デジタルの恩恵を、どうアナログにいかしていくか。

 オンラインを通じた直接販売にしたことで、読者の方のメッセージを直接聞く事ができる。これまで、風の旅人が、どのような形で読者と接点を持っていたのかよくわからなかったけれど、それがリアルに感じられることが、直接販売の魅力であり、そもそもどんな

仕事もそうでなければならない筈。流通制度が肥大した日本の書物販売の方法は、やはり変わらざるを得ないのだろうと思う。

 ただ、以下のメッセージを送ってくださった人が言うように、「偶然の出会い」をどのように作り出すかというポイントも重要。私が今考えているの

は、オンラインというデジタルの恩恵を受けた仕組みを最大限に生かしながら、イベントなどアナログ要素の強いものを組み合わせていきたいと思っている。風の旅人という雑誌も、紙媒体だからアナログではあるけれど、その制作の為に、デジタルが欠かせなくなっている。デザインワークのDTPはもとより、作家からの原稿は電子メールだし、デザインラフのチェックはPDFやDropboxを使っている。また校正に関しては、海外にいる人間Dropboxを使って手伝ってもらったりしている。こうしたデジタルの恩恵がなければ、とても一人で編集なんかできやしない。デジタル化によってエネルギーを軽減でき、そのエネルギーをアナログ部分の質の向上に転換できるのだ。

 販売に関しても同じだろう。SNSの利用や、ホームページ、顧客管理など、10年前に比べて格段に進化した環境があり、エネルギーを軽減できる。そのエネルギーを、アナログ的な要素に転換していくこと。デジタルとアナログの融合によって、きっと新しい展開が生まれてくるのだと思う。
 以下、読者からの興味深いメッセージ。

「たまたま職場の生協で立ち読みして、Holy Life の写真と文章を読んで直ぐに購入しました。そもそも雑誌というものを買うことがめったになく、風の旅人は内容から考えれば高くないのですが、毎回購入するのには私にとってはきつかった為、これまでに4冊しか購入していません。廃刊になるまでは、隔月欠かさずお昼休みの楽しみとして、立ち読みを続けていました。kazetabiのウェブサイトもいつも拝見させて頂いております。廃刊に至った理由は少なからずも私のような無銭読者がいる事が一要因になったかもしれないと、廃刊のお知らせを読んだときはそう思いました。幸いなことに年2回発行の形で復刊となり、私にとっては少し金額的にも求めやすくなり、一冊をさらにじっくりと味わえる時間が出来、注文をさせて頂きました。その反面、立ち読みができなくなったことで、若い人たちがこの雑誌に偶然でも触れる機会が少なくなってしまった事が残念ですが。私は、風の旅人と偶然に出会えたご縁に感謝しています。復刊第1号を楽しみにしております。」

 私が年に2回発行にしたのは、この方が書いているように、年に6回だと内容が濃すぎて、きちんと消化する前に次の号が来てしまうという声をよく聞いたからだ。そのようにして定期購読も減ってしまった。さすがに44冊全て持っている人は、そんなに多くない。そういう人が実際にけっこういて、コドモに伝えたいとか言ってくれるのだけれど、それじたいが凄いと思う。でも、読み切れないまま次が出るより、自分の中でじっくりと消化して、次が出るのが楽しみという心理状況になっていただいた方が、長く続けられるような気がした。でもやはりそういう人はいたんだ、とメッセージをいただいて納得した。