第1252回 野町和嘉さんの写真展「シベリア収容所1992」


 野町和嘉さんの写真展が、東京のOM SYSTEM GALLERYで開催されます。(10月13日〜10月24日)。

 そして、展覧会中の10月15日(土)14:00~15:00に、野町さんと私でトークを行います。

 

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 いつも思いますが、野町さんの写真力は、ずば抜けています。他の人と同じカメラで撮っているのに、なぜ、これほどまで違ってくるのか。凄みとか息遣いとか、存在のリアリティとか、この写真もそうですが、一目で、野町さんが撮った写真だとわかります。

 風の旅人の創刊号で野町さんのチベットの写真を紹介した時、吹雪の中の僧侶たちの写真、まったく同じ時に、ナショナルジオグラフィックの専属カメラマンだったマイケル山下が撮っていたのですが、彼もまた非常に彼らしい写真で、二人の写真がまったく異なっているのが非常に興味深かったです。マイケル山下の写真はとても整然としていて、野町さんの写真は、整いすぎていないけれど、絶妙な均衡がある。

 今回の展覧会のテーマは、30年前に野町さんが撮影した「シベリア収容所」です。

 現在、ロシアによるウクライナ武力侵攻で、ウクライナから100万人ともされる一般市民がロシアに拉致され,その一部は 極東シベリアにまで強制移送される、とも報じられています。

 ロシアは広大な国土を持ち、資源大国であるけれど、いまだ未開発の場所が多く、戦争のたびに、こうした強制労働が行われてきました。第二次世界大戦では、日本人も多く拉致されています。

 現在のロシア侵攻で、欧米諸国がロシアに対する制裁を行なったり、ウクライナへの武器援助を行なっても、終わりが見えません。

 気になるのは、2000年以降に著しい経済発展を遂げたBRICsの存在です。ブラジル、インド、中国、南アフリカ、そしてロシア。

 この5カ国で、世界全体の国土面積の29.2%、人口では42.7%であり、経済規模も、欧米世界を超えていこうとしています。

 さらに、中国の支援で急成長を遂げるアフリカ諸国などをくわえると、これまでの欧米支配の世界秩序は、大きく変化しつつあります。

 欧米のなかでも欧州に関しては、ロシアの資源や中国との経済関係を抜きに成り立たなくなっており、ロシアに対する経済制裁は、欧州の首も締めています。

 島国日本に生きていると、海外で起きることを、対岸の火事のように受け止めてしまいますが、これだけ世界が緊密に結びついた時代において、そういうわけにはいかないでしょう。難民受け入れなどにおいても、先進国の中で、日本の受け入れは、2桁も3桁も少ない。

 人口減少というこの時代に、ここまで閉鎖的な国の状態は、未来に開かれておらず、むしろ危ういという気がしてしまいます。