ミニマムの時代の物作りと販売 2

 「ミニマムの時代の物作りと販売1」で、自分が携わっている出版分野のことで色々書いたが、家電なども一人で開発・販売する人が出て来ていることを知り、これから色々な分野でそういう人が出てくるだろうと改めて思った。

 一ヶ月程前、ヤフーショッピングが、オンライン販売に関わる一切の手数料などを無料にするという発表も、少数生産の直接販売で運営をしていこうとする人達にとって朗報かもしれない。時代環境は、益々そういう方向に整えられていっている。
 そして、たとえば家電分野の一人開発・一人販売だと、そんなに多く商品を企画できないが、そうした試みをしている人が、経営は別々でありながら有機的に連携していけば、商品ラインナップも充実したものになる。
 ラジオインタビューに応えていた人は、卓上スタンドと充電器だけを作っている。一度購入すると長く使ってもらうことを前提に物作りをしていて、そういう物が欲しい人を、数千人、自分の周りに寄せ付けているのだ。同じようなポリシーで、他の商品を開発・販売する人達と、たとえばホームページを共同で作って自分達の商品を紹介したり、それぞれの顧客へのダイレクトメールやメルマガなどで、商品を紹介し合ったりすることは可能だろう。
 一人ひとりが3000人ずつ顧客を持っていれば、それが5人連携するだけでも、かなりの数になる。3000人くらいで何とか採算ラインにのる直接販売モデルは、中間マージンをとられない為に、1000人、2000人と販売が上乗せされると、利益が飛躍的に向上する構造なのだ。
 また、私は出版を行なっているが、出版の世界の中での連携も面白いと思うし、出版の世界以外の人達との連携も可能ではないかと思っている。
 本でも家電でも、使ったり読んだ後にすぐに捨てるような物や、買い替えサイクルの早い流行物を作るのではなく、一生手元においておきたいと言ってもらえるような物を作り、オンライン等を通じてメッセージを流し、直接販売をしているのであれば、連携することで相乗効果が出るのではないかと思う。
 必要最低限度のことをきちんとやりながら、その小さな個が有機的に結びついていくイメージを、私は抱いている。巨大なグループになる必要はない。個だとあまりにも不安定な存在が、二つ、三つと結びつくことで、原子構造のように、しっかりと安定したものになっていく予感がある。
 生産、制作現場を変革する3Dプリンター、DTP、その他諸々のソフト・・・、販売流通網を変革するオンラインショップ・・・、宣伝・広告の在り方を変革するSNS等のインターネット上のコミュニケーション・・・。また、今現在、そしてこれから生まれてくる様々な技術革新は、既存のシステムを揺さぶるものとして、急速に広がっていくだろう。
 それらを総合的に捉えることで、様々な物作りと販売の在り方が、21世紀には大きく変貌していく。その変化は、20世紀型の、規格品を大量に生産・販売し、大量に消費していく空しい状況から、もしかしたら、一つの物事に愛着を持って使い続ける状況へと、人々の心を転換させていく可能性がある。そして、作り手や売り手にとっても、その転換は、仕事の充実と納得を増大させるものになる。それは、人生を虚無感に満ちたものから、手応えのあるものに変えていく力でもあるだろう。


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