一つの生(修正)

(昨日の修正)

「風の旅人」のVol.18(2月号)の見本ができあがりました。

 この号のテーマは、HEAVEN’S WILL です。そして、その次の4月号も着々と準備が進んでおり、そのテーマはONE LIFEです。この二つでセットと考えており、その二つを括るものは下記に書いた内容です。そして、この文章は、4月号に全体をまとめるかたちで掲載するつもりです。写真がないと意味不明でしょうから、ぜひとも写真と一緒になった「風の旅人」の2月号と4月号を見ていただきたいです。よろしくお願いします。


 宇宙の様々な現象について、人間は観測技術の発達により、かなり正確なデータを入手しています。しかし、それらの現象を現代の宇宙論で説明しようとすると、様々な矛盾が生じます。例えば、太陽の表面温度は六千度なのに、なぜその周辺のコロナは百万度を超えるのかなど。

 現代科学が教えるところによると、塵やガスがそれぞれの重力で集まって固まって巨大化して太陽ができることになっています。そして、内部の爆発力によってエネルギーを放出し、回転し、磁力を生み出していると説明されます。そのように内側から外側にエネルギーが伝わっていくということを前提に複雑な計算がなされ、太陽の中心は、一五〇〇万度という桁外れの温度として、数字の上で定められてています。そして、太陽の表面に見られる高温のプロミネンスも、太陽表面からの爆発で噴き出しているものと考えられています。しかし、太陽の表面が六千度なのに、そこから噴き出るプロミネンスの温度が約六万度になり、その周りの大気が百万度以上になるという理由を説明できず、棚上げになっています。この理論でおかしいのは、太陽の内部が高圧で高温になっていると説明することです。

 高圧になればなるほど物質の運動能力は低下し、温度は下がるのです。

 また、もし太陽が水素の星であれば、その上空のコロナが100万度もあるゆえ、液体や固体としての状態を保つことはあり得ません。水素は、氷点下252度で気体になってしまうのですから。それゆえ、コロナの100万度の温度でも気体化せずにどろどろに溶けた状態でいられる物質が太陽の表面を被い、その中は、固体になっている筈です。おそらく、太陽は巨大な金属の塊でしょう。

 太陽が金属の塊で磁石としての働きを持つと考えると、説明はすっきりします。磁石として物質を引き寄せ、その引き寄せる莫大なエネルギーが物質に猛スピードを与える。黒点が増えると磁気が活発化し、その時に太陽が活発化することはよく知られていますが、その理由を現代科学では説明できていません。しかし、太陽が磁力エネルギーで燃焼していると考えれば、黒点の謎も説明できます。

 それと、私たちは、光というと明るく輝くものを想像しますが、それはむしろ弱い光であり、γ線などの強い光は、色も熱もありません。すなわち、暗闇なのです。暗闇こそ、光の初期段階です。 

 モノゴトは、内側からの爆発エネルギーで成り立つと考えるのは近代の癖です。内側のエネルギーと外側のエネルギーを交換しながら全ては整っていく。人間活動もまた、同じだと思います。そして、エネルギーが分化せずに漲った状態、すなわち全ての始まりと終わりは、真空の闇なのだと思います。 



E=PK

E:エネルギー p:ポテンシャルエネルギー K:運動エネルギー


第一章

 全てはエネルギーに満ちた真空の闇から生まれた。真空の時空に揺らぎが生じた時、ミクロの物質が生まれ、真空の闇からエネルギーを得て激しい運動を起こした。それは、陽子と呼ばれるものになった。陽子は、γ線などの放射線の波を生じさせながら暗闇のなかを高速で運動し続けていた。やがて、陽子が増えてくると、互いに干渉を起こし、運動エネルギーを低下させた。そして運動力の落ちた陽子が他の陽子と結合して質量が大きくなると、さらに運動力が衰えていった。その時点ではまだ、目に見える明るさや色や、感じられる温度を持たない時空だった。第一のシステムは、ここまでである。

第二章

 質量を増やして運動力が衰えた陽子のなかから質量の大きな陽子や原子や分子になるものが増えて、より運動力を低下させると、その低下した運動エネルギーは、熱と感じられるエネルギーや、目に見える明るさとなって閃光を走らせ、感じられる温度として超高温の状態となった。その時が、人間にとっての光の始まりであり、ビックバンである。

 そして物質が原子や分子になると、そこに磁場が生まれた。その磁力によって互いに引きつけ合った物質はますます質量を増加させ、運動力を失っていった。それとともに、温度は低くなり、光は弱いものになっていった。しかし、それでもなお、鉄などの重い物質が気体から液体になるくらいの高温だった。やがて、質量が大きくなりすぎた所は停止したまま回転をはじめ、それじたいが、強い磁石のような存在になって時空をつくり、周りから次々と物質を引き寄せて星となり、一つのシステムとなった。

 その星の磁力に引かれ、遠方から様々な分子や原子が高速で引かれていった。その磁場の遠方に存在していた陽子は、磁場に干渉されてエネルギーを低下させて閃光と熱を放ち、原子となり分子となるプロセスを経て、温度を低下させながら星と結合していった。星の近くでは、磁力によって高速で引かれる分子や原子が、高密度になるとともに低下した運動エネルギーを熱エネルギーに転換して、星と結合していった。星の表面は、金属がどろどろに液体化していたが、その上のコロナ大気の部分の高熱のために激しく気化し、分子から原子となり陽子となる循環を繰り返していた。

 そのようなシステムを行うもののなかで、磁力圏が巨大なものは、ブラックホールとなった。

第三章

 太陽系と呼ばれる世界のなかにも、太陽の磁力と干渉し合いながら小さな磁場が生じており、その磁場を中心に周辺の物質が引きつけられて星が生まれていった。太陽に近い所は、太陽の磁力によって軽い気体分子を引かれ、金属や岩石など硬い物質だけでできた星になり、外側にある星は、軽い気体分子で膨れあがった星となった。

 その中間の火星や地球や金星は、気体や液体や固体がほどほどに集まる星となったが、太陽に近い方が、より重い気体や重い液体に包まれることになる。金星の表層は、二酸化炭素の大気と、液体状のマグマである。そのように、太陽系のなかで惑星という物質形成が整って太陽を中心として周りはじめると、磁力から遠心力が差し引かれ、重力というエネルギーで結びつく関係になっていった。

第四章

 太陽の磁場のなかの小さな磁場から生まれた物質の塊が地球になった時、地球の磁場は回転運動を起こし、その中で圧力をもとにした新たなシステムが生じていた。物質に加わる圧力が強い中心部は融点や沸点が高く固体となり、その逆の表層部は、気体となる。そのようにして地球は、核、マントル部分、マグマ部分、大気圏といったぐあいに、固体、液体、気体の層に分かれた。それぞれに分離した層の中では、磁力が圧力や温度に状態変化しており、その力が、それぞれの層を循環させて、地球内部ではマントル対流が起こり、表層でも、大気の循環が行われた。

 そして、地球の表層圏は、それぞれの層の接点として、固体、液体、気体が混じり合う環境で、しかも、太陽活動の影響を受ける場所となり、そのことが次のシステムを生み出す特別なものとなった。

 地球の表層圏にある気体、液体、固体は、地球の磁力や圧力や熱力と太陽の磁場や熱の影響を受けて循環を繰り返していた。その循環は、次第に、固体と液体と気体の間を自在に移動する運動システムになっていった。大気中の二酸化炭素が水中に溶け込んで石灰岩となる。また、水が蒸発して酸素と水素になり、雨となって降り注いで大地を削り、地中深く染みこんで他の物質と結合して、海に注ぐ。そうした運動が繰り返されるうちに、地球の表層圏で、気体と液体と固体に姿を変えやすい水や二酸化炭素などの分子が、他の物質と結合して循環の担い手になっていった。水や二酸化炭素などの分子が物質を切り離したり結合したりする力は、圧力や磁力などが分化した電気力だった。

 その電気力によって大きくなっていったものが炭素化合物や炭化水素化合物という高分子である。

第五章 

 地球の表層に大きな高分子ができてくると、それじたいが一つのシステムとなった。高分子は、気体や液体を取り込み、その内側の電気力で化合物をつくっていった。

 その物質変換のシステムは、固体、液体、気体という異なる環境が重なる場所に発達した。それは海であり、陸のうえでは水たまりであったかもかもしれない。そのシステムは、地球の表層圏に多い水や二酸化炭素を吸収し、固体の炭素化合物と気体である酸素をつくり、他の物質と結合しやすい炭素の性質を利用して、より多様な物質を循環させるというもので、その運動を頻繁に繰り返しているうちに、多様な物質循環をよりスムーズに、より精密に行うシステムが必要になり、それが少しずつ整っていた。それが細胞システムである。細胞システムを発達させた植物は、大気に葉を広げ、地中に根を張り、大気と地中の間で頻繁に物質循環を行い、それは今も続いている。そして原生動物は、植物との相互協力のなかで、物質循環をより多様に広範囲に行う存在としてシステムを作り上げていった。

第六章

 原生動物もまた細胞システムを通して物質循環が頻繁に行っていたが、多様な植物を摂取すればするほど物質循環が複雑になり、動物細胞は地球上の各種の物質が集まっては交換されるという特殊な場となって運動を続けた。そうしているうちに、細胞のなかでも物質循環が頻繁かつ急速に行われる場所が生じ、その循環をより素早く正確に行うための反射力を持つシステムが生じてきた。それが神経系である。神経系は、電気エネルギーによって働く。神経系というシステムが生じると、このシステムを中心にして動物が動物を摂取することなどを通して、地球上での物質循環が急速に多様化し、複雑化し、そのたびに神経系が発達し、そのたびに異なる種類の生物が生まれ、それぞれの役割を担っていった。

 そのプロセスが複雑化し、地球の表層の物質が極めて多様で変化の激しい世界になっていくと、その運動を促進するため、雑食性の動物も生まれた。雑食性の動物は、複雑で多様な物質を見極めて判断する反射力が必要となり、それに対応するシステムが整えられていった。それが神経系の、刺激と記憶と判断を結びつける部位であり、人類の始まりである。

 それゆえ人間の進化は、最初は、より神経過敏な方向へと進んだ。その方が、記憶領域が発達するからである。そして、在る段階で、より好奇心旺盛な方向へと進み、見聞を広める衝動も生まれた。その方が記憶領域が発達するからである。その分岐点が、ホモサピエンスの誕生だろう。ホモサピエンスになってから、人類は大きな旅を始めた。現世人類は、10万年前のアフリカの女性に起源を辿ることができると言う。

第七章

 そのようにして発達していった人間の神経系の刺激と記憶と判断を結びつけるシステムは、道具を生み、言葉を生んだ。

 しかし、やがて道具や言葉は、それじたいが別々の分化したシステムとなって運動をはじめ、それぞれのシステムどうしが相互関係を強めていった。宇宙誕生の時から、システムというものは運動を生み、運動によって新たなシステムに分化され、その新たなシステムはさらなる運動を生んで他のシステムと関係を持っていく性質があるからである。

 すなわち、道具は、道具を構造的に組み合わせた機械となり、機械的なシステムのなかで増殖していった。言葉もまた、刺激や記憶や判断とは別に、それじたいが知識記号の構造を作りあげて増殖していった。さらにこの二つのシステムが相互関係を深めていくと、より強大な力をもつシステムとなり、地球圏に様々な形で蓄えられていたエネルギーと結びつく運動が生じた。火を得るために森を燃やし、鉱物資源から鉄や銅など様々な物質を分離して、様々に異なる物質をつくっていった。やがて木の変わりに高エネルギーを蓄えた石油などの炭化水素化合物を分離してエネルギーを生み、ついには、ウランの原子核から核力を取り出した。

 現代社会において、知識記号の構造物や機械が、猛スピードで増殖して複雑に多様に分化していき、多種多様な物質が溢れかえり、それらが相互に複雑に結びついたり離れたりしながら、日々、新たな展開を生じさせ、活発化している。

最終章:そこにある未来

 はじまりに漲っていた真空の暗闇のエネルギーは、暗闇のなかの陽子の激しい運動という人間の五感では認識できないプロセスを経て、熱と明るさをもつ閃光となった瞬間から、

今日見られるように多様な<かたち>にエネルギーを分化させ、その<かたち>ごとに統合された一つのシステムを形成し、運動を行い、また新たな<かたち>あるシステムをつくり出してきた。その連続は、一つの生の連なりと言えるものである。

 そして、それぞれのシステムのなかでは、物質の運動を促進するエネルギーが働いている。そして、一つのシステムのなかで最も運動が激しい部位で歪みが増大し、それを改善するためのシステムも、その部位で整えられていく。

 人間の神経系システムの働きによって、現在もっとも複雑化して分化し、歪みが生じているところは、文字や映像や世の中の現象を見ること等を通じて反応する視覚部位である。そして、この部位の過剰で高速な刺激反応に関わっているのは、人間の五感で認識できる光の波である。

 宇宙の歴史は、その光のエネルギーによる新しくダイナミックな運動を起こす段階に来ている可能性もある。

 奇しくも、複雑化した文字や映像などの情報物質の交換は、コンピューターや光ファイバーを通じて、より加速化されている。さらに、地球システムを食いつくして燃焼エネルギーを得るのではなく、太陽の光と水から水素を分離して燃焼エネルギーにするシステムや、太陽電池などの開発も急速に進められている。

 現代社会は、光を通じた新しい<かたち>あるシステムが整うのが早いか、地球システムが食いつくされてしまうのが早いか、微妙な分岐点にきている。

機械的構造物は、光と結びついた時、<道具>になるだろう。

 知識記号の構造物は、光と結びついた時、<ことば>になるだろう。