第1235回 聖徳太子の時代との不思議なつながり。

 昨年の春から四国、山陰、伊豆、畿内大和川、石川、京都の桂川周辺などを個別に探索し続けていて、その都度、取材メモとしてブログなどで記事を書いてきた。

 今回、Sacred world 日本の古層Vol.3 https://www.kazetabi.jp/

 を制作するにあたり、それらの記事を見直したりして作っていけばいいと思っていた。

 しかし、今年の春、聖徳太子の御陵のある太子町周辺を探索した後、聖徳太子の時代について色々と考えて文章を書いていると、この1年、探索し続けていた場所のことが全てつながってしまった。

 それらの地を取材していた時は、そういう意識はなく、その都度、心のおもむくままに次の場所を決めて訪れて、今回の制作にあたっても、別々のパートとして扱うような感覚だったのに、全ては必然であったかのように一つながりで、自分でも驚いた。

 そして、ゴールデンウィークの頃から書き始めて、一挙に全部、書き上げてしまった。それまで1年間、コツコツと書き溜めていたこととは別に。

 作り始めたのがゴールデンウィークなので、完成は9月くらいでいいと思っていたのだが、不思議なほど、文章も構成レイアウトも、あっという間にできてしまった。最初からそう決まっていたかのように。

 時間をかければ良いものができるわけではない。

 私は、風の旅人を作っていた時も、2ヶ月に1度、新しい企画を作り続け、その企画にそった写真家や作家と連絡をとり、趣旨を伝え、膨大な写真から選び、構成し、執筆者の文章もチェックし、それを全て一人でやっていたので、速さには自信がある。

 というより、ゾーン状態における速さ、その極度の集中力が、自分の力以上の何かを引き寄せるために必要ではないかという気さえしている。

 今回、Sacred world3の制作を終えて、これだけ必然的に全てが繋がったものと同じものを、もう一度作れと言われても絶対に無理だと思う。

 そして、さらに不思議なのが、私は、兵庫県明石市藤江という場所で小学校3年から中学3年まで育ったのだが、この藤江が、自分でも驚くほど、非常に重要な鍵を握っていると、制作している途中でわかったこと。

 大阪の四天王寺には、鳥居があって、この鳥居が、境内の伽藍などの配置とはまったく関係なく西を向いて立っており、空海をはじめ、古代から色々な聖人と縁のある場所だった。

 なぜ西を向いているのか? というのが謎とされているが、この鳥居が指している方向に、明石の藤江の浜がある。

 藤江の浜というのは、住吉神の流れ着いた場所で、ここが住吉神発祥の地。

 源氏物語では、落ち目となった光源氏が流れてきたのが、明石であり、住吉神の加護を受けて、復活していく。

 明石というのは、地理的にも瀬戸内海の際なのだが、運命的にも、瀬戸際の場所で、源氏物語以外にも、新羅遠征から戻ってきた神功皇后忍熊皇子との戦いなど、それに類する物語が多くある。

 明石は、淡路島に面した場所だが、この淡路島がもっとも大きく美しく見える場所が、藤江だ。

 淡路島の横長の腹の部分が藤江に面している。だから藤江からは、島という見え方ではなく、陸地の対岸に見える。私は、海のすぐそばで育ったのだが、子供の頃、外国だと思っていた。

 そして、朝刊に、大型船が明石海峡を通過する時間が出ており、毎日チェックして、海を眺めていた。

 当時、日本は世界最大のタンカーの製造地であり、超大型のタンカーが、明石海峡を通過していた。

 そして、藤江のそばの海岸には、明石原人とか明石象の発見の地があり、子供の頃は歴史のことはよくわからなかったが、化石でも落ちているんじゃないかと、何度も探しにいった。

 同じように、時々、潜り込んで何か落ちていないか探していた古墳が、今回、Sacred world3で書いた、聖徳太子の時代の当麻皇子新羅遠征と大いに関係のある場所だったことを、この歳になって初めて知った。

 そしてこの聖徳太子の時代の当麻皇子新羅遠征が、昨年の春に、私がピンホール写真を始めるきっかけとなった鈴鹿芳康さんを訪ねた愛媛の今治と深い関係があった。

 鈴鹿さんと愛犬と一緒に散歩した時、たぶん古墳だと思われる高台が墓地になっていて、その墓地で、鈴鹿さんと愛犬の写真を撮ったら、不思議なオーラが写っていた。その周辺の墓は、すべて、伊予の海人、越智氏の末裔の人たちのものだった。この越智氏が、当麻皇子新羅遠征における明石での出来事と関係していた。

 まあ、こういうことは、”気にせい”ということにしておけばいいのだけれど、今治でもそうだが、いろいろな場所で、気になったところをピンホール写真で撮っていた。計画的ではなく。訪れる前に、重要な場所だとわかっていたのは、ごくわずかで、そのほとんどが、たまたまだった。でも、そのたまたまが、必然だと後からわかったものばかりだった。つまり、その場所に、無意識の何かが呼ばれていた。この無意識が一体何なのかと、最近少し気になるようになってきた。

 

 

 Sacred world 日本の古層をめぐる旅 Vol.1  Vol.2 発売中→

www.kazetabi.jp