風の旅人15号・16号

「風の旅人」15号(8月1日発売)の見本誌が届く。
テーマは、”人間の命”。巻頭の白川静先生の手書き文字はこれが最後になる。先生の顔写真も気迫十分だ。
 今回の写真は、巻頭に二人のマグナム会員が並び競う。フランス人のジャン・ゴーミィと、中国人の李小明
 ジャン・ゴーミィの写真に添えられたジャン・ピエール・アブラハム
「確かなことが一つある。誰もが子供の時に持っていた生命の輝きを取り戻す為には、不確実極まりのない現実の中で、毎日を必死に生きなければならない。それが全てだ。」
 という言葉が、写真と共鳴する。

 最近は、16号の調整と、17号の構成で頭がいっぱいだったので、15号のことが頭になかった。しかし、半年ほど前、この号で「風の旅人」を最後にしようかと考えたくらいなので、今改めて見ると、我ながら気合いが入っていて、なかなか充実していると思う。
 
 次の16号(10月1日発売)のテーマは、HOLY PLANET
 写真家(敬称略)は、EMMET GOWIN、広川泰士、本橋成一、 奥村光也、前田義昭。
 新しい連載として(敬称略)、港千尋管啓次郎、関野吉晴、中村征夫早坂類田口ランディ前田英樹武田徹等がくわわる。

 <企画趣旨>
 ものごとの背後にある大いなる力。その働きによって、宇宙や地球も、自然も人間も、物質世界もそうでない世界も、同じ「一つのもの」のなかに存在する。
 地球や宇宙にとっては、そのなかでどんなことが起ころうとも、すべて、その大いなる力が働く予定内のできごと。そして人間も宇宙から生まれて地球に育まれたものだから、人間のどんな営みも、その力と無縁ではいられない。人間は地球を所有し、そこにある物質を所有し、自由自在にそれを操る権利があるように錯覚して様々な痕跡を残すが、その因果は人間に跳ね返るだけで、人間がいようがいまいが、地球や宇宙の本質は変わらない。
 それでもなお人間は、人間がまだ知らない大いなる力が宇宙や地球に存在することを感じ、その秘密を解こうとするが、その行為もまた宇宙や地球の大いなる力の働きの範疇の出来事にすぎない。人間ができることは、ひたすらその力に近づこうと、思いをめぐらせること。
 宇宙や地球の大いなる力とその働きは、人間の仕業ぐらいでは揺るぎもしない完全なもの。善悪の分別の入り込む隙のないその威力を思い知らされる時、他の多くの動物ならば恐怖のあまり逃げ出すかもしれないが、人間だけは頭を垂れて跪きながら、必死に道しるべを探して、心に問い続けることができる。自分達が知らないこと、あるいは既に知っていても、さらに真剣に取り上げるべきものを追求するため、祈ることができる。
 この地球上には、遠く離れた所であれ、日常の身近な所であれ、宇宙や地球の大いなる力の働きを人間に予感させる風景がある。その風景は、私たちを取り巻く世界の背後へと通じる入り口である。人間は、その背後に確かにある何ものかの力を感じることはできる。その力と心の奥底で通じ合うために、風景を見て、想像力を働かせることができる。
 16号の、HOLY PLANETというテーマを通して、地球を俯瞰する壮大な視点から日常の細部に至る様々な視点を織り込んで、風景の背後にある何ものかの力を浮かびあがらせ、それによって、改めて人間の、地球上および宇宙内での立ち位置を考えることを目的とする。