第1456回 女性天皇が続いた時代。

愛子さま明治神宮に初参拝。
 この方は、なんだか巫女のようなオーラを漂わせている。
 現在、皇位継承順位は、第一位が、秋篠宮文仁親王で、第2位が、文仁親王の長男の悠仁親王
 これは皇統に属する男系男子にのみ皇位継承権を認めるという皇室典範のためで、小泉政権の時に、女性天皇の可能性が検討されたのに、皇室典範改正に慎重な安倍晋三が総理大臣になってから、改正の動きは止まってしまった。
 平成の天皇は、男性だけれど、古代の巫のようだと私は思っていた。
 私の感覚だが、秋篠宮家の人々には、現代的な空気が強く感じられる。
 現代的というのは、個人主義的な分別が根幹にある。
 巫というのは、個人主義的な分別が非常に弱くて、自分のことよりも、大きなものに対して、自分の魂を捧げるような存在であり、愛子さまの方に、そうした巫のような空気を感じる。
 男系男子にのみ皇位継承権があるなどという考えは、いったい、どこの何ものから出てきたものなのか。
 この国が天皇を中心にして一つの秩序にまとまっていったのは、一般的に思われているような、3世紀以降のヤマト王権の時代ではない。
 西暦500年頃まで、共通文字もなかった時代、日本の隅々まで官僚機構によって統治できるはずがないし、武力による長期的制圧も現実的ではない。一つの氏族や勢力に、それだけ強力な武力が集中していたとも考えられない。
 統一に向けての明確な動きは、現在の天皇の血統を遡れる最も古い第26代継体天皇からと考えるのが自然なことで、その後、抵抗勢力などとの攻防を経て、ようやく西暦600年頃に、一つの体制にまとまっていったと考えた方がいいだろう。
 17条憲法の「和をもって尊し」に象徴される推古天皇の時代だ。
 しかし、一つにまとまった新しい体制を維持していくのは、簡単なことではなく、いつの時代でも、反動勢力はいる。
 そうした不安定な時代が続くあいだは、女帝が、多く即位していた。 
 学者は、男性の世継ぎが幼かったためのつなぎだと説明するが、そうではないだろう。
 なぜなら、推古天皇の後は、皇極天皇(後に斉明天皇として重祚)、持統天皇元明天皇元正天皇孝謙天皇(後に称徳天皇として重祚)と、圧倒的に、女性天皇の方が、即位期間も、人数も多い。
 このあいだに、長期にわたって即位していた男性天皇は、存在しない。
 聖武天皇の25年が最長だが、病気がちだったため、譲位した後の元正天皇が政務を行っていた。
 天武天皇の時も、晩年は病気がちで、持統天皇が政務を行っていたとされるわけだから、この200年は、女性天皇によって日本という国は、一つにまとめられていたのだ。
 とくに、私が気になるのは、持統天皇元明天皇元正天皇と、女帝の力によって律令体制が整えられていった7世紀後半から8世紀前半だ。
 実はこの時、白鳳巨大地震(684)や、浅間山の噴火(685)が起きた。地震は、南海トラフが凄まじい破壊力で巨大な津波も起きているが、その前後に、かなり大きな地震が頻発したことが記録に残っている。
 律令体制が始まったことと、この自然災害の関係性は、どこにも書かれていないが、律令体制というのは、かなり特殊であり、それまで先祖代々守ってきた土地を、天皇に差し出して、改めて借りるという制度だ。
 そんなこと、ある日、突然に求められても、「はいそうですか」とならないのではないか。日本全国の人々に武力で強制するということだって、簡単にできるとは思えない。
 この時、この国の人々の内面にどういう変化があったのか、考える必要があるのではないかと思う。
 最近、各地で地震が頻発し、南海トラフ地震が起きるサイクルの80年から100年という(前回は1945年)時期にさしかかってきた今、愛子さまの古代の巫女のような佇まいを見た時、持統天皇元明天皇元正天皇というのは、このような感じだったのではないかと、ふと思った。
 天皇というのは、我儘な権力者ではない。
 平成の天皇のおことば、
 「国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした。」 
 そして、日本中をくまなく訪ね歩き、災害があれば被災者のもとに駆けつけて寄り添い、膝をついて、一人一人の顔を見ながら語りかけておられた姿勢。
 現在は、「象徴天皇」と呼ばれているが、これが本来の天皇の姿だったのではないだろうか。
 こうした役割を担ううえで、天皇は男でなければならない、などという時代錯誤で頑迷な発想が、この国のためになるとは、どうしても思えない。

 

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