第1087回 ウィルスは殺戮目的でやってくるのではない。

 

ウィルスの感染による死と聞くと、ウィルスが殺戮目的で体内に侵入してくるような気がしてしまう。しかし、ウィルスの生存戦略は共生であり、侵入した相手が死んでしまうと自分も生き残れない。

 だから、通常は特定の動物の中で共生している。今回の新型コロナウイルスはコウモリ由来だと考えられているようだが、そのウィルスが何かしらの理由で他の生物に感染してしまうと、そのウィルスに慣れていない側の身体が、不測の事態に対して対応しようとする。

 問題は、その対応の仕方であり、それが免疫システム。コロナウィルスへの対策は、感染を広げないことで自らを守るということも大事なのだろうけれど、それでも完全に感染を防げるとは限らないのだから、免疫システムという対応力のことも、考えていく必要があるのではないかと思う。

 アメリカやイタリアなどが、なぜあれほど感染者数および死亡者数が急増したのか。アメリカでの感染者数は、黒人が圧倒的に多いらしいが、それはなぜなのか。

 黒人が多いというのは人種的な問題というより、貧困層が多いとか十分な医療が受けられないという理由も挙げられているが、たとえば肥満率も相当に高い。昔は、でっぷりと太った人がお金持ちの象徴だったが、今では逆だ。

 アメリカの貧困層は、貧困層に無料で提供されるファーストフード食品への依存率も高い。ファーストフード産業や清涼飲料水産業は、子供の頃から味覚の中毒化を起こさせて、生涯にわたって加工食品への依存度を高めさせる戦略なのか、貧困層への食糧配給をマーケティングの実践の場にしている。慈善という仮面を被った企業の奸計。

 イタリアは、日本と同じく高齢社会だけれど、日本に比べて肥満度は高い。イタリア料理は健康なイメージがあるが、イタリア人は、サラダとか食べず、肉ばかり食べている人が多い。トスカーナ地方などは特にそう。海に囲まれているのに、魚はあまり食べていない。

 同じラテンヨーロッパで、スペインに隣接したポルトガルはイタリアやスペインに比べて感染が抑えられており、それは結核予防のBCGワクチンのおかげではないかと言われているが、ポルトガルは、スペインやイタリアと違って、日本のように魚介類をよく食べている。

 世界の肥満度の傾向を見ると、西洋人に肥満が多く、アフリカやアジア民族は肥満が少ない。日本は先進国でありながら肥満の割合は非常に少ない。

アメリカ37.3 イタリア22.9 スペイン27.1 フランス23.2 日本4.4 感染率の高いイランも肥満率が高くて25.5)2016年WHO統計

 もちろん、肥満度とコロナウィルスの感染率の高さの関係を示す科学的な裏付けは何もないけれど、ウィルスの封じ込めばかり考えるのではなく、ウィルスというのは人間が封じ込めようとしても完全に封じ込めるのは不可能な存在であり、共生の道も探らなければならない。

 ウィルスが入ってきた体は、免疫機能で対応しようとする。大半の人はそれで終わりなのだが、なかには、免疫系が暴走して、健康な組織も含め破壊してしまうことが起きる。

 人工呼吸器が必要になっている人は、こうした事態が体内に起きており、体内組織の損傷はウィルスによるものではなく、自らの免疫系の暴走だ。

 ウィルスに感染しても、すぐに治る人と、重症化し、死に至る人の違いは、免疫系の対応力にかかっている。

 イタリアやアメリカで起っていることが必ず世界中で起きるとは言い切れない。もちろん、その可能性はあるけれど、健やかな免疫力を育むために、とくに食生活やライフスタイルなど、感染率の低いところがあれば、そこからヒントを探っておくことも大事だという気がする。

 ウィルスは、現れたり消えたりしているのではなく、人類誕生のはるか以前から地球上に存在している。そして、人間の歴史をふりかえってみても、そのウィルスが人間に深刻な害を与えるタイミングは、何かしらのサイクルがある。

 それは、人間社会に大きな変化が起きている時だ。そしてなぜか、気象変化や天変地異も同時に起っている。まさに聖書の黙示禄のようなことだが、なぜそういう時に伝染病が蔓延するのかと想像してみると、人間の体内(特に免疫系)でも何かしらの変化が起きているからと考えることができる。もちろん、人の動きが活性化して、接点が増えるということもあるが。

 それはともかく、免疫系は、規則的なパターンで機能しているものなのだから、人類がこれまで経験してこなかった状態、新規の生活習慣や食生活をはじめたり、それらが頻繁にイレギュラーに変わると、その新環境に慣れるまで、適度な反応がしずらくなるだろう。

 食べ物にしても何にしても、昔から行われていることを繰り返し行うことが、免疫系にとって、もっとも安定した反応ができる状態なのだと思う。

 

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