地下世界を通して、未来を透視できる。

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 現在、新宿のニコンサロンで内山英明さんの写真展が開催されています。今日、内山さんのトークニコンサロンでありました。内山さんのこれ
らの写真は、風の旅人の復刊第一号で紹介しました。
 私は、内山さんは、現在の日本でとても重要な写真家だと思っています。
 内山さんは、もうかれこれ日本の地下世界を25年以上も撮り続けています。これだけ日本の地下に精通している写真家はいません。そして、地下世界というのは、単なるマニアックな世界ではなく、今、とても重要なのです。
 1980年くらいまでは、たとえば新宿とか銀座とか、地上世界のどこかを撮影すると、その時代ごとの雰囲気が出ていて、それらを通して時代の変化を感じることができました。
 しかし、1990年頃から、地上世界はほとんど変化していません。新宿の写真とかを見ても、2010年か2000年かよくわからない。スマートフォンを持っているかどうかで違いは出ていますが、町中の変化はそんなに変わっていません。新宿ではなく、大久保あたりに行くと、外国人が増えて変化していることがわかりますが、それは局所的な現象で、地上世界の光景を見て時代全体の雰囲気がわかるような写真というのは撮りにくくなっています。
 ならば、この20年間、時代はまったく変わっていないかといえばそうではなく、劇的に変化している。コンピューターや携帯電話の普及によって、人々のライフスタイルは大幅に変化しました。そうしたライフスタイルの変化を支えている動きが、地上ではなく、地下に潜っているのです。
 現在、地下世界では、核融合実験、最先端の医薬品の動物実験、宇宙の真実を探求する素粒子研究その他、時代のエッジにあたることが行なわれています。
 そして、内山さんの話では、生命研究や核研究など、地上の倫理感を揺さぶるようなアンタッチャブルなことが、この10年の間、地下世界でどんどん増えているのです。
 そのように地下世界で着々と進められていることを私達は知らされていません。私達の未来の問題は、地下世界を通して考えなければいけないかもしれないのに、その情報があまりにも少ない。そういう意味で、内山さんが行なっていることは、きわめて貴重なのです。
 内山さんの地下世界の写真、風の旅人でも、何回も紹介しました。現在、販売している45号http://www.kazetabi.jp/復刊1号-販売/
と25号は必見です。そして、今、行なわれている新宿ニコンの展覧会にも、ぜひ足を運んでください。