自殺社会と、高齢社会

 自殺者が、14年連続で3万人を超えている。昨年の震災の犠牲者の倍以上の人が、14年連続で自殺している。毎日90人も自殺しているけど、今日自殺した人に関するニュースは、タレントを除いて、まったくといっていいほど報じられない。http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120309dde001040008000c.html
 年間に3万人以上の自殺者のうち、三分の一以上が、60歳以上。高齢者が安心して暮らせる社会をつくらなければならないとよく言われるが、よくよく考えてみれば、人類史上、仕事も生殖を終えた後に、20年も30年も生きた時代はなく、その長い期間をどういう心理で生きればいいか前例がないわけだから、不安があって当然だ。http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_tyosa-jikenjisatsu-year

 高齢者の不安は、生活のこととか健康のこととか色々あるだろうが、仕事も生殖も終えた後、つまり生物として生きる活力のもとになるものを失ってから20年以上もの間、どのような精神で生きていくべきか、中心となるべく思想が確立されていないことが一番大きいのではないか。それがないと、いくら老後の楽しみに浸ろうとしても、ちょっとしたことで不安になる。
 政府は、老人が貯金を貯め込んで使わないということで、なんとか彼らにお金を使わせて、経済を活性化させようとする。しかし、ちょっとしたことで精神的に不安になる老人が、そう簡単に都合のよい消費者になる筈がない。
 不安は、取り除こうとしても取り除けない。不安は、それを打ち消し忘れ去ってしまうほど、夢中になれる何かがあれば、解消されることがある。
 消費者として老人をあてにするのではなく、社会資本として、生き生きと活動できる状況を作り上げる方が賢明だろうと思う。仕事や生殖を失った後も、生きる活力を獲得できるように。