写真

第935回 人を安心させる懐の深さ 

東京の築地に「ふげん社」という、とても個性的な品揃えの本屋&ギャラリーがあります。昨年の10月、この場所で、水越武さんの写真展に合わせてトークショーを行った時、書棚の品揃えに、思わず「私の好み!!」と唸りました。姜信子さんや管啓次郎さんと…

第934回 鬼海弘雄さんの写真が誘うところ

昨日、鬼海弘雄さんの新作写真集「TOKYO VIEW」、印刷会社に校正紙を戻しました。 鬼海さんの口からも、「納得のいくものになってきた、出来上がりが楽しみ」、という言葉が、ようやく出ました。 この写真集に収められている東京の写真は、1970代の前半…

第923回 インターネットでは得られない感覚

今はインターネットで色々な情報が得られると思われている。インターネットで色々な情報を得るための道具や、ウェブ上のサイトは数限りなくある。それらの情報を暇つぶしで見たり、お役立ち情報として見たり、ビジネス上のヒントとして見たり、人によって色…

第917回 時を経ても変わらないものの本質

(撮影 水越武) まもなく発行の風の旅人 復刊第6号「時の文」。2003年4月に創刊以来、50冊目になります。次の号で紹介させていただく水越武さんの写真は、12年前の創刊第1号も、3年前の復刊第1号にも登場しました。現代社会に泡のように現れて…

第913回 ”かたじけなさ”と、日本のかけがえのない精神風土

8月8日、今宮神社の中にある織姫社で、織姫七夕祭を斎祀ることを奉告御祭に参列した。しばらく途絶えていた織姫祭を来年から復活させることが決まり、その報告を神様にする祭りだ。 世の中には、色々なタイプの祭りがあるが、最近では地方自治体などから助…

第905回 大石芳野さんの写真展「福島 土と生きる。」

川崎の「東海道かわさき宿交流館」http://kawasakishuku.jp/ というところで、大石芳野さんの写真展が開かれています。(6月14日まで) 5月30日の3時から、対談も行われます。 テーマは、「福島 土と生きる」。東京電力福島第一原発の事故で故郷を奪…

第895回 自然に還るのではなく、自然から学び、人間力を磨く。

風の旅人の復刊第5号、鬼海弘雄さんのページの印刷がうまくいかず、刷り直しになってしまったけれど、カラーページを含め、他のページはきれいに仕上がっている。 グラビア雑誌というのは、写真の印刷が命だから最後の印刷が山場だ。ここでうまくいかないと…

第887回 袖すり合う縁をも生かす

撮影/大山行男 風の旅人 復刊第5号 いのちの文(あや)より 昨日、建仁寺の塔頭である両足院において寅市という手作り市が開催されていた。着物の切れ端を上手にデザインした布製のバックや、ガラスエッチングを施したグラスや花瓶、玉石のブレスレットや…

第882回 取り替えのきかない”いのち”

(撮影/有元伸也) 有元伸也さんが撮ったチベットの写真は、報道写真や観光写真のように、「チベット」の有様を客観的に情報伝達するものではありません。 彼は、チベットの人々とその環境の中に、取り替えのきかないものを感じとり、それを写真という媒介…

第881回 間(あはひ)の妙を伝える写真

(撮影 鬼海弘雄) これから出る風の旅人の最新号「いのちの文(あや)」の中で、鬼海弘雄さんの写真「東京模様」を紹介します。現在、鬼海さんのこのシリーズの写真集を制作中ですが、風の旅人の誌面ではその一部を見せます。 鬼海弘雄さんの写真を見ると、…

第880回 視る力と、視られる写真

(撮影・大石芳野) 写真家の大石芳野さんは、3.11の震災後、とくに福島の地を丁寧に取材し続けている。丁寧に、というのは、1人ひとりの心の内側を写真に焼き付けるために、1人ひとりとの距離の取り方が、とても丁寧なのだ。 大石さんは小柄で繊細そう…

「表現の自由」をしつこく考え続ける自由。

「表現の自由を守らなければならない」という言葉が飛び交う。しかし、その表現は、一体誰に向けて行なわれているものか。 顔の見えない広く一般的な人びとか(発行部数などのように数字で表される)、それとも、特定の、どうしてもそのメッセージを送り届け…

日本人の魂の故郷 室生寺と土門拳

(撮影/土門拳) 女人高野と呼ばれる室生寺に行ってきた。土門拳が何度も通い続けた室生寺は一度は行ってみたかった。 到着したのが夕暮れ時の閉館前で、紅葉の季節なのに観光客の姿がなく、静けさに包まれていて心穏やかな気持ちになった。 空海は、身体は…

20世紀から21世紀、「ドブ河」の時代から、「波」の時代へ?

(撮影/森永純) 「私を深く感動させる写真、私の人生を変えてしまう写真は数少ない。森永純の写真はその二つを併せ持っていた。」 ユージン・スミス??の続き そのユージンスミスが、21世紀になってようやく完成した森永純さんの第2作目である「波」の写…

20世紀から21世紀、「ドブ河」の時代から、「波」の時代へ?

(撮影/森永純)「私を深く感動させる写真、私の人生を変えてしまう写真は数少ない。森永純の写真はその二つを併せ持っていた。」 ユージン・スミス ユージンスミスは、森永純さんが撮ったドブ側の写真を見た瞬間、そこに原爆を象徴する何かを見て、号泣し…

20世紀から21世紀、「ドブ河」の時代から、「波」の時代へ?

(撮影/森永純)「私を深く感動させる写真、私の人生を変えてしまう写真は数少ない。森永純の写真はその二つを併せ持っていた。」 ユージン・スミス 先日、東京に出た際、森永純さんが、生死の境を彷徨う大病後、週に三回通って透析を受けている病院に行っ…

森永純さんの写真の命

写真集「WAVE〜All things change」より 森永純さんの写真集「WAVE〜All things change」が出来上がり、ようやく納品することができた。 3年か4年前の初夏だったと思うけれど、森永さんの「ドブ河」の写真に衝撃を受けていた田口ランディさんが、森永さん…

「すべては発動し、すべては循環する。」森永純さんの新作写真集

(森永純 WAVE〜All things change) 今後、年に一冊ずつ写真集を制作していきたい。 世の中には、簡易な作りの写真集が数多く発行されているが、一生の間、手元に置き、じっくりと何度も見る価値のある写真集を作る必要があると私は考えている。 20世紀は、…

表現は、認識に働きかける栄養分

「価値観が違う」という言い方がよくされるけれど、価値観ではなく、「認識が違う」という言い方をした方がわかりやすい。 価値観という言い方をすると、同質のもののあいだの比較というふうに聞こえてしまう。認識の違いならば、そこに質(幅とか深さ)が関…

世界を見る眼を変え、意識を変える写真の力

私が日本で最も尊敬している写真家の一人である鬼海弘雄さんと話していると、「写真が撮れない」という言葉がよく出てくる。 「写真なんてシャッターを押せば写るのだから、写真が撮れないという意味がよくわからない」という人もいるだろう。 写真が撮れな…

祈りの大地

(撮影:石川梵 2011年3月12日 白煙をあげる福島第一原発) 写真家、石川梵さんの文章だけの本『祈りの大地』が発行された。2、3日前に、大阪写真月間で行なわれた鬼海弘雄さんのトークを聞き、写真というものは写真家の生き様が反映されるものであ…

写真の新しさ!?

一昨日、大阪ビジュアルアーツに来て鬼海弘雄さんの話を聞いた人の多くは、きっといい話を聞いたなあと、しみじみとした手応えを感じて帰っていったのではないかと思う。写真の技術的な話を期待してきた人は、ちょっとあてが外れたかもしれないけれど・・・。…

消費社会と写真

(撮影:木村肇 風の旅人 復刊第4号 「死の力」より) ポートフォリオレビューで自分の写真を見せに来て、わざわざ、「他人の影響を受けたくないので、人の写真はあまり見ないようにしています」と言う人がいる。文章表現を志している人で、こういう発言を…

自己と自己を超えるもののあいだ

(写真は、桑原史成さん撮影。風の旅人 復刊第4号 「死の力」より) 風の旅人の復刊第3号で、志村ふくみさんをインタビューした時、”のさり”という言葉が出て来た。3.11の震災後すぐの頃は、多難な状況のなかで、日本人の心が一つになりかけていた。しかし…

死の力

<写真> 風の旅人 復刊第4号(テーマ:死の力〜来し方、行く末)より 撮影/池谷友秀 風の旅人 復刊第4号の編集のピークと、京都への引っ越しが重なって、落ち着かない日が続いたが、あっという間に,次号の発行日が目の前に迫っている。 次号のテーマ、…

内山英明さんが亡くなった。内山さんの地下世界の仕事は、地上で永遠に生き続ける。

(この写真は、風の旅人 第25号で紹介した内山ワールドのごく一部) 昨日、写真家の内山英明さんが、脳出血で亡くなった。ショックだ。内山さんの不在という事実を突きつけられ、大きな喪失感を感じる。昨年末に、荻窪でトークショーをした時は元気だった…

あの震災の記録を継続して行く為の、クラウドファンディング

https://readyfor.jp/projects/enami_photobook01 正直に言うと、このクラウドファンディングに参加すると、3.11の東北大震災の写真集制作の支援の見返りに写真集のカバーに自分の名前が記されるとか、オリジナルの帯がつくといったことに、最初は違和感を感…

様式としてのアナログではなく、存在感のあるアナログ

本橋成一さんの写真展が、品川のキャノンギャラリーで開催されている。http://cweb.canon.jp/gallery/archive/motohashi-ueno/index.html 昨日、そのオープニングパーティに行ってきた。本橋さんは、いまだデジタルカメラを使わず、銀塩写真にこだわり続けて…

国東半島で思い至った、写真の罪と贖い

2月1日、国東半島で行なわれた修正鬼会の祭りを見て来た。国東の地には、神と仏が複雑に絡み合う独特の宗教文化が今も色濃く残っている。岩盤に掘られた磨崖仏や、今から1300年程前の美しい仏像も数多く残っており、京都や奈良と同じように日本の仏教…

子供と親のあいだ・・・

(写真/ジョセフ・クーデルカ) 9歳の子供を道連れに焼身自殺をした父の話。現代社会では、毎日、様々なニュースが報道されるが、このような事件が、もっとも辛い。自分の子供と同じような年頃で、少年野球に打ち込んでいる子供。可愛いし、愛しい。愛しさ…