縄文風土器 野焼き編

 八ヶ岳山麓に、映画監督の小栗康平さんと本橋成一さん、IAC Group代表の皆川充さんが集まり、縄文風土器の野焼きを行った。

(クリックすると、写真は大きくなります。)

(左) 小栗さん (右) 本橋さん

R0011622



 8月に丹沢で試みた時は、準備不十分で失敗したが、今回は、”火”の扱いの名人級の助っ人が揃っており、周到に、繊細に、火と取り組むことができた。
 世界的な大監督である小栗さんは、美意識が徹底し、芸が細かい。
 まずは、地面に美しいサークルを描いて、サークル内の土を15センチくらい掘り起こし、その土をサークル上に積み重ねて、野焼き用の窯を作る。
 まず始めに中央で焚き火を行う。木が燃えて熾火になった状態のものをサークル状の土壁の内側に配置させる。さらに、その内側に灰を敷き、灰の上に土器を置き、サークル状に配置した熾き火の上で、最初は小枝から燃やしていく。遠火の輻射熱でじわじわと土器を温めていくのだ。

R0011624



 土器の温度が少しずつ上がってくると、色がやや赤みを帯びてくる。それに合わせて、太い木を投入し、火の勢いを強めていく。
 その状態で2時間〜3時間ほど充分に乾燥焼きを行う。前回は、この段階が短か過ぎて焦って炎の中に放り込んでしまったので、土器が壊れてしまった。
 今回は、家に帰る必要がなく、日が暮れても作業を続けることができたので、安心して待つことができた。
R0011640



 土器の色が完全に変わったら、火をガンガンに焚き、サークルを少しずつ狭めていき、土器に直接炎がかかるようにする。すると、土器が真っ黒になる。
 さらに火を強め、しばらくそのまま焼き続けると、次第に黒い部分がレンガ色になってくる。 

R0011644



 インターネットなどで私が調べたところでは、これで終わりだけど、小栗監督の指示のもと、全ての薪が熾き火になったところで、土器に被せて、土器を埋めてしまい、朝まで待とうということになった。
 みんなで食事をして酒を飲みながら、代わる代わる様子を見に行くと、深夜の12時くらいでも熾き火は燃え続けていた。
 ”火”というものは、人を夢中にさせる。その”火”を上手にコントロールすることは、大きな喜びだ。
 今回は、蓼科の本橋成一さんの家に集合したのだが、本橋さんは、蒔きストーブは当然のこと、御飯も釜を用いて蒔で炊く。お米にお焦げの香りがついて、とても美味しいのだ。早朝、本橋さんは、庭に出て薪割りをするのが日課になっており、その音で目覚める。
 朝になって様子を見に行くと、土器焼きの為に特別製作した窯は真っ白になっており、その中から土器を掘り起こす。丁寧な仕事を積み重ねたうえで、最後は天命を待つ気分だ。

R0011646



 決して綺麗とは言えないが、なかなか味のある風合いに焼けていた。

R0011660


 とても手厳しい職人達の御陰で、今回は成功することができました。
 有り難うございました。 

R0011650


 天気にも恵まれ、毎日、美しい八ヶ岳を仰ぐことができました。

 いつも八ヶ岳周辺に行くたびに感じるのだけど、このあたりは、気の巡りがいい。体調がよくなるのだ。とはいえ、毎回、朝方近くまで飲み明かしているので、その後で、どっと疲れがでるのだが。

 八ヶ岳から山梨県方面に向かって縄文遺跡が集中しているが、きっと土地の力が人を呼び寄せたのだろうと思う。