「風の旅人」は、第39号(2/1発行)で一つの区切りとして、第40号から少し変えようと思う。一挙に全面改定するのではなく、まずは半分くらいを刷新するという感じで。
具体的に、今、私の中にあるテーマは、
1.地方
2.旅
3.身体性
物事を簡単に言い切ることはできませんが、敢えて言うならば、20世紀と21世紀の価値観で一番違ってくることは、20世紀が、『価値観を与えられる』時代であったのに対し、21世紀は、一人ひとりが自らの関係性と身体感覚を総動員しながら、『それぞれ、価値観を整えていく』時代になっていくのではないかと私は思う。
20世紀の価値観の伝達の主力は大手メディアであり、そこから発信される一方向の情報伝達によって、一人ひとりの身体感覚と切り離されたところで大勢が導かれ、その構造の上に規格品の大量生産型の消費経済と、広告社会が成り立っていた。
しかし、もはやメディア広告に盲目的に従う人は皆無になりつつあり、自分自身のアンテナが次第に大事になってきており、それを持たずに大きな流れに追従していると、“痛い目”に合うことも多い。
現在でもユニクロなど単一商品の大量販売で躍進している企業が目立っているので、20世紀的な均質構造は依然として根強いようにも見えるが、次第に少なくなりつつある“情報に対して受け身の人達”の選択肢が限られ、一か所に集中しつつあると言った方がよいだろう。もしくは、日常生活において、情報に受け身でも何ら問題のない領域(自分のこだわりを持つ必要がなく、安くて便利なら何でもいいという領域)に関しては、とりあえずそれで済ませればいい、ということになっているのではないかと思う。
現在の経済構造が直面する問題は、大勢が求める物の領域はコスト競争が激しく、量的優位に立つ者が仕入力や知名度などにおいて他を圧倒し、一人勝ちになっていくこと。そして、少数のこだわりの領域は、規格品の大量生産型の物よりも高額になるのだけれど、高額になることの納得感が、まだ一般には完全に浸透していないところにある。これは、貧しくて自由になるお金が少ないという理由もあるが、それだけではない。質の高いものを一つ手に入れれば長い間満足感が得られるのに、中途半端なものを二つ、三つ買ってしまうという、消費経済の仕掛け人達に植え付けられた思考特性や行動特性にも原因がある。
いずれにしろ、今は価値観の過渡期である。価値観の軸足が、大量規格品から個別の固有のものに少しずつ移るにつれ、大量規格品と相性の良かったメディアが少しずつ衰退し、その影響力が減退することで、今後ますます軸足の移動が加速されることは間違いないと思う。
こうした変化は、「受け身で押しつけられる情報」から、「能動的に獲得する情報」という意識構造の変化に結びつくので、自分自身のアンテナが大事になってくる。
そして、自分自身のアンテナは、自分自身の能動的な行動のうえに磨かれていくわけで、そうした行動が、今後、増えざるを得ないと思う。具体的に言うと、CDにはお金は出さないけれど、CDよりも高額なライブには行き、そのお金は惜しくないという具合に。
都市と地方ということでいえば、20世紀的な『情報受け身型社会』においては、情報がたくさん集まっている都市が優位だった。しかし、自らのアンテナで動いていく時代になっていけば、どこを拠点にするかは関係なくなっていく気がするし、むしろ地方の方が、自らの身体性を通じて、新たな視点を獲得するチャンスが多くあるかもしれない。
もはや誰でも簡単に海外旅行ができ、その気になりさえすれば、どこにいても、世界中の情報が手に入る時代になった。自分が所属している組織や、自分が住んでいる土地などによるハンディや優位性は、次第に無化されつつある。
記者クラブなど、特権に守られることではじめて自らの優位性を保てるような人間は、前の時代の化石にすぎないことが、次第に明らかになっていくだろう。
そうした新しい風向きに、「風の旅人」は応じるものでありたい。
現在、今後の企画の一例として、「その土地の体感と視点」を、誌面で織りなしていくことを考えている。
北海道、北陸、近畿、四国、九州、どこでもいいけれど、その土地に深く関係することで見えてくる、その土地ならではの魅力を、その土地の視点や体感を通して紹介したいのだ。
一人、2ページ。文章にして2千字から3千字。これはと思う写真を、1、2点。まずはメールで編集部までお送りいただく。それらを検討させていただき、編集し、日本各地の写真や文章を数人分まとめて20〜30ページを構成したいと思う。もし掲載が決まれば、一人2万円(税込)+掲載誌10冊 をお支払い致します。
ご応募いただいた方のなかで、極めて印象的なものは、上記の範疇の紹介にとどめず、別途、特集もありえます。
また、ご応募いおただいたコンテンツが充実してくれば、それらの写真だけで写真展を開くことも可能かもしれません。
プロと称するライターはカメラマンが、通りすがりの「地方」の表面をなぞっても豊かなものになる筈がなく、たとえ肩書的には素人であっても、その土地の歴史文化や自然や魅力を深く知り尽くしている人が多いことを、私は、経験を通して感じている。
また、こういう企画を通して、それらの人達とつながっていくことの方が、業界人との付き合いよりも、触発されることも多い。今という時代は、まさにそういう時代なのだ。
送り先は、電子メール→saeki@eurasia.co.jp 風の旅人 編集長 佐伯剛 まで。
プリントをお送りいただくのではなく、ご希望の方は、まずは、メールで写真と文章をお送りいただければと思います。
第一回目の締め切りは、2/10まで。