って世界中どこでもインターネットの利用が可能になるというスターリンク衛星ビジネスは、現在、受信用の専用機の設置が必要だが、近い将来、スマホで受信可能になるようで、そうなると、携帯会社が構築してきた回線網や、光ファイバーなどは不要になっていく。とくに、山間部や過疎地などでは、これに頼る行政が増えてくるだろう。徳島県神山町が、かなり以前に、どこでもwifiに繋がるというプロジェクトでIT企業を誘致したが、とくに発展途上国では、あっという間に、国中で、スターリンク衛星が使われるようになることは間違いないと思う。電話回線が普及していなかった発展登場国で、携帯電話が、あっという間にメインの通信回線になったように。

 イーロンマスクは、当然ながら、テスラの自動運転を、このスターリンク衛星と組み合わせるという計画を、とっくの昔に作り上げていたのだろう。

 だとすると、xというマークになったツイッター。これはもう、従来の「つぶやき」のための SNSにするつもりがないことは明らかだ。

 イーロンマスクは、オンライン決済のペイパルも立ち上げた実績があるのだから、ツイッターに、この機能が組み込まれるのは時間の問題だ。さらに、AIによる文章作成機能で、それとわからない「つぶやき広告」を簡単に大量に作成して人々を誘導して、「x」の決済手数用や、誘導の成功報酬が、当然、ビジネスモデルになっていくのだろう。

 スターリンク衛星へのアクセス希望者は、契約時点で、「x」のアプリが組み込まれることになるのは間違いない。

 そうなっていくと、もはやドルを基軸通貨にする必要はなくなる。

 現在、中国の影響が拡大しているアフリカでは、外国語の学習も英語から中国語に変わり、取引通過も、ドルから元という流れになりつつあるが、イーロンマスクが導入するであろう「x」の決済システムで、基軸通貨をドルにするか元にするかは、イーロンマスクの腹一つということになるのだろうか。

 現在、テスラの販売台数の半分が、中国市場だと言われる。

 イーロンマスクは、南アフリカとカナダとアメリカの国籍を持っているから、メインパートナーは、どの国でも良いのだろう。

 そもそも彼は、アメリカや中国といった限定的パートナーとだけ組むことに魅力を感じるような人物ではないだろう。

 現在、世界中で人口が増え続けているのは、欧米以外の地域であり、こうした国々は、山岳や密林や砂漠など地理や風土的な条件もあって国中に通信ネットワークを作り上げるための投資は非現実的であり、スターリンク衛星を使うことを選択するだろう。だとすると、それらの国々が抱える膨大な人口が、「x」による決済システムのターゲットなのではないか。

 民間でロケットを打ち上げるスペースxは、2002年に、「火星の植民地化を可能にするための宇宙輸送コストの削減」を目的に設立された。

 その時から20年ほどしか経っていないが、その時は、「スターリンク衛星」が、これほどまで大きな影響力を持つようになるとは思っていなかったし、もちろんイーロンマスクがツイッターを買収することも考えてもみなかった。

 私は、風の旅人の連載で、「電気の宇宙論」について、かなり膨大に紹介してきたので、火星などに移住できるはずがないことはわかっていた。科学を装ったニュースでは、火星の水と酸素のことしか伝えないが、空気というバリアがない火星の地表は、宇宙線による被曝地帯であり、地球から観測できる火星の嵐は、地球上の台風のように空気が動く風ではなく、台風よりも巨大な磁気嵐だ。火星の嵐の中は、風に飛ばされるのではなく、磁気嵐で感電する。しかも気圧や重力が大きく違うのだから、地球の気圧や重力に合わせて整えられている人間の体内環境にトラブルが生じないはずがない。

「火星の植民地化」の実現可能性をアピールするニュース記事の陰には、宇宙開発という名の軍事技術開発があることは常識なのだが、さらにその裏に、スターリンク衛星ネットワークによる経済支配だけでなく、安全保障やセキュリティという名の地上の監視システムが重なってくるのだろう。

 なんという時代に生きているのか?

 これは、イーロンマスクの野望と単純化できる問題ではない。安心と便利を幸福のバロメータとする人や、情報操作によって簡単にコントロールできる人が少なければ、イーロンマスクのビジネスもうまくいかない。

 安心と便利という誘い文句を疑い、自分の頭で考え、判断するという人が増えていかなければ、現在進行しつつある流れは、変わらないのだろう。

 

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