自分に合わせた組み合わせ方法の創造

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 風の旅人、復刊第一号の表紙デザインができあがりました。大きなポイントは裏ですね。返本のある書店流通への委託販売を行いませんので、ISBNコードとか、バーコードがありません。多くの雑誌は、裏に広告を載せますから、バーコードがあろうがなかろうが、知ったことではない、そういう決まりだから、と開き直れますが、風の旅人は、これまで大竹伸朗さんに表紙を作成してもらったり(第25号〜第30号)、望月通陽さんに染色で作ってもらったり(第31号〜第37号)、まさに永久保存版と言えるほどの表紙を作ってきた自負があるのですが、表だけでなく裏も、きちんとしたものにしようとしても、いつも、バーコードが邪魔をしていました。仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、何とかならないものかと。裏は目に付かないからいいという発想は、売る時だけのことを考えている発想で、手に持ち、所有するとなると、やはり裏も大事です。

 あと、書店の店頭に並べていた時は、周りの雑誌の表紙に様々なキャッチフレーズが賑々しく踊り、いつも自分の場所はここではないと思っていました。店頭で手にとってもらうよりも、静かで落ち着いた雰囲気のカフェとか、宿とか、出会う場所が異なるだけで、印象もだいぶ違ってきます。逆に、そういう場所に、ケバケバしい表紙の雑誌が置いてあると、とても違和感があるでしょう。

 風の旅人は、これまでかなり無理をして、世間の標準の枠組みのなかに身を置こうとしていたところがありました。大手出版社が構築し、返本ばかりが発生する書籍流通に依存することも一つです。

 風の旅人は、風の旅人にとって最善の方法で、制作し、人に存在を知ってもらい、買っていただくシステムを作らなければならない。既存の枠組みに無理して合わせるのではなく、自分に合った方法を自分で作り出すこと。現在の閉塞した状況というのは、形骸化した既存の枠組みに無理矢理合わせなければならないところに大きな原因があると思います。

 仕事も人生も、様々な人間関係も。

 人間関係の場合、たとえば、たまたま同じ教室になった人間と合わせていかなければならない。もしそこでの人間関係が最悪でも、そこから逃れられないと思い込んでしまうと、自殺という選択をしてしまうこともあるでしょう。教師が最悪ってこともある。

 仕事でもそうです。職場も同じ。結婚だってそういうことがあるかもしれない。

 風の旅人の読者は、周りの人とつるんだりするのが苦手で、教室の中ではちょっと浮いた感じの人が多いみたいです。

 昔なら、そういう状況に耐え、孤独に向き合いながら生きていくしかなかったけれど、今は、たまたま周りにいる人だけが自分の世界ではない。日頃、顔を合わさなくても、遠くは離れたところに通じ合えれる人や物が存在するということを実感できる。

 世界の組み替えみたいなことが、これからどんどんと進んで行くのではないかという気がする。

 編集という仕事も、実は、世界の組み替えみたいな性質がある。家の中の物だって、配置を変えるだけで風通しがよくなって、とても快適になることがある。編集も同じだ。編集の仕方によって、それぞれの物の存在感も変わってくるし、何よりも場全体の空気が変わってくる。

 そういう意味で、仕事も人生も人間関係も、様々な組み合わせ方が大事になる。何か一つのことだけで押し切るというのは、この変動著しい時代を生きるうえで、非常に障害が多いし、リスクも高い。

 相変わらず、自分探しという言葉が聞かれるけれど、様々なものの組み合わせた全体が、自分自身という感覚になっていくのではないか。自分に合わせた組み合わせ方法の創造こそが、生きていくうえでの課題なのだ。

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