損保やNHKの問題とわたしの考え

 保険会社が保険料を過大に徴収している問題が、私のところにも降りかかってきた。

 家のローンを組む時、強制的に火災保険に入らなければならないのだが、現時点で保険会社に登録されている保険金額の方が、契約時から私が持っている保険証券よりも高くなっているのだ。

 月々の引き落としは保険会社に登録されている金額に基づくわけだから、実際の金額より多めに引き落とされていたことになる。

 保険会社は、その原因について調べたうえで報告を申し上げるとのことだが、その事実の確認に至る経緯を見ても、保険会社は楽な商売をしているなあという感想を持つ。

 まず、郵送で「火災保険 ご契約内容 確認ガイド」というマニュアルが届く。それとともに、保険会社に登録されている記録の出力票が送られてきて、手持ちの保険証券との違いがあれば、添付の葉書に書きこんで保険会社に送りなさいというのだ。

 私は、そういうスタンスに腹を立てるから、葉書など出さずにすぐに電話をした。

 このスタンスは、長期不在であったり、他の郵送物に紛れ込んで確認できなかったり、忙しくて読めなかったりして契約料の違いを確認できないために保険会社に葉書を出さなかったら、契約内容に問題があった場合でも、保険契約者が「問題無し」という意思表示をしたことと同じになってしまう。

 直接言ってこない人には年金を支払わないという社会保険庁と同じスタンスだ。

 さらに、「契約内容 確認ガイド」の内容も、わざと不親切なのか、頭の悪い人が作っているからなのか、内容が非常にわかりずらい。スペースに情報を散りばめているだけであって、契約内容の確認作業において行わなければならない手順に添って書くとか、いろいろ工夫ができる筈なのに、説明内容が、飛び飛びなのだ。しかも、専門用語を唐突に使う。

 最初のページを開いてすぐのところに、

<<・・建物の「構造級別」について・・とあり、「建物のリスク実態に応じた区分」を構造級別と呼び、区分により保険料率が異なります。対象となる建物の構造級別について、正しい構造級別が適用されているか御確認をお願いします。<< とある。

 唐突に「細部」の話しなのだ。

 本来は、保険料を算出する全体の構造や必要要素を簡潔に示し、その全体のなかの細部を一つ一つ説明する。というスタンスを取るべきだろう。

 唐突に、「構造級別について・・・」と細部の説明を持ってくる人は、おそらく、会話をする時も、きっとこうなんだろうと思う。相手の立場に立てる人の話というのは、バックグラウンドとか全体を最初に示し、自分が話す部分はそのうちのどの部分に当たるか、という説明の仕方をすると思う。

 こうしたガイドの作り方や、何か問題があれば葉書で伝えてこいというスタンスなど、まったくもって自分本位の頭の使い方しかできない人間たちのグループなんだなあと思わざるを得ない。 

 100円、200円の買い物ではなく、毎年10万円ほども支払わなければならない保険なのだ。電話でもいいから担当者がきちんと連絡してきて、問題がないかどうか確認し、説明を行うべきだろう。楽をしているとしか思えない。

 私の会社で行っている旅行契約など、こちら側の論理で行うわけにはいかないから、それなりの人的エネルギーを投入する。損害保険会社の人間の給与が異常に高いのは、このように自己都合的に楽をしているからだろう。

 しかも、銀行のローンを組む場合、強制的に保険に入らなければならず、銀行は自分たちと関係のある損害保険会社を紹介する。談合体質の彼らは手を組み合って既得権を守る。だから、地道に顧客の信頼を積み重ねていかなければならないという気持ちは弱い。

 ガイドやカタログにしても、旅行商品ならば、意図が伝わりにくい内容の物を作ってしまうと、それだけで契約が減ってしまうという危機感がある。だから、読む側にきっちりと情報が伝わる伝え方がどんなものか必死に考えなければならない。保険会社には、そういう危機感はないだろう。

 それにしても、なにゆえに契約内容が異なるというミスが起こったのか。私は、単純なインプットミスとは思えない。

 社内のコンピュータに記録される契約高は、それぞれの部署の成績になるだろう。社内的な数字のノルマがあって、それに達しない時、社内のコンピューターをいじっているのではないか。契約者は、わかりにくい説明カタログのため、月々の支払い金額について正確に把握しておらず、保険会社を信頼して、お任せにしてしまっている。だから気付かないのだ。

 私が契約を行った5年前は、不動産、保険会社、金融などの業界の業績がとても悪かった。だから、大きなノルマが課せられ、強いプレッシャーが与えられていたのではないか。

 そしてこの時期になって、そういう組織的な不正が社内で判明した。これはまずいということになって、慌てて確認作業を進めているのではないかと私は詮索してしまう。保険料を過大に徴収しているという事実自体が、単なるミスでないことを示している。

 話しは変わるけれど、私はNHKの受信料を支払っていない。

 委託の料金徴収係の人が来た時に、NHKの社員が来れば話しを聞くとは言っている。でも、高給取りのNHKの社員は来ない。彼らは、自分ではそう思っていないだろうけれど、私などから見れば、楽をしすぎなのだ。

 「風の旅人」にしても、作るだけならそんなに難しいことではない。もっと難しいのは、それを買ってもらうことだ。しかも、人のプライバシーで読者の関心を引いたり、多くの人が関心を持ちそうな娯楽とかショッピング熱を煽るようなスタンスではなく、むしろそれと逆行するようなものを作っていながら人々に買っていただき、作り続けることが、もっとも難しいのだ。

 収支のバランスをとらなければならないから、取材撮影などにおいても、私はカメラマンと二人で行って、自分がアシスタントカメラマンのような役割をする。タクシーもほんとうに必要な時しか使わない。取材の文章も自分で書く。ロケと称して、それが必要人数だからといって大勢の人を引き連れて動くお金に恵まれた人たちもいるだろう。NHKがそうだと言うつもりはないが、お金の使い方に関して、身銭を切っている感覚の人間とは、まったく異なると思う。

 私は、NHKの社員が来たら、誓約書を書いてもらおうと思っている。誓約書を書いてくれたら、受信料を支払う。

 口先で謝るのではなく、「視聴者から強制的に徴収したお金に関する不始末は二度と致しません。もし、それを行った場合は、それ以降の契約解除を承ります。」という内容のものだ。

 本当は、不始末が行われた場合、それまで支払った受信料を返金します、とまで書かせたいけれど、それは絶対に書かないだろうから、そこまで言うつもりはない。しかし、将来において相手が不始末を起こした際の契約解除権すら与えられないなんて、あり得ないことだと思う。

 「将来、俺達が何をどうしようが、おまえらに契約解除する権利なぞないのだよ、お金を払い続ける宿命なのだよ」という横暴なスタンスを認めるわけにはいかない。

 ましてや、紅白も大河ドラマも見ない私は、NHKなんかなくても、まったく困らないと思っているのだから。

 二度と致しませんという口約束ではなく、今後、NHKが約束を破った場合、私たちが契約を更新するか解約するか決めることができる自由を、私たちに残すべきだと思う。

 そういう誓約書すら書けないから、同じことが起こるのだ。

 NHKが脅かしのために行っている裁判で、もし私が使命されたら、この誓約書を元にしてNHkと争うつもりだ。

 誓約書すら書けずにお金だけ自動的に徴収するスタンスを、認めていい筈がない。物やサービスを一生懸命提供して、その報いとしてお金をもらって生きている人は、みんなシビアな世界にいるわけで、NHKだけ例外扱いする理由なんてない。

 損害保険会社にしろ、NHKにしろ、社会保険庁にしろ、コツコツと自分の身体でお金を得る努力をせず、自動的にお金が自分たちのところに入ってくる人間は、そのお金の大切さをわかっていない。

 そして、今日の社会で楽に儲けているのは、このように自動的にお金が自分たちの懐に入ってくるシステムの恩恵を受けている人たちなのだ。そのシステムを自分で構築したのならまだマシだが、既存のシステムのなかに何とかもぐりこもうとしている人が多い。幼少の頃から、そういう競争ばかり強制されている。大学生の就職希望ランキングの上位に、そうした職種が多いことが、この国の将来を、せせこましく、息苦しいものにしている。


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