第1089回 発展途上国で健やかな暮らしをしている人々の方が、新型コロナウィルス感染による死者数が少ない。

 このたびの新型コロナウィルスにおいて、たとえばアメリカでは、アンソニー・ファウチ博士など、感染症の権威の発言が大きな影響力を持っている。

 アンソニー・ファウチ博士は、エボラやヒト免疫不全ウィルス( HIV)の研究に貢献されてきた人だが、そのため、今回の新型コロナウィルスも、自らの経験に基づいて、エボラやHIVのようなイメージで伝えられている。 

 なので、欧米などに比べて医療機関が不十分な発展途上国でこの病気の感染が広がったら大変な事態になる、どれだけ死者が出るかわからないといったパンデミック映画のような光景が多くの人々の脳裏に共有されて、報道で伝えられる情報も、それらの映画を彷彿させる絵が切り取られている。

 しかし、欧米などの先進国に比べて、本当に発展途上国の方が危険極まりないのだろうか。

 毎日更新される全世界の感染者数や死者数の分布を見ていても、ずっと前から、感染の分布や死者数は先進国に偏っている。専門家は、それは感染の時間差であり、これから発展途上国で広がっていく可能性があると主張するのだが、現時点で感染元とされている中国は、これらの発展途上国と緊密に関係があり、観光やビジネスで人の往来も激しいわけで、にもかかわらず、狙ったように欧州や日本、韓国、アメリカなどで急速に感染が広がっていったというのは不思議だ。

 そして、日本、韓国など早くから感染が広がったアジア圏の一部は、欧米などに比べて、はるかに低い致死率となっている。

 なぜ日本などに比べ欧米での致死率が高いのか、まだはっきりとしたことがわかっていないが、注目すべきことは、インドシナ半島周辺のアジア諸国の感染状況だ。
 4月24日現在、新型コロナウィルスによる死者は、ベトナムカンボジアラオス、ネパール、ブータンが0人で、ミャンマーが5人。最大のタイで50名。台湾も6名と少ない。
 しかも、ラオスミャンマーなど、中国と国境も接しているし、経済面など関係性も非常に深い。カンボジアアンコールワットには、欧米や中国から観光客が大勢訪れている。
 これらの国々の南のマレーシアやシンガポールは少し多くなるが、それでも95人と12人。まだ感染が始まっていないからということではなく、日本の20分の1以下の人口のシンガポールの感染者数は、すでに日本とほぼ変わらない。
 3月24日にラオスでツアーガイドの感染者が出て、ASEAN諸国すべてに感染者が広がったことになり、医療水準が高くない途上国で今後さらに感染が拡大する懸念があると心配されたが、それ以前も、それ以降も、欧米などに比べて死亡者数はまったく増えていない。

 カンボジアシェムリアップに7年住んでいる人の話では、中国の武漢の感染爆発の前に武漢からも大量の観光客がアンコールワットに来ていて、現地の人は観光業の就いていたり露天をやっているので感染が広がるのではないかと懸念していたという。でも、そうした気配がないので不思議だと。子供達はマスクもすることなく普通に遊んでいるそうだ。

  これらの東南アジア諸国に共通している点を探ると、まず米食というのがある。ラオス人は1日に3合ぐらいの米を食べている。米を長期的に食べている人に多い腸内細菌に「プレボテラ菌」というのがある。
 プレボテラ菌は、米食だけでなく、ヒエや粟などもそうだが食物繊維を多く食べているアフリカ人や東南アジア人の腸内に多く存在すると言われている。
 東南アジアだけでなく、アフリカも、今回の新型コロナウィルスの死者数が低く抑えられている。
 最近になって、科学的な裏付けがあるのか単なるフェイクニュースの一種なのかわからないが、「新型コロナウイルスは、呼吸困難を引き起こすことで知られているプレボテラ細菌に侵入し、感染したプレボテラ細菌は、新型コロナウイルスよりも遙かに悪性の攻撃を続け、炎症を伴う過剰免疫反応を起こして肺を破壊する」という情報が流れており、感染したプレボテラ細菌に対する治療で、イタリアなどですでに効果が出初めていると伝えられていた。
 この現時点では定かでない情報のなかでは、プレボテラ細菌とアジア人の関係は伝えられておらず、ウィルスに感染したプレボテラ細菌に対する治療の仕方だけが伝えられている。
 その情報の真偽はともかく、確かな事実は、米など穀物類を多く食べるアジア人は、欧米人よりも腸内にプレボテラ細菌を多く備えてこの細菌と共生しているが、欧米の人たちはプレボテラ細菌をそんなに持っていない。
 多くのプレボテラ細菌と共生しているアジア人は、プレボテラ細菌のウィルス感染を制御する仕組みでも持っているのだろうか。
 専門家は、新型コロナウィルスに対する感染率や致死率は人種による差はないと言い切っていたが、こうして感染が長引いて世界中に広がって各地の数字を見ると、明らかに人種のあいだで差がついているとしか思えないのだがどうなのだろうか。
 それでも専門家は、数字の違いはタイミングの違いでしかないように言う。しかし、日本や韓国などは欧米より先に感染が始まっていた。その事実に対して、ウィルスの変異によって欧米とアジアは状況が違っていて、致死率の高い欧米型が日本をはじめアジアに逆輸入したといった不安を煽る言論もある。
 それはともかく、ラオスカンボジアベトナム、ネパール、ブータンといった国々が新型コロナウィルスで死者を出していないのだから、 WHOは、そのあたりの原因を探る努力を同時に進めてもいいのではないかと思う。

 また、4月24日の News weekの記事において、米国の政府研究で、日光が当たる場所や高温、高湿度の環境下では、ウィルスは、より短い時間で威力が弱まる傾向があるということを明らかにした。政府の研究では、屋内の空気が乾燥した環境がコロナウィルスの生存期間を長くするのだそう。

 暗い室内だと1時間かけてウィルスの威力は半減するが、日光にあてた場合は90秒。そして、暗くて湿度が低い環境でステンレス鍋など通気性のない素材の上では18時間かけて威力を半減するウィルスが、高湿度だと6時間に減り、さらに日光が当たると2分に短縮されるのだそう。

 この記事のなかでは、「シンガポールなど温暖な場所でも強い感染力を発揮している」と注意書きもあるが、シンガポールは、熱帯の国とはいえ冷房環境が先進国並に十分に整っているのだから、感染は広がるだろう。

 しかし、560万の人口のシンガポールの感染者数は、人口が13000万の日本と変わらないくらい多いのだが、死者数はとても少ない。11000人の感染者数に対して12人の死者。日本は欧米に比べれば少ないが、昨日までで328人だ。
 欧米では完全な外出禁止令が出て家から出られない状態になってからの方が、死者数が急増したという事実もあった。
 日光のこととか、新型コロナウィルスによる死者が出ていない東南アジアの人々の腸内環境のこととか、政府や専門家の意見とは別に、個人個人は、多面的な対策を考えていた方がいい。
 専門家は、科学的な裏付けがないものは責任問題になるので口にできない。でもそうすると、対策が非常に狭く限定されてしまう。あまりにも対応が限定されてしまうために、結果的に、専門家が唱える完全なる外出禁止だけをやっていると、逆効果になるということもある。
 一般的な日本人は、生理感覚として日光浴が好きだし、家に子供達を閉じ込めていると健康上よくないという感覚をもっているので、政府が外出禁止が要請しても、どうしても近くの公園とかに子供達を連れて行きたくなる。
 すると、公園の人口密度が高くなり、それを報道するメディアが、問題現象であるかのように伝える。
 人間は試験管の中の実験材料ではなく、環境のなかで生命力を育んでいく存在であり、日光を浴びたり、散歩をしたり、食物繊維の豊富な食材を十分に摂ったり、健康な生活をすることが大事。
  感染症の権威は、エボラやHIVのイメージで、新型コロナウィルスが発展途上国に感染が広がったら大変なことになるというイメージを共有させようとするが、むしろ、食物の質とか外に出る機会とかを考えると、発展途上国の方がダメージの少ないウィルスかもしれない。

 もしそうだとしたら、非常に皮肉な現象が起こっているということになるのだが、これを機会に、自らの文明に対して自惚れていた先進国の人々がライフスタイルを変えるきっかけとなるかもしれない。

 そうすると、まさしく自然界の警鐘として、新型コロナウィルスが現れたということになる。

 ラオスミャンマーベトナムブータン、ネパールなどを訪れたことのある人々は、なにかしら共通のイメージをもっているだろう。自然に恵まれ、のどかな時間の流れの中で、多くの人々は身体を動かして汗を流すことや、日光を浴びることを当たり前に行っている。そして、野菜や穀物などが食卓にズラリと並ぶ。西欧社会に比べて貧しいと言われるけれども生命体としては健康的な生活を送っているから新型コロナウィルスに対して強い、という結果になっている可能性だってある。

  

 

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