2007-01-01から1年間の記事一覧

生物と人為

『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一著)が、とても面白かった。最後の一歩手前までは、読みながら、ワクワクした。 『生命』というものを、人智の及ばない超自然的な抽象的なものとして崇めるのではなく、そのメカニズムを、現時点での人間がまだ認識できて…

芸術と職人仕事

昨日のエントリーで少し触れた、横浜美術館で行われている森村泰昌さんの展覧会→http://www.yaf.or.jp/yma/exhibition/2007/special/02_morimura/index.html で、私が圧巻だなあと思ったのは、レンブラントに関する一連の作品と、ブリューゲルの「盲目のアレ…

社会の常識と表現

横浜美術館で開催されている森村泰昌展が面白かった。近代というのは、自意識の時代だろうと思うけれど、自分のなかの自意識も含めて、笑い飛ばしてしまうような真面目な迫力と、緻密さが凄かった。 有名画家が描いているモデルになりきって画面のなかに入っ…

感覚を表現するとは!?

写真の売り込みなどにおいて、「感じたまま作品にしてみました」とか、「難しいこと考えずに、感覚に添って好きなことやりました」とか、”感覚”とか”感性”を強調する人は多い。 感覚は自分の中に間違いなく存在するものだと考えていて、それに添って作品を作…

テレビの最新映像と、個人の写真

一昨日の夜、テレビ番組の「世界遺産」特集で屋久島が取り上げられていたので見た。 ハイビジョンカメラで撮影した鮮明な映像、空撮も含めて資金力にものを言わせたアプローチ、テレビ局という権威ゆえに可能になる縄文杉のすぐ傍など立入禁止の場所からの撮…

心に引っ掛かりが残らないものの方が売れる?

本屋に行くと、「今年一番の傑作!!」というPOP付きで、吉田修一さんの「悪人」が平積みになっており、浅田彰さんの、「デビューから十年、吉田修一は作家として何と大きく飛躍したことだろう!」と、大仰な誉め言葉が踊っていた。 私も読んでみた。面白…

さすらう魂

新宿ゴールデン街に、NAGUNEというバーがある。→ http://www.nagune.jp/about.html ひっそりと狭いけれど胎内のような温かみが感じられる店内で、写真の企画展が行われているが、そのセレクションが、私の中の何かと呼応するものがある。 NAGUNE…

私の写真論

今の世の中には、ありとあらゆる表現が溢れているので、どれか一つを取り上げて批判しても意味はなく、批判ではなく、自分がこうだと思うものに添って自分の活動を続けて、批判したいものを超えていかなければならないのだろうとは思う。 それでも、今年の木…

「日本社会」への認識の違い

「風の旅人」の読者の方ではないのだけど、「風の旅人」が醸し出す空気をなんとなく察する方から、遠回しの批判というか、問いかけがあった。 >> いまの日本よりも「少しでもましな社会」が古今東西・人類の歴史の中にあったのでしょうか。このへんの認識…

「揺らぎ」を排除する教育

昨日の夜、仕事から帰ってテレビを付けると、ニュースの特集で塾のことをやっていた。夏期講習を無料にして、生徒の獲得競争をしているらしいが、9月から正式に塾に通い始めると、授業料や模擬試験で月に七万円もかかると言う。 にもかかわらず、子供のため…

人間の命

小野啓という若い写真家がいる。彼は、日本国中の高校生の写真を撮っている。 フライヤーを刷ってショップに置いてもらったり、雑誌の募集欄に掲載依頼をして、一般の高校生に呼びかけ、メールで連絡があった人に直接会いに行って、それぞれの学校や、それぞ…

ローカルに徹する凄み

土曜日、千葉県の九十九里浜で50年近く写真を撮り続けている小関与四郎さんを訪ねた。この人は、年齢は72歳だけど、胸板厚くて腕も太く、顔を艶々としていて、50代と言われても信じてしまう壮健さを誇っている。ちょっと老け顔だけど40代ですよ、と…

風を感じ、風を通すこと

先週、イッセイミヤケのクリエイティブディレクターに今年度から起用された藤原大さんと会って話しをする機会があったのだが、幾つか興味深いことがあった。 現在、彼は、2008 SPRING&SUMMER COLLCTIONを発表している最中で、その…

働くことに対する敬意

自分の周辺を見まわしても、働くことに対する敬意が薄いなあと感じることがある。働くことそのものに対する敬意が、何ゆえにこんなに希薄になっているのだろうと思う。 例えば、夕飯を食べに近くの寿司屋のチェーン店に行くと、寿司を握る人の顔から、こんな…

WANDERING LIFE

写真 ジョエル・マイヤーウィッツ(9.11テロの後)→ 『風の旅人』第27号、”WANDERING LIFE ”が、8/1より書店に出ます。 http://www.kazetabi.com/ 私たちの生きる宇宙は一定の状態に留まることなく混沌と変化し続けますから、人間にか…

身体感覚としての故郷

関西方面への出張で、少し足を伸ばし、私の故郷である明石に行き、小学校と中学校で一緒だった友人の車で、魚の棚センター、明石公園、小学校、中学校、高校、昔住んでいた家、毎日のように泳いでいた松江海水浴場を訪れ、ほぼ30年ぶりに小学校時代の恩師…

巨大な金額の端数を甘い汁にする輩

廃止・売却の年金施設、1兆円が回収不能に ↓ http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070724it01.htm 厚生年金と国民年金の保険料計約1兆4000億円を投じて建設されながら、廃止・売却が決まった年金福祉施設計412物件の資産価値が約2000億円…

損保やNHKの問題とわたしの考え

保険会社が保険料を過大に徴収している問題が、私のところにも降りかかってきた。 家のローンを組む時、強制的に火災保険に入らなければならないのだが、現時点で保険会社に登録されている保険金額の方が、契約時から私が持っている保険証券よりも高くなって…

仕事の”間合い”

今日、夕食を食べながら、一人の女性を取材した。 老人ホームで働く人だ。彼女は、最初、この取材を断ったけれど、周りに説得されて受けることにした。 彼女は、高校までバレーボールでセッターをやっていた。彼女曰く、自分はセッターの役割に合っていると…

偶然と必然

昨日、神保町で食事をしながら、一人の女性をインタビューした。 彼女は、オリジナルのステンドグラスを制作しており、谷中に工房と店を持っている。 若い時は、頭を真っ赤に染めて、尖らせ、刺青をしたパンク少女だったと言うが、今はその面影は全くない。 …

自分に足らないものを、どう補うか。

ビジネスという言葉を聞くと、昨今のITブームのように、他人より早く目新しいものを見つけてくるという印象があるが、そればかりではない。 大儲けすることがビジネスの目的ではなく、収入より支出が多くならないシステムを自分でつくり出し、活動をしなが…

愛という言葉の錯覚

国とか人とか子供とか物などを人は愛すると言うが、対象を愛していると自分で思っている時の本当の理由は、多くの場合、その存在が無くては自分が不便になるとか、不安になるとか、寂しくなるという自分サイドに原因があるのではないだろうか? 本当は自分サ…

文化の供給過剰と価値基軸の喪失

7/5と6にエントリーした新聞社の件について、もう少し、私の考えを述べたい。 このエントリーを読んだ人は、 「大手の新聞社が大金を受け取ってそれを記事になどしたら、新聞としての社会的信頼を失ってすぐに新聞として成り立たなくなる。だから、そん…

基本について

数日前、武術家の甲野善紀さんと精神科医の名越康文さんと会って話しをしている時、ものごとの“基本”についての話しとなり、思考や行動などにおいて“基本”をつくることの大切さと、それにとらわれることの問題という話しが出た。 甲野さんの場合、武術での基…

ちょっとおっかないけれど、昨日のエントリーの続き

昨日のエントリーを、もう少し詳しく説明したい。 5年前の時は、数ヶ月前から、その新聞社がシンポジウムの開催と新聞での紹介を約束していたが、その経費を誰が負担するかという話しにはなっていなかった。 しかし、新聞社が”文化”の紹介を引き受けてくれ…

既存メディアに寄りかからないコミュニケーション

今朝、上智大学に行き、相談を受けた。 カンボジアのアンコールワット遺跡の地中から出てきた膨大な数の仏像のことだ。 http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2238698/1688217 仏像は日本率いる調査団が2001年にアンコールワット(Angkor…

実状と言葉の乖離・断絶

チベットに添乗に行く社員が、出発前にツアー客に電話をしている。 「中国は、国家体制が社会主義なため接客などのサービスが行き届いていないことが多く、現地で何かとご不便かけることがありますが、予めご了承ください・・・」 現地の事情を知らないツア…

総合であり、本質であり、流動であり、ポジティブであること。

写真でも何でも、一つのことを追求して、どんどん掘り下げていく人を見ると、とてもかなわないなあと思う。自分には、そこまでの情熱はないなあと思う。そこまで一つのことが好きで好きでたまらないという風に、自分にはなれない。 しかし、一つのことに集中…

そのものの存在感とは!?

今から80年程前、ペルーで乾板写真を撮っていたMARTIN CHAMBIという人の写真を見る。 ペルーの先住民族が、自分と同じ先住民の生活、ポートレート、インカの遺跡などを撮影しているもので、同じ頃にヨーロッパ人が撮ったものとは全く異なって…

広告/宣伝/広報/PRの硬直したパターン

「自分を相手に売り込むことに必死で、売りこむために、その相手のことは、かいつまんで理解する。それが当たり前の、相手を理解する方法だと思っている。 かいつまんで理解するくらいならまだましで、「キーワード」が相手と一致していたら、 とりあえずア…