中学三年生の息子が、家で地理の勉強をしていて、「縄文杉」とか何とかブツブツ言っているので、勉強の邪魔をして、屋久島の話をする。
縄文杉の樹齢が7千〜8千年ということは教科書に書かれており、息子も知っている。しかし、なぜ、そんなに長く生き続けるかは、教科書に書かれておらず、息子もわからない。
また、屋久杉の定義も、教科書には書かれていない。
縄文杉=樹齢7千年とだけ子供に覚えさせても、それでは何にもならない。日本の教育って、つまらないなあ、上辺だけだなあと思わざるを得な
息子は、屋久島に生えている杉が屋久杉だと思っているので、そうではなく、屋久島にも一般の杉はたくさん生えていて、千年以上生き続けた杉だけを屋久杉と呼ぶのだと説明。
ではなぜ千年以上も生き続けるのかと息子に質問したら、雨がよく降るので土地が豊かになって長生きするのだろうと答える。雨が降らない→砂漠→植物が育たない、雨が降る→豊かな大地→植物が育つ、という固定したイメージは、誰もが持ちやすいものだ。
しかし、答えは逆なんだ、雨が降りすぎて土地の養分を洗い流してしまって、屋久島の土地は痩せている。その痩せた土地で精一杯生きながら、毎年、1mmになるかどうかの年輪を少しずつ積み重ねていき、千年経って、ようやく一般的な杉の太さになるのだと説明。でも、一般の杉と屋久杉の太さは同じでも、スクスク育った杉は中が腐りやすく、空洞になってしまったものも多く、台風の大風を受けると倒れてしまう。屋久杉は、中身がぎっしり詰まっていているうえに、たっぷりの油脂のお陰で腐りにくく、折れにくい。そのように、少しずつでも地道に成長した方が、長く維持できる。結果を急いで近道なんて考えない方がいいんだと教訓じみたことを付け加えた。というのは、勉強の前に、身体の線が細い息子は、筋肉トレーニングをしながら(中三の頃の男子は、そういう傾向がある)、早く筋肉をつけたいのでプロテインでも飲もうかななどとバカなことを言っているから(でも私も、学生時代、ラグビーをやっていた時、プロテインを飲んで筋肉トレーニングをしていたけど、それは内緒)、「ダメだよ、そんな風についた筋肉なんて、少し練習を休めばすぐにブヨブヨになるよ」と忠告したばかりだったからだ。
とかなんとか、屋久島の話が長くなった後、息子は、合点がいったように、「ようするに、筋トレと同じだと覚えておけばいいわけね」と、とりあえず理解はしたみたいだった。
筋トレに限らず、人生そのものが・・・という比喩のつもりだったのだが、まあそこまでの話になると、抽象的で、説教臭くなる。筋トレくらいの方が、今の息子には身近で具体的で、いいんだろうな。
この写真は、水越武さんの縄文杉の写真。風の旅人、第6号で紹介した。自然の写真では、水越さんのものが、ダントツに好きだ。地道に歳月を積み重ねていくことで生じてくる自然の凄みを、いつも感じさせられる。癒しは、人間世界にも溢れすぎているが、凄いものは、希有だ。