第1538回 怪我の功名

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 新しい年が始まりました。
 おめでとうございます。
 毎年、今年は何をやろうかと考えますが、今年は特に思いつきませんでした。
 おみくじにも、多きことより精しきことが要とあったので、いろいろ手を広げるのではなく、継続することで深めていく道を歩んでいくことが大事と、あらためて心に刻みました。
 本年も、引き続き、よろしくお願いいたします。
 ところで、あと一ヶ月に迫った写真展のために、連日、プリント制作を行っていたら、突然、プリンターがおかしくなってしまった。
 しかも、新しいインクを買い揃えて、さてこれからが本番だと気合を入れた時に、動かなくなってしまった。
 こんな大事な時に、なんということだと思いながらも、これは神様の導きだと心を鎮めて、買ったばかりのインクは全て無駄になるけれど、どうせならと、今まで使っていたプリンターの A3ノビよりも大きなA2プリンターを購入した。
 エプソンの新しいA2プリンターは、8年前に購入したA3ノビプリンターと同じ大きさということが、背中を押してくれた。
 プリンターが壊れる前、今回の展示は、A3ノビを57点、B02点、A02点の構成を考えていたが、A3ノビの中から、ここに添付した画像など5点を、A3ノビからA2に拡大したら、さすがに迫ってくるものが強くなった。
 全てをA2にしてしまうと、展示スペースが限られているため写真点数が少なくなってしまうので、そうはできないが、A3ノビの中にA2が入ってくると、リズムが変わって面白くなるような気がする。
 プリンターが壊れなければ、A2プリンターを購入することはなかっただろう。
 最近、こういう怪我の功名がけっこうあるので、当初の計画通りに行かない事態が生じても、あまり落ち込まずに、前向きに考えるようにしている。
 風の旅人の創刊号で執筆していただいた鈴木秀夫さんの著書に、「森林の思考、砂漠の思考」がある。
 砂漠では、オアシスを求めて歩いていて方向性を誤ると死に直結するが、森林では、水場を求めて歩いていて、方向性を誤っても、果実にありついたり、他の水場にたどり着く可能性がある。
 どちらの環境世界に生きているかによって、人間の思考特性も変わってくる。
 現代の世界全体が、西欧の近代合理主義の思考方法に覆い尽くされているが、近代合理主義思考の、厳密な計画性や、1か0の峻別、善悪二元論に全てをあてはめていこうとすると無理が生じるし、人生全体が、息苦しくなってしまう。
 日本人は、はるか昔から、 「禍福は糾える縄のごとし」、「災い転じて福となる」、「怪我の功名」、「逆境を力に変える」、「急がば回れ」といった言葉を、自然に受け入れてきた。
 どんなに技術が発展しても、人間が生きていくうえでの困難や苦労がなくなることはない。
 かつての困難や苦労がなくなっても、新しい困難や苦労が生じる。
 「楽」より「苦」を共にした方が絆が深まると言うし、困難は、自分の成長につながり、他者との絆を深める。だとすると、困難のない人生が、幸福とは限らない。
 そう思うだけでも、心が少しは軽くなるかもしれないし、心が軽くなることで、良い気が流れ、物事が好転していくかもしれない。

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 2月6日(木)〜2月17日(月)、新宿のOM SYSTEM Gallery で写真展を開催します。
 詳しくはこちらをご覧ください。
https://note.jp.omsystem.com/n/nef782674b1cc?magazine_key=mf329d1da0f83
 新刊の「かんながらの道」は、書店での販売は行わず、オンラインだけでの販売となります。
 詳細およびお申し込みは、下記コメント欄のホームページアドレスから、ご確認ください。よろしく、お願い申し上げます。
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 京都と東京でワークショップを行います。
https://www.kazetabi.jp/%E9%A2%A8%E5%A4%A9%E5%A1%BE-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97-%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC/ <京都>日時:2025年1月12日(日)、1月13日(月) 午後12時半〜午後6時
場所:京都市西京区嵐山森ノ前町(最寄駅:阪急 松尾大社駅
<東京>日時:2025年2月23日(日)、2月24日(月) 午後12時半〜午後6時  
場所:東京都日野市高幡不動(最寄駅:京王線 高幡不動駅
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 新刊の「かんながらの道」は、オンラインで発売しております。
 https://www.kazetabi.jp/
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