現在のことではなく、2019年のニュースだ。
現在、世界的な原油高の状況が、とてつもなく深刻になってきているのだが、この引き金になったのは、もちろん、ロシアとウクライナの戦争だが、この紛争の前に、きな臭い動きは生じていた。
2019年7月12日の記事で、ウクライナが、史上初めて、アメリカから原油の輸入を始めるという動きだ。
シェールオイルは、2000年代初頭に水圧で岩盤に亀裂を入れる採掘技術が確立され、米国で生産が急増した。
これは、従来の中近東の産油国とはまったく異なる採油方法で石油資源を獲得する方法だが、現在判明している範囲では、アメリカが最大の埋蔵量を保有している。
それで、アメリカ国内でシェールオイル開発がブームになったものの、採掘コストが高いために、原油価格が下がると赤字になってしまい、倒産する会社が増えてしまった。
資源としては膨大にあり、かつては世界最大の原油輸入国だったアメリカが、世界最大の原油生産国となり石油の輸出が可能になったのは、このシェールオイルのおかげだが、そのためには、石油価格が安くなりすぎないことが重要で、今回のロシアとウクライナの戦争で石油価格が上がれば、おそらく莫大な利益をあげているはず。
プーチンの外交政策によって、ロシアは欧州向けの石油や天然ガスの輸出を拡大させてきた。その結果、ウクライナ戦争前、2020年の段階で、ドイツは、石油34%、天然ガス55%、石炭45%がロシアからの輸入だった。
だから、ロシアのウクライナ侵攻の段階では、欧州の態度は煮えきれないところがあった。
欧州の中心であるドイツが、自国内で消費する化石燃料のうち半分をロシアに依存するという状況を、アメリカはどう思っていただろう。
なぜ、ウクライナをNATOに加えようという動きが発生して、ロシアの孤立化を促進するような展開が生じたのか。
その背後で、アメリカが何もしていないとは思えない。
ロシアとウクライナの戦争は、2019年の段階で、ロシアの隣国でパイプラインが通っているウクライナが、アメリカからの原油輸入を初めていることからわかるように、戦争開始前から、きな臭い動きは起きている。
2021年1月23日に、バイデン氏が第46代アメリカ合衆国大統領に就任したことについての不吉を、ブログに書いた。
穏健派に見えるオバマ大統領の時はアメリカは戦争ばかりしていたが、タカ派のようにしか見えないトランプ大統領の時には、それがなくなった。
バイデン大統領になったとたん、アメリカが、自国のことより世界のことを優先するようになるはずがない。それは、どの国の指導者だって同じ。
アメリカのスタンスは、大統領のリーダーシップで変わるというより、アメリカの巨大な産業界にとって、どの大統領が、脅かしやすくて動かしやすいかという違いにすぎない。
トランプ大統領というのは、アメリカ産業界にとって、むしろやりにくい大統領で、なぜかというと、トランプ大統領の言動が、アメリカの横暴とすぐに結びついてしまうからだ。
現在、バイデン大統領は、アメリカの石油産業に対して価格の高騰を抑えるよう働きかけているなどとアピールしているが、産業界にとって、バイデン大統領というのは、そのようにアメリカの良心の振る舞いを演じる役割にすぎず、トランプのように平気で産業界をも敵にまわして何をしでかすかわからない存在ではないから、扱いやすい大統領なのではないだろうか。
バイデン大統領のもとでは、アメリカ産業界は、自分たちのエゴのために様々な手を打って、そのためには紛争が起きる原因さえ作り出すかもしれないが、こっそりと隠れて誰にも気づかれないようにできる。
実際に、現在、ロシアとウクライナの紛争で、アメリカの石油産業がどれだけ儲けているかという報道は、ほとんど見られない。
トランプ大統領というのは、アメリカのエゴのためにやっていることを、平気で、アメリカのエゴのためにやって何が悪いと宣言してしまうような人で、それでアメリカのエゴが世界中から注目を浴びてしまうので、こっそりと悪事がやりにくい。
考えすぎかもしれないが、ロシアとウクライナの戦争の背後にも、中近東の紛争の時からもずっとそうだったけれど、巨大石油産業の利権が絡んでいるような気がしてならない。
その結果、アメリカの石油産業にとって、ロシアは、目の上のたんこぶになった。
アメリカの石油産業にとって、シェールオイルの採掘コストより原油価格が安くなっては困るという歴然たる事実がある。そうなってしまっては宝の持ち腐れなのだ。
だから、彼らにとっては、ロシアの石油や天然ガスの西側諸国への輸出を止めておきたい。
紛争が長引けば長引くほど彼らの利益は莫大になり、さらに戦争が終わっても、ロシアと欧州の関係が断絶されることが、望ましいはずなのだ。