気仙沼〜南三陸



津波で壊滅的な被害を受けている南三陸町気仙沼方面に行く。巨大津波による破壊は、これほどまでに凄まじいのかと、言葉を失った。

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(陸に打ち上げられた巨大な船/気仙沼) 



気仙沼は、現時点で533人が亡くなり、15000人が避難している。テレビでの映像で津波の瞬間が撮影され、何度もそのシンーンが繰り返されるのを見て気仙沼は全滅しているような印象があったが、実際はそうではなかった。海沿いに小高い山が幾つかあり、その背後はまったく無事だが、そこから離れた場所は巨大津波に直撃され木っ端みじんになり、大型の船が陸の上に持ち上げられているところもあれば、川が氾濫して胸の高さくらいまで水に浸かる場所が広範囲にわたってできるなど、場所によって被害がまったく異なっていた。市役所のある旧市街は小山の背後に隠れ、津波の影響をまったく受けていなかった。水道や電気が早く復旧している地域、プロパンガスが使える家などで、震災後も入浴ができる人もいたようで、町中で、家を失った人を無事な人が誘って自宅でくつろがせたりする光景もあったようだ。

酷かったのは、南三陸町。現時点で398人の死亡が確認され、800人が行方不明のままだ。今日訪れた志津川は、4階建てのビルを超える高さの津波によって街全体がなぎ倒され、そのまま瓦礫が海に持ち去られたような空っぽな空間が随所にあった。

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(四階建てのビルの高さを超える津波で破壊された志津川


志津川の避難所で話しを聞いたのは、訪問介護の仕事をしている途中に津波警報があり、要介護の人達のことを気にかけて、まず車椅子の老人の家に行って車で高台の福祉施設に運び、さらにもう一度町中に降りて視覚障害の人を車に乗せて避難しようとして津波に巻き込まれた人だった。この人は、津波に巻き込まれたものの、かろうじて残っている意識で沈んではダメだと水中で懸命にもがき、浮上し、建物の柵につかまって一命をとりとめた。

しかし、残念なことに、彼女が車椅子の高齢者を避難させた高台の福祉施設も、一階の背の高さくらいまで津波の直撃を受け、破壊されていた。


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(高台にある福祉施設津波に直撃され、一階が破壊された)


私もその場所に行ってみたが、まさかこんなところに津波がやってくるなどとは想像もつかない場所だった。人を助けるために運んで来たのに、まさかそんな高台まで津波が押し寄せるなんて。

今は、遥か遠くの方に静かな海をのぞむ場所に立ち、目の前の破壊尽くされた広大な場所とのギャップに、打ちのめされる思いになった。

自分が日頃考えること、イメージできることなど、たかが知れている。

ただ救いなのは、話しを聞いた介護職員が、一刻も早く仕事に復帰したがっているということだ。自分の助けを待っている人がいるので、また以前と同じメンバーで、介護の仕事を始めたいと言っている。その人は、4階起てのマンションの4階に住んでいたが、その部屋は津波の直撃で破壊され、今は、避難所暮らしをしながら、痛めた身体と心の恢復をはかっている。

自然は容赦ないが、人間の精神もまた、簡単にはくじけない強さを持っていることは確かだ。